日本での知名度は相変わらずそんなにないと思いますが、ベトナムのEVブランドである「ビンファスト」は2024年度のベトナム市場新車販売でトヨタを抜いたことが経済界で話題になっています。EV推奨政策を進めるベトナム自動車業界の主役の座に躍り出たビンファストですが、その勢いは今後も続いていくのでしょうか?

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急成長を遂げた、ベトナムのEV専業メーカーのビンファスト

2017年初の国産メーカーとして設立されたビンファストは、2021年に初の国産EVを発売。2022年にはICE搭載車生産停止と、EV専業へ転換することを発表しました。2023年には米ナスダックに上場。2024年にはベトナム市場新車販売台数でトヨタを抜き、初の首位に輝きました。

ビンファストの母体は、不動産開発を主軸とするベトナム最大の複合企業ビングループです。2025年1〜7月のデータでは、ベトナム自動車市場の約3割をビンファストは占めており、トヨタやヒュンダイのシェアは昨年度より減少傾向にあることが明らかになりました。

EVの販売台数に絞れば、2025年度前半期の97%余!!がビンファスト車となっています。EV大国である中国からの完成車輸入に高関税を課すなど、ベトナム政府の政策も国内EV市場におけるビンファスト一強という状況を生み出すことに、貢献しているみたいです。

ちなみにビンファストは4輪EVだけではなく、2輪EVも製造販売しています。こちらは電動スクーターのVERO Xです。

vinfastauto.com

EV市場シェアでは圧倒するものの、損失額は増大という理由は・・・?

ビンファストひとり勝ちという現在のベトナムEV市場ですが、その好調ぶりを語る上でベトナム政府の政策を抜きにすることはできないでしょう。ベトナム政府は2050年までに全車EV化、そして2040年までにICE搭載車の生産と輸入を禁止する方針を示しています。そして現在、EVおよびPHEV(プラグインヒブリッド)の特別消費税と登録勢を引き下げるなど、カーボンニュートラル化に貢献する乗り物の普及を促進する政策を実行しています。

ICE搭載車からEVへ・・・というベトナム政府の一連の政策は、ビンファストのようなEV専業メーカーへの追い風になっているのは明らかです。しかし市場シェアが拡大しているにもかかわらず、ビンファストの損失は前年度より拡大し赤字を計上しています・・・。

経済メディアのTHAIBIZの報道によると、赤字の主因は高額な販促費、バッテリーなど主要部品の輸入コスト、積極的な設備投資にあるとのことです。また赤字の補填には、ビングループの不動産事業の収益などが当てられているそうです。

ビンファストのVF3。2ドア4シーターの、電動ミニクロスオーバー SUVです。

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そして、ビンファストの収益性は世界の主要EVメーカーのなかで最下位です。大きな富をもたらすはず・・・とEVの将来性を見込んで、今は耐えるべき時期という認識でビングループは投資を続けているわけです。なおビンファストの収益性がそれほど低いのは、バッテリーやモーターなどの主要部品を中国から輸入しているという「中国依存度」がその最大の理由としてあげられています。

主要部品の国産化・・・それこそがビンファスト収益性向上の鍵と多くのエコノミストは分析しています。また、ある意味有利な環境といえるベトナム以外のマーケット・・・輸出市場におけるビンファスト製EVの浸透が、今後の成長の大きな鍵になるでしょう。ホームではなくアウェイ市場で、今後どれだけビンファストが受け入れられることになるのか・・・注目したいです。