年末の恒例企画、Lawrenceが独断と偏見? で選んだ、2025年の2輪業界にまつわる10大ニュース(順不同)。2輪EV用交換式バッテリー統一規格を実現!! という機運が盛り上がったのは、2021年のことでした。それから4年・・・どうも事態は「船頭多くして船山に上る」的に、まとまる気配が薄れているのが現実のようです。

2025年、SBMCのリストから日本勢の名前が消えました・・・

2021年に設立されたSBMC(スワッパブルバッテリーモーターサイクルコンソーシアム)は、交換可能なバッテリーシステムの共通技術仕様の策定、バッテリーシステムの共通利用方法の確認、コンソーシアムの共通仕様を欧州および国際的な標準化団体で標準化および推進、コンソーシアムの共通仕様をグローバルに展開・・・という4つの課題を最初に設定しました。

しかし、2024年の間にチャーターメンバーだったヤマハとホンダの名がSBMCメンバーのリストから消え、後から加わったカワサキの名も無くなりました。さらに2025年に入ってからスズキの名前も消えることになり、政府、研究機関、学術機関などが該当するアソシエイツメンバーのJAMA(一般社団法人日本自動車工業会)含む、日本勢の名前がSBMCメンバーリストからすっかり消滅することになったのです。

2025年12月現在のSBMCメンバー一覧。チャーターメンバーだったピアッジオ グループおよびKTMグループは残っています。

www.sb-mc.net

日本勢は、日本のコンソーシアムを推進していくことになりそうです

そもそも国内の関係者の多くはSBMCを「欧州コンソーシアム」と呼んでいました。これはSBMC設立以前から日本の4メーカーなどで設立に向けて動いていた、国内コンソーシアムとは別のムーブメント・・・と区分するための呼称ともいえます。

国内コンソーシアムは2022年に、エネルギー大手のENEOS HDとホンダ、カワサキ、スズキ、ヤマハが出資したGachaco(ガチャコ)として具体化することになるのですが、統一規格交換式バッテリー制定に向けての、歩みの遅いSBMCの動きを待っていられない・・・的な日本勢の想いが、日本勢のSBMC撤退の主な理由かと思われます(※未だこの件に関する、公式発表はありません)。

年の瀬の2025年12月22日、東京と大阪の地域限定でヤマハの電動スクーター「JOG E」が発売されましたが、JOG Eは2024年8月8日に公表された、原付一種「EM1 e:」および「ベンリィ e: I」をベースとした電動2輪車をホンダがヤマハにOEM供給する合意・・・から生まれた製品の第1弾といえます。

東京・大阪地域先行販売されるJOG Eは、既存のホンダのEM1 e:とは異なり、バッテリーのHonda Mobile Power Pack e:(以下HMPPe:)とその充電池の販売が行われません(ホンダからそれぞれ購入することは可能でしょうが)。基本的に今のところJOG Eは、Gachacoのバッテリーシェアリングサービスをユーザー各々が契約して、それを利用して運用することが前提になっています。

ヤマハとホンダは、2016年10月より国内原付一種市場の業務提携に向けた協議を開始。2018年3月からはホンダのヤマハへのICE(内燃機関)50ccスクーターのOEM供給を開始していましたが、2016年の競技開始時より原付一種電動化の推進は、両社の大きな課題にあげられていました。

ヘッドライトなどの意匠はホンダEM1 e:と異なりますが、リアホイールインモーター、シート下のバッテリーまわり、車体設計などなどはEM1 e:をベースにしています。東京と大阪の地域のみ・・・というのは、現時点で東京、埼玉、大阪の3エリア内しかGachacoのバッテリー交換ステーションが整備されていないから・・・という現実に即した設定といえます。

www.autoby.jp

2019年4月のヤマハ、ホンダ、カワサキ、スズキの4社による国内コンソーシアムの設立。そして2021年3月の交換式バッテリーと交換システム標準化の検討という流れを経て、上述の2024年8月のホンダとヤマハのOEM供給の合意ではHMPPe:の搭載が決められたわけです。

日本コンソーシアム側としては、欧州コンソーシアムであるSBMCがHMPPe:およびその周辺技術を、SBMCの標準として丸呑みしてくれるのがベストシナリオだったでしょう。2021〜2024年の間、SBMCメンバーたちがどのような議論を重ねてきたのかはわかりませんが、結果的に日本勢のベストシナリオが実行されることは現時点ではない・・・わけです。

庶民の足として、世界的に販売台数の多い125cc以下の実用車を電動化することは、地球環境的にもとても良いことです。1898年に発売されたDセル(単一乾電池)のような、統一規格化された2輪EV向け交換式バッテリーの誕生は、小型2輪EVブームを促す起爆剤になると期待されました。まぁ多くの人はSBMCに「それ」を期待しましたが、現時点では「それ」ができるのは相当先のことであるのが明らかになったわけです・・・。

ヤマハとホンダのような国内コンソーシアムの成果が2026年以降どんどん増えていけば、日本勢がこの分野での存在感を世界的に増していくことも期待できます(交換式バッテリーサブスクリプションの嚆矢である台湾勢や、EV大国である中国のような強力なライバルはいますけど・・・)。願わくば、全メーカー、全ユーザーが最も利益を得られるかたちで、できるだけ早期に統一規格化された2輪EV向け交換式バッテリーが誕生してほしいですね。