このところわりと頻繁にロレンスで取り上げているイベント、Wheels & Waves。
今年(去年も)フランスの高級リゾート地として知られるビアリッツで行われた、サーフィンとカスタムモーターサイクルのイベントである。
まるでSXSW(サウスバイサウスウェスト)。複雑に融け合ってクロスオーバーする複数のカルチャー
僕はロレンスの発行人であると同時に、「ITの人」「ネットビジネスの人」だ。僕をよく知る人たちにはいまさら説明するまでもないだろうが、公私ともにインターネットにどっぷり浸かった人生を送ってきている。
その僕からみたこのWheels & Wavesは、まるでSXSWのようだ。
SXSWは音楽とテクノロジーのクロスカルチャーイベントだ。
オースティンの片田舎で数日間街ぐるみで行われるイベントで、ここには”今が旬”の音楽と映像・映画、そしてとびきりクールなテクノロジーを発表したいスタートアップが集まる。TwitterがこのSXSWを皮切りにスターダムにのし上がったのも有名な話だ。
動画や、以下の様子を見てもらえればわかるが、Wheels & Wavesの模様はSXSWのノリにとても近い、と僕は思う。
スタートアップに挑むアントレプレナーと重なる、新しいカスタムビルダーたち
違うのは、SXSWが音楽を軸として生まれ、その結果、ロックやパンクに近い爆発的なエネルギーを持つものとして、映画やITサービスが派生的に集まってきた、ということで、Wheels & Wavesは、カスタムバイクとサーフィンを愛する者たちが集まることで、派生的に音楽やファッションなどの他のカルチャーが寄ってきた、ということだ。
しかし、エネルギーの発生と、周辺を巻き込んでクロスカルチャーを生んでいくという点では非常に似ているし、結果として同じ匂いを発するようになっている。
そういえば2015年5月3日に七里ヶ浜で行われたカスタムバイクのイベント 「BIKE BUILD OFF」(Deus Ex Machina主催) も、これに近い匂いを発していたが、その数日後にDeus原宿で行われた打ち上げイベントはさらに僕に深い感慨を与えてくれるものだった。
BIKE BUILD OFFで選ばれた優秀カスタムバイクの制作者たちがその場で紹介され、短いスピーチをしたのだが、それはまるでスタートアップイベントにおけるピッチに登壇する起業家たちの姿にダブるものだったからだ。観客は若く、カジュアルで、思い思いのスタイルで、ビールを片手に歓声を送った。このエネルギーは、いままでのアンダーグラウンド的なチューニングバイクの世界にはなかったし、逆に、昔の青年実業家的な起業ではなく現代の若きアントレプレナーたちにスポットライトが当たるようになった風景と重なるものなのだった。
Wheels & Wavesには、いまのところ、それほどテクノロジーの匂いはしない。昨今のカスタムビルダーたちは巧みにネットをつかいこなし、Webで情報を発信しているが、Wheels & Waves自体にSXSWのようなネットビジネスの担い手が近づいているようにはいまのところ見えない。
しかし、それも時間の問題だと思う。
僕たちがこのロレンスというメディアを開始したのは必然だが、モーターサイクルを題材にしてスタートしたのは、いくつかの、思い出すに愉しい偶然の連続の結果である。さらに、2015年5月(創刊4ヶ月目)で、モーターサイクルを中心に置きつつも、クルマやファッション、そしてテクノロジーにまでコンテンツの幅を広げたのは、実は先述のDeus Ex Machina原宿で行われたBIKE BUILD OFFの打ち上げパーティーで、編集長である二上さんらとコロナとソーセージを頬張りながら思いついたアイデアによるのだ。
結果として僕たちがITの側からモーターサイクルに接近し、結果としてカスタムバイクの文化に深く関与し始め、さらにその他のさまざまなカルチャーの融合に乗り出したように、今後ありとあらゆるイベントで、同じようなコールドフュージョンが発生すると思う。
いま、このWheels & Wavesを改めて評価しつつ、ロレンスはネットの側からリアルへと関与するような新しいムーブメントを作る先兵としての媒体でありたい、そう思ったのである。
以下の動画は、2014年のWheels & Wavesの模様だ。
ぜひ堪能してほしい。
追記:
YAMAHAのプロモ動画もかなりイケてる。