画像: この頃キャンプツーリングが気になって仕方がない

私が小学生だった時、子供部屋の天井にはイージーライダーの有名な写真を印刷した大判のポスターが貼ってあった。銀行員だった父はもちろんバイクには1mmも興味がなかったから、子供心にも只者ではなさそうに見えた、ピーター・フォンダとデニス・ホッパーが、巨大なバイクに気持ちよさそうに乗っている姿に憧れを感じて、親にねだって買ってもらったのだと思う。

実際にイージーライダーを映画として観たのはもちろん小学生の時ではなく、もう少しオトナになって自分でバイクに乗るようになった後だ。アメリカンニューシネマを代表する問題作だったイージーライダーは様々な評価があると思うけど、まだ充分に若い私が強烈に印象づけられたのは、少ない荷物で旅を続ける二人(途中でジャック・ニコルソンを道連れにするけど)がバイクの傍らでたき火を囲みながら野宿するシーンだ。テントなんて無くて、たき火のそばで毛布にくるまって夜をあかす。バイク乗りはなんて自由なんだ! 大げさに言うと私のまだ少ない人生経験で初めて知る「生き方のスタイル」のように感じたものだった。

若い頃は切実な経済的事情もあって、バイクで遠くに出かける時はいつも、お世辞にも小型とは言えないテントとシュラフを積んでいった。オートキャンプのブームが到来する前で、キャンプ場もあまりない時代。今ではいかがなものかと思われるが、田舎の屋根付きバス停や神社の境内などでもよく野宿した。それはいつの頃からかロングツーリングでもテントを積んで行かなくなり、宿泊先は田舎のバス停から駅前のビジネスホテルや旅館に自然とアップグレードしていった。

この頃、キャンプツーリングが気になって仕方がない。さすがに田舎のバス停に泊まりたいとは思わないし、若い頃への郷愁でもさらさらない。そもそも私はバイクに大荷物を積んで走るのが好きではないので、ロングツーリングでも最低限の着替えと地図を括り付けただけの身軽な旅になる。しかし、最近はキャンプ用品も進化してどんどん小型化しているようだ。これなら大荷物にならずにキャンプツーリングが楽しめそうだ。積載スペースが限られたバイクのツーリングは「何を持って行くか」ではなく「何を持って行かないか」なのだ。

思い立った朝にコンパクトなキャンプ道具をシートに縛って旅に出よう。けっして遠くまで行かなくてもいいし素晴らしい景観がなくたっていい。星空の下、バイクの傍らでひとり酒を傾ければ、それだけで格別な時になるに違いない。あるいは気の置けない友と二人で出かけてもいいかもしれない。ピーター・フォンダとデニス・ホッパーのようにたき火を囲んで他愛ない話に夜をあかすのも悪くない。あ〜、旅がして〜。



写真:Takefumi Hama

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