滅亡の危機に瀕した近未来の地球。人類存続のために移植場所に選ばれたのは土星の衛星タイタンだが、現状ではとても人が住める環境ではない。そこで人類が考えた方法は、環境を変えるのではなく、自分たちを改造し、過酷な環境にも適応できる能力を身に付けることだったー。
死にゆく地球を捨てろ・・・人類移住計画の候補地に選ばれたのは極寒の星タイタンだった
過度の環境変化によって覆せない死滅への道を歩み始めた地球。あと10年もすれば人口の半分は餓死する、という絶望的な観測に怯えつつも、もはや地球が緩慢に死にゆくほかないことは自明の理だった。
そこで米国NASA(アメリカ航空宇宙局)を中心とした未曾有の人類存続プロジェクト”土星の衛星タイタンへの移住計画”が発動する。しかしタイタンはタイタンは太陽から遠いため、表面温度が-179°Cにも達する極寒の世界。大気の存在は確認されているとはいえ、酸素濃度わずか4%(地球は約20%)しかない。しかも、地表には川や湖があるものの、流れているのは水ではなく液体メタンやエタンであるという。
そんな過酷な環境では人類は生存できない。タイタンの環境を変えるには時間がない。ならば、というわけで考えられたのは、人間自身の遺伝子を改良し、タイタンの環境に適応できる肉体を作り上げようということだった。
このプロジェクトに召集されたのは、過去にあり得ないような環境に追い込まれながら生還した経験を持っている軍人たち。主人公のリック(サム・ワーシントン)もその一人だった。
彼らは外界と隔絶された秘密基地に家族とともに集められ、肉体の改造手術や実験的訓練を受け始めるが、それは想像だにしない恐ろしい副作用との戦いの始まりでもあった・・・・。
あまりいいことがありそうにない近未来の地球で、我々がなすべきこととは
2018年3月14日に亡くなった世界的理論物理学者のスティーヴン・ホーキング博士(英国生まれ、1942年1月8日 - 2018年3月14日)は、いずれ地球の気温は250℃を超え、金星並みの環境になると予言した。
実際、近い未来に人類が地球を捨てなければならないという予測をベースに作られたSFストーリーは多い。例えば人気漫画の『テラフォーマーズ』では、人類移住の場所として火星を選び、(-50℃以下という極寒の火星の温暖化を進めるために)コケとゴキブリを捲いて温暖化を促進させようとする。
つまり、本作とは逆の設定である。
『テラフォーマーズ』では、火星に撒いたゴキブリが異常に進化し、人類の入植を妨げる存在となっているが、本作では人類をタイタンでも棲息できるニュータイプに進化させようとして、さまざまな問題が発生する。
『テラフォーマーズ』では強靭なゴキブリたちとの戦いのため、人間も自らを改造する。その手法も、タイタンを目指す科学者のそれとかなり近い。
結局のところ、地球の滅亡は不可避で、我々もその後も生き続けようと思えば、人間であることをやめる決意をしなければならない、そういうことだろうか。