「リビング デイライツ」では、レーザー光線を発射
映画007最新作「ノー タイム トゥ ダイ」に登場する4台の新旧アストンマーティンの中でも、「DB5」とともに「V8サルーン」がとても気になっている。
映画デビューは、87年公開のシリーズ第15作「リビング デイライツ」だった。最大の見せ場は、ティモシー・ダールトン扮するジェームズ・ボンドが美人チェリストとともにチェコスロバキアからオーストリアへと脱出を図るシーン。警察や軍隊の追跡を逃れるべくボンドは、V8に隠された秘密兵器を次々に繰り出す。
中でもとくに印象的な高性能ぶりを見せつけているのが、V8に装備されているホイールだ。センターキャップからレーザー光線を打ち出してパトカーを上下に分割してしまったかと思えば、雪上では内蔵する鋭いスパイクを張り出させて、ボンドの激しいドライビングを見事にサポートする。
撃たれたタイヤがパンクしても大丈夫。強靭なリムで凍結した湖面をノコギリのように円形に切り裂いて、追いすがるパトカーを沈没させる離れ業まで見せるのだ。
なんともスーパーなホイールだ(あくまで劇中の話とはいえ)が実はこれ、当時のドイツBBS社がアストンマーティンに供給していたもの。純正の15インチアロイ(アルミ合金)ホイール(鋳造)だ。
もちろんレーザー光線は出せないにしても、極めて先進的なホイールとして当時、注目されていた。とくに貢献したのは、タイヤのサイズアップによるハンドリングと乗り心地の向上だという。
ホイールの軽量化&タイヤのワイド化によってハンドリング性能が向上
V8では83年型のシリーズ4から、8インチ幅のBBS製アロイ(アルミ合金)ホイールを採用。従来のGKN製7インチアロイホイールでは対応できなかったタイヤ(ピレリP7)の幅広化を、可能にした。レースからのフィードバックとして当時は、ホイールの軽量化がダイナミック性能を高めることも知られていたようだ。
シリーズ4ではホイールの変更に加え、よりハイパワーなエンジンや質感を高めたインテリアなどが採用された。78年に始まった「オスカー インディア」の歴史の中でも、もっとも大きく進化を遂げた世代と言えるだろう。
ちなみに83年は、ドイツBBS社とワシマイヤー社が共同で、日本BBS株式会社を設立した年でもある。この時、市販が始まったのが「RS」。そのデザインはまさに、V8用のそれに通じる。
奇しくもこのBBS、ブランドが誕生して2020年で50周年を迎えるという。そんなアニバーサリーイヤーに新作007では、どんな特殊機能を見せてくれるのか。V8の「足もと」にも注目しながら、作品を楽しんで欲しい。