発表直後からその華麗なスタイリングによって大人気となっているメルセデスベンツGLCクーペ。

その優れた力量が成せる業、と表現したくなる豊富なモデルラインナップ。メルセデスベンツはいま、ほぼすべてのジャンルで実に積極的な車種展開を行っている。驚かされるのは押し並べて完成度が高いことで、最新のGLCクーペもそれは同様だった。(文:竹花寿実/写真:Kimura Office)

マーケットの動きを見据えて投入、ヒットが約束されたモデル

近年のメルセデスベンツのラインナップ拡大の動きには、目を見張るものがある。メインストリームであるS/E/Cクラスの各セダン系モデルには、ステーションワゴン(Sクラス以外)だけでなくクーペとカブリオレを用意し、コンパクトクラスにも4ドアクーペのCLAを設定。SUVでも、ラージクラスのGLSからコンパクトクラスのGLAまで、あらゆるセグメントのショーケースに所狭しとばかりにバリエーションモデルを陳列している。

4ドアクーペやSUVクーペを含む新機軸のクーペバージョンに限っても、現時点で6モデルも販売しているメルセデスベンツ。しかし、この動きはまだ止まりそうもない。世界販売台数は年々伸び続けており、2016年1〜6月に前年同期比12.1増の100万6600台を販売し、BMWを抜いてプレミアムブランドで世界トップに立った。幅広いラインナップを取り揃えて、グローバル化した販売市場にうまく対応していると言えるだろう。

メルセデスベンツGLC250 4MATIC Coupe。いかにもクーペと呼ぶにふさわしいリアエンドのデザインだ。

とくに成長を続ける中国市場の動向には敏感に対応している印象である。近年、中国ではSUV人気が急速に高まっているが、メルセデスベンツはその動きと合わせるようにSUVラインナップをリフレッシュして商品力を強化、車名も改めて大きな成功を収めている。

そして、BMWにX6で先を越されていたSUVクーペにも参入。昨年秋にはGLEクーペを発表し、優れたパフォーマンスと同ブランドならではの快適性とラグジュアリーな雰囲気、そしてスタイリッシュなデザインで好評を博している。

そのSUVクーペが、弟分にも登場した。その名もGLCクーペというコンパクトなSUVは、3月のニューヨークモーターショーでワールドプレミアとなり、4月には北京モーターショーでアジア初公開。SUVクーペにとって重要な市場で、相次いでお披露目をした形だ。
現行Cクラスのプラットフォームを用いて開発されたGLCをベースに、スタイリッシュなクーペフォルムに仕立てられたGLCクーペ。GLCがこのシリーズでベストといえる優れたバランスの走りを実現しているだけに、大いに期待してイタリア北西部、トリノからスイスとの国境にほど近いアルプス山間のサン・ヴァンサンまでを舞台に行われた国際試乗会に臨んだ。

インパネまわりのデザインはGLCに準ずるものとなる。スポーティでありSUVらしい力強いデザインでもある。

トリノ郊外のスタート会場に並べられたGLCクーペは、強い陽射しを受けて華やかな雰囲気を放っていた。GLCクーペは全長4732×全幅1890×全高1602mmで、GLCよりも76mm長く、40mm幅広く、37mm低い。エクステリアデザインは、Bピラーから後方が専用設計で、滑らかな曲線を描くルーフラインや、水平方向の広がり感を強調した横長のリアコンビネーションランプ、ダックテール風のテールゲートなどが特徴的だ。さらにダイヤモンドデザインの専用フロントグリルなどディテールにも手が加えられ、GLCとはまた違う、クーペバージョンならではのエレガントでスポーティなイメージを漂わせている。

エクステリアデザインを統括したアヒム・ディートリッヒ・バートシュトゥープナー氏は、「SUVらしい力強さとエレガンスを備え、より洗練されたスタイルを目指しました。リアまわりは、SクラスクーペやCクラスクーペ、そしてGLEクーペとの共通性を持たせるため、同じデザイン手法を用いながら、GLCクーペ独自の特徴も持たせています」と、語ってくれた。

一方でインテリアは、基本的にGLCと共通デザインだが噦センシュアル&ダイナミック〞.をテーマにクーペ専用トリムを採用するなど、GLCとの差別化も図られており、高い質感で仕上げられている。

後席空間は、ルーフが絞り込まれてはいるもののヘッドクリアランスは十分に確保されており、たとえ大柄な男性であっても問題なくくつろげる印象だ。(この続きはMotor Magazine 9月号で)

フォーマルな場にもためらいなくでかけられるラグジュアリーな雰囲気を持つのも大きな魅力だ。