1月14日、カーレーサー/チームオーナーとして活躍したアメリカの英雄、ダン・ガーニーが病死しました。享年86歳でした・・・。ガーニー・フラップなどの装備名など、もっぱら4輪業界での貢献が知られる氏ですが、ガーニーは熱心なモーターサイクリストとしての顔ももっていました。

ガーニーが開発した"アリゲーター"とは?

1959年から1970年にわたりF1で活躍したガーニーは、そのキャリアで4勝をマークしています。その中でも特筆すべきは1967年ベルギーでの勝利で、彼はジャック・ブラバムに次いで、自分が開発に関与したマシン「イーグル」で優勝したF1ドライバーになりました。

有名な「ガーニー・フラップ」の例をあげるまでもなく、彼は開発者としても優れた人物として知られています。ただ、彼が長年「アリゲーター」というモーターサイクルの開発に情熱を捧げたことは、残念ながら4輪業界における貢献ほどにはあまり知られていないようです。

数多くの国際級レースで活躍したD.ガーニーですが、惜しくもインディ500のタイトルは逃しました。写真は1969年のもので、前年に続き2位でした。

autoweek.com

ヨーロッパの2輪メーカーは当時最大の2輪消費国のアメリカ輸出に社運をかけていました。スペインのモンテッサは、アメリカでの知名度・人気を鑑み、D.ガーニーを起用した広告をいくつか制作しています。

murdercycles.blogspot.jp

アリゲーターは、ガーニーが興したAAR(オール・アメリカン・レーサーズ)の一部門のプロジェクトとして立ち上げられたモーターサイクル計画です。アリゲーターはタイプとしてはいわゆる「フィート・ファースト」または「フィート・フォワード」と呼ばれる、足を前方へ伸ばしたライディングポジションのモーターサイクルでした。

試作車のアリゲーターA3に跨るD.ガーニー。車体のなかに沈み込むようなライディングポジションが特徴で、低重心化を追求したシャシーを採用しています。

www.odd-bike.com

長年の開発の末、アリゲーターは2002年に限定発売されました。その数は36台でしたが、これはガーニーが4輪レーサー時代の「アイコニック・ナンバー」にちなんだものです。

4度の世界ロードレースGP王者、エディ・ローソンも限られたアリゲーターのオーナーのひとりです。彼はテストライダーとしても、アリゲーター開発に貢献しています。

allamericanracers.com

天国へ羽ばたき、そして翼を休めてください・・・

肺炎の合併症でガーニーは世を去りましたが、死の数日前までアリゲーターの今後の構想を知人に語っていたそうです。試作車を含む過去のアリゲーターはホンダやヤマハの単気筒、そしてハーレーダビッドソンのVツインを用いていましたが、次に計画していたアリゲーターのエンジンには、新規開発のコントラローティング2気筒を採用することをガーニーは考えていました。

2つのクランクシャフトが互いに向かい合う回転方向に回り、振動をキャンセルする並列2気筒・・・まるで英国ベロセットの「ロアラー」や「モデルO」みたいな構成ですね。残されたAARのスタッフが、ガーニーの夢を叶えてくれることを我々とともに期待して、今は安らかにお休みください・・・。

Alligator at Goodwood

youtu.be