人種の違いを超える愛を描いた、感動の実話。
わずか60年ほど前の米国。異人間での結婚が許されない州が多かった時代、1組の白人男性と黒人女性が法を犯して結婚し、逮捕されるが・・・。愛を貫く白人と黒人の夫婦と、彼らを護ろうとする良識ある人たちの、州政府を相手どった辛く長い闘いを描く。

公民権運動が激化しつつあった時代の米国で、時代を大きく変えた

1958年当時の米国では、異人種間の結婚を法律で禁じる州が多かった。レンガ職人である主人公リチャード・ラビングが住むバージニア州もまたその一つだったが、彼は愛する恋人であり黒人のミルドレッドと添い遂げるために、結婚を認めるワシントンD.C.で挙式を行い、そしてバージニアに戻った。

二人は順調に愛を育み、やがてミルドレッドは妊娠するが、ラビング夫妻の所業はすぐに知れ渡り、彼らは逮捕されてしまう。下された判決によって二人は25年間同じ州に住むことを許されず、ミルドレッドは州外に追放されてしまうのである。

それでもラビリング夫妻は愛を貫き、リチャードは妻を愛し続ける。二人の別居生活が5年続いたとき、ミルドレッドはテレビでキング牧師に率いられた公民権運動のデモを見る。そして、当時司法長官であったロバート・ケネディ(大統領であるJFKの弟であり、黒人の公民権運動への理解者としても知られていた)に手紙を送ることを思い立つのだった。

これが転機となり、二人の元にアメリカ自由人権協会(ACLU)から救いの手が差し伸べられることになる。二人はバージニア州を相手に、二人の別離を強制したバージニア州の判決を不服として裁判を起こす。

この裁判は最終的に米国連邦最高裁判所へと舞台を移し、やがて彼らは「すべての異人種間結婚禁止法を違憲であり、修正第14条の平等の保証に違反している」という判決を勝ち取る。

この歴史的判決を記念し、現在米国では判決が下された6月12日を、”Loving Day”として記念日としている。

正しくないことがあればそれを認め、そしてそれを糾そうとする良識が存在することを救いに思う。

本作の肝は、異人種間結婚を認めているワシントンD.C.で結婚した夫婦が、それを認めていないバージニア州で逮捕され、実刑を命じられたこと、そしてそれが憲法に反する重大な過失だと考えた法律家(白人)がいた、という事実だ。

ラビング夫妻が逆境にもメゲずに愛を貫いたことも素晴らしいし、それがゆえに世間を動かすことができたが、ミルドレッドの訴えに耳を傾け、ACLUにつないだロバート・ケネディ司法長官も、ACLUでこの問題を取り上げた弁護士たち(バーナード・コーエンとフィリップ・ハーシュコプ)もまた白人だった。また、ライフ誌のようなメディアもまた彼らを助けた。

数は少ないかもしれないが、正しくないことがあればそれを認め、そしてそれを糾そうとする良識が存在する。社会は不平等で底知れない悪意に溢れているが、それでもそんな良識があることを知るだけでも、救われる気がする。

不安定で暗い話題が多い時代だからこそ、本作のメッセージは力強く響く。

ラビング 愛という名前のふたり 予告編

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