【レビュー】ロイヤルエンフィールド「クラシック650」インプレ|クラシックシリーズのフラッグシップが日本上陸!は、webオートバイに掲載されたそのタイトルどおりのニューモデル試乗記です。個人的に同モデルに興味あったので一読者気分で楽しんで読んでいたのですが、その途中でどーでもいいこと? が気になってしまったのです・・・。

【レビュー】ロイヤルエンフィールド「クラシック650」インプレ|クラシックシリーズのフラッグシップが日本上陸!・・・は、コチラからお読みいただけます。

燃焼は爆発にあらず・・・というのは多くの人の常識ではありますが・・・

空冷ツインエンジンは270度位相のクランクを採用した不等間隔爆発で、これが独特のリズムを実現。爆発間隔はドゥカティのVツインやヤマハのMT-07系と同じだが、気持ちよさと味わいは随一。カタログ値のパワーは47PSだが、加速は数値以上の力強さを約束する。

上は、【レビュー】ロイヤルエンフィールド「クラシック650」インプレ|クラシックシリーズのフラッグシップが日本上陸!からの引用ですが、クラシック650の空冷4ストローク並列2気筒についての話になります。近年のスポーツモデル用並列2気筒では90°V型2気筒と同じ270°→450°の不等間隔燃焼の採用がトレンドになっていますが、クラシック650もその流れの中にいる1台であることがわかります。

「不等間隔爆発」、「爆発間隔」という言葉に、違和感を覚える読者の方は少ないでしょう。それくらい「爆発」は、エンジンの燃焼室内での混合気の燃焼・・・を示す言葉として定着して久しいです。しかし工学的には「爆発」と「燃焼」は大きく異なる現象として区別されています。

爆発、のイメージ図。「ドーン!!」という轟音と衝撃波を、爆発という言葉は多くの人に想起させるのでは?

sozaino.site

爆発(Explosion)は急激すぎる燃焼といえる反応であり、爆燃(Deflagration=デフラグレーション)と爆轟(Detonation=デトネーション)に大別できます。爆燃の火炎伝播は音速より遅いですが燃焼よりは非常に速く、圧力上昇も燃焼より急です。そして爆轟は超音速で伝播し、強い衝撃波が発生します。また圧力上昇も爆燃を上回ります。

トヨタの「ダイナミックフォースエンジン」のイメージ図。燃焼のイメージとしては、爆発よりは「ゆるふわ」な感じ?

web.motormagazine.co.jp

一方内燃機関がお世話? になっている燃焼は火炎伝播速度が約20〜40m/sと、数100m/sに達する爆燃や数1000m/sに達する爆轟に比べるとかなりゆっくりといえます。ピストンを押し下げる力となる圧力の上昇も力としては十分ながら穏やかです。また周囲のものを破壊するような衝撃波が発生することも、燃焼ではありません(なお内燃機関の異常燃焼=ノッキングは、局所的急速燃焼や衝撃波を発生するので、燃焼より爆発に近い現象といえます)。

「爆発」の普及は、語感や響きの良さ、そしてわかりやすさ・・・ゆえ?

このように、燃焼と爆発は異なる現象なのではありますが、私たちバイク好きやクルマ好きが内燃機関にまつわる会話や文章のなかで、燃焼の代わりに爆発という言葉を使うのが一般的になっている理由は、ズバリ「語感」や「響き」の良さからなのだと思われます。

「ネンショウ」よりも「バクハツ」の方がイキイキしていて勢いを感じさせ、会話や文章なかで使っていて気持ちを昂ぶらせる効果を発揮する気がしませんか? また燃焼によってピストンが押し下げられる・・・よりも、爆発によって・・・の方が、すごい力でピストンを押しているんだなぁ・・・というわかりやすいイメージを想起させやすい気もします。

じつは「爆発」の誤用は日本語だけのケースではなく、英語、独語、仏語、伊語などの文化圏でも燃焼(コンバッション)ではなく爆発(エクスプロージョン)を内燃機関の話のなかで誤用する例は、内燃機関黎明期の20世紀初頭から現代に至るまで、ゴマンとあったりするのです・・・。

海外の場合、特に児童向けの科学入門書とか辞典には、燃焼の代わりに爆発を使ってエンジンを解説する例が多いみたいです。想像ではありますが、燃焼と爆発の違いをまだ詳しく学んでいない子供たちに配慮して、わかりやすさを優先して爆発という言葉をそれらの本の製作者はチョイスしているのでしょう。

1911年のエンサイクロペディア ブリタニカ Vol.11/ガス エンジンの文章。現代のような電気点火ではない、初期の内燃機関の説明のなかで、explosion・・・爆発の語を多用しているのがわかります。

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2005年、英国で出版されたDK社刊「HOW COOL STUFF WORKS」の自動車エンジンの項、4ストロークエンジンの仕組み。こちらでもexplodes・・・爆発の語が使われています。

日本語に話を戻しますが・・・「失笑」、「煮詰まる」、「役不足」、「姑息」、「憮然」などなど・・・時代の変化とともに誤用が定着して間違った使い方ではないと多くに認識されるようになった言葉はたくさん存在しています。内燃機関の「燃焼」の代わりに「爆発」を使うのも、その一例といえるでしょう。ですので、これからも皆さん安心? して、爆発という言葉を使ってください!?