同サイトにいくと“G is for Google”というキャッチコピーがまず目を引く。Gは26文字の一文字にすぎず、Googleでさえも彼らの試みのうちの一事業にすぎない、という宣言である。
いままでGoogleは、強大なキャッシュマシンである検索広告事業の収益を傘に、さまざまな新事業に対して積極的に取り組んできた。自動運転の自動車開発や、ドローン活用の物流システム開発、血糖値などを自動計測するコンタクトレンズなど、多岐に渡っている。それらの多くは実験段階であり、多くの投資を必要としている。
つまり巨大な赤字を垂れ流しているのだが、これまではGoogleの一部として問題視されることはなかった。しかし、今後はAlphabet傘下の一企業として、Googleと並列に置かれることになり、個々の事業計画をもたされることになる。窮屈にもなるだろうが、同時に外部の投資家を受け入れやすくもなる。
Alphabetは、アルファベットであると同時に、Alphaにbet(賭ける)ということでもある。Alphaとは、前述のような、次世代の可能性を切り拓く新しい事業機会のことだ。Googleという強力なブランドにぶら下がるのではなく、それ以上のブランドをみずから構築していくという意思を表しているのである。
そして、革新的、ということであれば、Appleともまるで違う。Appleは世界一のブランドであるが、事業領域を限りなく狭め、集中し、絞ることで価値を生み出している企業だ。スティーブ・ジョブズであれば、あれこれ手を広げず、もっとも良い、と思えることだけに集中しろというだろう。
AlphabetはAからZまですべてを網羅しようとするが、Appleという社名は、そもそも電話帳でいちばん最初に記載されるから、という実践的な理由で選ばれた名前だ。その意味で最高なのはAであり、それ以外は捨てる――というのがジョブズ流である。
ある意味、世界初の分散型革新的企業といえるのがAlphabetということになるが、はたして成功するだろうか? 単に集中力を欠いた実験的な企業で終わるのか、ほんとうに世界を変えるまったく新しい企業集団になるのか。まずは最初の5年間に注目したい。