河原良雄
自他共に認めるホンダマニア・元Motor Magazine誌編集部員のフリーランスライター。
連載:ホンダ偏愛主義
Xから究極のZへスイッチ!?
かつてのライトウエイトスポーツであるCR-Xの流れを汲み2010年2月に登場したのがCR-Zである。バラードスポーツCR-X、サイバースポーツCR-X、そしてCR-Xデルソルと、ホンダでの“CR”というコードにはめっきり弱い私にとって、このネーミングは刺さった。何しろXから究極のZへスイッチとなれば気にならない訳はない。
CR-Zのコンパクト2ドアクーペのフォルムはカッコ良かった。4m強と短めの全長、1.4m弱の低めの全高という絶妙のサイズ、低いノーズと後方にかけてなだらかにスロープするルーフ、そしてリアエンドはコーダトロンカ風にスパッと切り落としている。CR好きには言うことなしだった。このCR-Zは2007年の東京モーターショーにコンセプトとして登場。2009年には翌年早々の市販を告知した。
肝心のパワープラントは2009年登場の2代目インサイトの流れを汲んだハイブリッドだった。個人的にはK20型の2L版DOHCあたりを搭載してほしかったところだが、時代を考えれば妥当な落とし込みだろう。とはいえ、スポーツ性を訴求すべくエンジンはインサイトの1.3Lから1.5LのLEA型のi-VTECへスイッチ。
そのスペックは2タイプ。ハイブリッドとしては珍しい6速MT用は114ps、CVT用は113psとしていた。フツーは「1ps差なんて誤差範囲だろう?」となるが、そこはスペックにこだわるホンダ、違いを明確に示したのである。
これに組み合わせるモーターはインサイトと同じく14ps仕様。CR-Zは5ドアハッチバックのインサイトより60kgほど軽量なことで軽快な走り引き出していた。広報資料によれば「2Lクラスと同等の走り」とのこと。
マイナーチェンジに“ホンダらしい”という声も
2012年9月のマイナーチェンジでパワーユニット系に手を加える。エンジンはMT用が120psに、CVT用が118psへアップ。「もう少し盛ってもいいのに」と思うが、このあたりもホンダらしいところ。加えてモーターも20psへアップ。これはリチウムイオンバッテリーの採用で実現したもの。こうしたパワーアップに伴い、それまでのドライビング切り替えに“プラススポーツ”を追加。「3LのV6並み」を謳っていた。
個人的に注目していたのがM-TECが手掛けた300台限定のCR-Z MUGEN RZである。エンジンにスーパーチャージャーを備え156psを実現。エアロフォルムを含め“タイプR”的な雰囲気に仕立てていた。残念ながら試乗の機会に恵まれなかったが、M-TECの技をもってすればCR-Zのポテンシャルを目いっぱい引き出していたに違いない。
そんなCR-Zは2010-2011のカー・オブ・ザ・イヤーを受賞するなど好調なスタートを切ったものの、世間的にはミニバン人気もあって、2016年6月の“αファイナルレーベル”を最終バージョンとして、翌2017年1月で販売を終了。振り返れば、CR-Zにはホンダの「ハイブリッドでもスポーツ」のアイデアが目いっぱい詰まっていたのである。