なんとなく、好き。
私は香りを嗜む女性が好きだ。
日本人にはPerfumeをつける女性は少なく、大抵はコロンかオードトワレどまりだと思うが、それはそれでいい。香りを楽しむ女性は、洗練されているだけでなく、官能的だと思うからだ。
私自身、コロンを愛用している。実は複数の香りを、時間帯に合わせて使い分けることさえしている。それはひとえに、香りというものが、「官能」を呼び覚ます、最も容易でわかりやすいキーになるからである。
男女の間で、最も必要な要素は”官能的である”ということだと信じる。
お金があるから好き、顔がいいから好き、優しいから好き。いろいろな理由があるだろうとは思うが、最も力強い感情の発露の源泉となるのは、実は「なんとなく好き」というひどく曖昧な感覚ではないだろうか。
なんとなく、というのは、理由がないということではない。理由を言葉にできない、ということである。上述の画像のギャスパー・ウリエルのような、長身の美青年であれば、好きになる、もしくは好きになれる理由は100ほど思い浮かぶことだろう。しかし、大抵の男は(もちろん女も)そこまで美しくも逞しくもない。
好きになった理由をこじつけてみることもあるだろうが、通常はこれといって決め手となるような理由が見つからない、やはりなんとなく好きになったというのが多い気がする。そして、その”なんとなく”を生み出す/醸し出すのは目に見えない匂いであったり、声音であったり、静かな笑い方であったりするものだ。
なんとなく好きになってもらうためには、なんとなく、を期待していてもダメだ。なんとなくとは、先述のように理由がないというわけでなく、言葉にできない理由がある、ということだ。言い換えれば、言葉にできない理由をつくってあげればよい、ということになる。
そんな曖昧な、と思う方も多いかもしれない。
ならば具体的にいうが、最もシンプルで最も簡単に用意できる理由とは、好きな香り、だ。
実際、私の友人の中には、男性の耳の後ろの匂いを嗅ぐのが好きだという女性が何人かいる。加齢臭が混じるような匂いでさえも、好ましく感じることがあるそうだ。もちろん程度問題ではあるし、ダメな匂いというものもあるらしいが、嗅ぎ分けをするというよりは、とにかく耳の後ろに顔を近づけるというのがいいらしい。
香り。最も簡単に自分を演出できる手段
容姿はもちろん、声を作ることはなかなかに難しい。
しかし、匂いに関しては”作る”ことが可能だ。香水(繰り返すがコロンやオードトワレを含む)の匂いは、人間が自然に持っている体臭によって微妙に変化する。だから同じ匂いをつけても、人によってどのようにも変化する。好きな香りを見つけ出し、自分の体臭に合う組み合わせを探す。さらに言えば、自分の体臭に合う付け方を見出すのだ。ちょっとした努力はいるが、十分にそれに見合う結果をもたらすものと思う。
前述のように、耳の後ろの匂いを好きという女性は意外なほどに多い。香りとはフェロモンであるからだ。
ただ、原始時代とは違い、自然のままのフェロモンは現代にはキツすぎるというか生すぎるので、うまくフィルターをかけて洗練した印象を作ってやる必要がある。それが香水、ということになるのだ。
女性は猫に例えられることが多い。
気まぐれで飽きっぽく、信じられないほど柔らかく、寂しがり屋で怒りっぽい。爪は鋭いが、甘え上手である。追えば逃げるし、無関心を装えば自尊心が傷つく。そして、猫は意外なほどに匂いに敏感である。
猫に好かれる手段はいくつもあるだろうが、彼ら(彼女ら)は気に入った相手には自分の匂いをなすりつけてくることを見れば、やはり彼ら(彼女ら)に好かれるような匂いをつくることができれば、より容易に接近できるというものだ。
そして、自分だけの香りを作る。そういう、一見目に見えなくて地味な努力をする男は、結局清潔になるし、女性に対する態度も粗暴であるはずがない。一つだけでもいいから、好きな女性に好かれるために、自分自身を変えようとする男を、女性は好ましく思うものである。