そもそもネイティブアドとはなにか

「ネイティブアド」(Native Ads)という広告手法を聞いたことがある読者は多いだろう。「ネイティブ広告」という言い方をするところもあるが、僕はネイティブアドと呼ぶほうが意味が通ってよいと思う。
ネイティブアドとは一見すると記事のような広告のことで、記事のように自然(Native)に見えることからそう呼ばれている。従来の記事広告となにが違うの?と思う人も多いかもしれない。

最近のメディアの傾向を簡単にまとめると以下のようになる。

・Webメディアの雑誌化
・編集スキルのデジタル化ニーズの増大
・SEOからSMOへの転換加速

このトレンドを金銭面で支えているのが、ネイティブアドというビジネスモデルだ。
ECや会費制サービス以外の主要なビジネスモデルのひとつは広告モデルであり、広告モデルの場合はさまざまな方法でメディアにトラフィックを集め、訪問者に広告を見てもらうことでお金を稼ぐわけなのだが、その広告手法にネイティブアドという大きな革新が起きている。実際、BuzzFeedの売上高(年商100億円といわれている)は、ほぼすべてネイティブアドで稼いでいるという。

ネイティブアドは定義がわかりにくい部分がある。

たとえばGoogleの検索結果連動広告(AdWords)も、ユーザーの検索キーワードに関連して引き出される検索結果と近い内容であることから、ネイティブアドのひとつであるとされている。つまり、ある程度メディアの記事そのものと関連性があり、ユーザーの意識を逸らさない広告であればネイティブであると判断する。それが現在の広告業界やマーケティング関係者の考えのようだ。

しかし、それではネイティブアドの革新性のインパクトを損なう、と僕は思う。

雑誌における記事広告とは、単に“あたかも記事のようなトンマナで書かれた広告”というだけでなく、“雑誌(メディア)側の編集者が制作する広告”でなければならない。ネイティブアドも同じで、メディア側がクリエイティブを担い、制作をとりまとめることが必要であると僕は考える。

通常の広告は、基本的に広告主が広告を制作する。メディアはそれを掲載する場を提供するだけだ。雑誌の記事広告は、メディア側が記事の体裁で広告を制作し、掲載する。そこが違う。

さらにいうと、同じ記事広告でも、高級ファッション誌のそれと、大衆向け週刊誌のそれとはまったく体裁が違うのはわかるだろう。僕が思うに、最近のWebメディアは高級ファッション誌のトンマナとノウハウを真似しはじめており、そこに掲出するネイティブアドもまた、高級ファッション誌からさまざまなヒントを得ている。

バイラルメディアとキュレーションメディアの台頭・・・

ネイティブアドの在り方とともに、注目されているビジネスモデルがある。それはバイラルメディアとキュレーションメディアだ。

画像: BuzzFeed 世界最大のバイラルメディア

BuzzFeed 世界最大のバイラルメディア

バイラルメディアとは、“ウイルスが感染するようにあっというまに広がるコンテンツを量産するメディア”だ。
その手法はおもに、FacebookやTwitterなどのソーシャルメディアを媒介するというもので、シェアされやすいテーマのコンテンツを用意したり、シェアされやすいように大きめなシェアボタンを目立つところに置いたり、ページごとにシェアボタンを用意するなどの工夫を施してある。

キュレーションメディアとは、ソーシャルメディアで話題になりやすいトピック(おもにゴシップ)を引用して、多少の編集をいれることで改めてコンテンツとして配信するメディアだ。日本国内ではGunosyやSmartNews、NewsPicks、旅ラボなどが該当する。
(このロレンスもまた、キュレーションメディアの一つと言えるかもしれない)

バイラルメディアとキュレーションメディアの基本構造はほぼ同じだ。海外の主要バイラルメディアの多くは自社にエディタを抱えて、自前のコンテンツを配信する戦略に方向転換しており、今ではバイラルメディアとキュレーションメディアの境界線はオリジナルのコンテンツの配分の違いくらいでしかない。(ロレンスでは70%以上はオリジナル記事になっている)

ただ、バイラルメディアの多くはネイティブアドを主要収益源としているが、キュレーションメディアの多くはアドネットワークを主要収益源とする傾向が強い。

以前、某キュレーションメディアが無断で海外メディアの記事を翻訳して、かつ引用元を紹介せずに使っていたことで炎上した。キュレーションメディアにはこのように、そもそも他人のコンテンツを引用して広告収入を得るという非常にグレーなビジネスモデルの上に成立している。ある意味、ガチャ問題で失速したソーシャルゲーム市場と似たところがある。

BuzzFeedなどのバイラルメディアや、Mediumなどのプラティシャーはこのリスクを早々に回避すべく、オリジナルコンテンツへの依存度を必死に上げているのだ。

キュレーションメディアのやり方そのものは違法ではないが、人のコンテンツで稼いだトラフィックの上にアドネットワークを掲載するやり方は、やはり社会的な制裁を受ける可能性が高い、と僕は考える。彼らもまた、オリジナルコンテンツへのシフトを急ぐか、アドネットワークを捨ててネイティブアドへの転換を進めるかのいずれかの道しかないのではないか?

(2014.09月に発表した記事の再掲)

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