ハレとケが重要な江戸時代の農村部
前回は江戸時代の都市部の話だったが,その頃農村地域ではどんなことが行われていたか。農村地域は以前にテーマにしたハレとケがとても重要な価値観である。
農業は共同体を前提としたものであり,日々の厳しい農作業は集団の規律が大事だ。そのためケについては全員で真面目に農作業に勤しむ必要がある。一方天候に左右される農業は自然の神をあがめ,収穫祭を始めとするハレである祭りが共同体のもうひとつの重要な儀式となる。
後家さんの重要な仕事である夜這い
農作業が行われる昼間に対して夜はもうひとつのハレとケである。夜の夜這いは共同体の性教育の場としても重要であった。一人前になった男達は村長など村のリーダーに呼ばれ,夜に夜這いに行く家を決められる。その際後家さんなどの家が指定されるのだ。
当時は寿命も短い。いわゆる後家さんと呼ばれる未亡人も多数発生する。後家さんからすると寂しさを埋めてくれ,さらに村の大事な若者達の性教育担当も兼ねるという一石二丁な仕組みだ。処女の女性も15歳くらいで村の長老などに水揚げしてもらうという夜這いも存在したらしい。ルールは村によって様々で,未婚女性のところには誰でも行ってよい村もあれば,未既婚関係無くお互いの同意があればOKという完全乱交状態の村もあったらしい。ただし,よその村の男などがやってきた場合は厳しく処罰されるということもあったようだ。
こんな状況では誰の子供かわからなくならないだろうかという疑問も生まれる。でもそれでよいのだ。共同体で生まれた子供はみんなの子供なのだ。戦後のキリスト教的道徳感によって一夫一婦制が常識になる一方,こうした共同体的おせっかいであるお見合い制度も廃れる中で,1980年以降ぐらいから自由恋愛による市場経済型結婚モデルが当たり前になった。
しかしその結果,年長者や先輩達のてほどきを受けないまま,童貞,処女の若者は激増している。
幸福の国ブータンは夜這い&一妻多夫の習慣が残る国
幸せの国と呼ばれ幸福度を国家の指数として掲げているあのブータンでは今でも地方では夜這い制度が残っている。女性が農場などの資産を受け継ぐので,働き手である男性達が兄弟などまとめて婿に入るケースも多いため,一妻多夫の婚姻制度が今でも地方ではあるらしい。
夜這いはさすがに現代生活ではトラブルも多そうなので,それを前提に入居した人達だけの夜這いシェアハウスなどを除けばを現代に復活させることが必ずしも良いとは限らないだろう。しかし,日本人がそもそもエロスをおおらかに楽しみ,若者達をほっておくのではなく,おせっかいを焼きながら性的にも育てていたことをなかった歴史として隠すのでは無く,しっかり長所短所を見極めた上で性的な道徳感とモラルは見直す段階に来ていることは未婚率と童貞率の上昇という数字が示しているのでは無いだろうか。