ハイブリッドとの組み合わせはこのCR-Vが初
リアルタイムAWDで確かな走破性を実現
前回に引き続き、今回はCR-VのハイブリッドのEXマスターピースを試乗した印象をお伝えする。こちらは前後のトルク配分を走行シーンに応じて調節するリアルタイムAWD。ハイブリッドとの組み合わせはこのCR-Vが初で、リアデフのトルク容量の向上が行われている。
ホンダは、現在複数のハイブリッドシステムを用意している。ただし今後は、2モーターシステムを採用するスポーツハイブリッドi-MMDに統一され、これが主流になるはずである。そしてCR-Vが採用するのは、2Lの自然吸気エンジンはもっぱら発電を行って、そこで得られた電気によりモーター駆動で走るこのi-MMDである。
静かで力強い走りと革新の燃費性能を兼ね備える
効率的にモーターが不利な高速巡航のみエンジンで直接駆動する機構を備えているものの、発進から停止までの走りの大半は電力で賄われる。で、このモーター、最高出力は184psに過ぎないが、最大トルクが315Nmとかなり太い。
ホンダは3L V6エンジン並と表現しているけれどまさにそのとおり、モーターは回り始めた瞬間から最大トルクを出すためともかく出足が軽やかだし、全域に渡って力強いトルクが感じられ頼もしい。
しかも抜群に静か。穏やかに走っている時はバッテリーに蓄えた電力で走るEVドライブとなるし、電力が不足してエンジンが掛っても静粛性はかなり高い。
その一方で、ワインディングロードなどをグイグイ行こうとアクセルペダルを踏んで行くと、エンジン音が高まり加速感覚と絶妙なリンクを見せる。静かでスムーズなEV感覚だけを強調するのではなく、ドライバーが走りたい時にはエンジン音でパワー感を演出するアクティブサウンドコントールのチューニングはなかなかに巧みだ。
それにハイブリッドはさすがに燃費が良い。WLTCモードでは20.2km/Lというカタログ値に対し、実用燃費でも18km/Lをコンスタントに出していた。
1.5Lターボは、FFのJC08モード燃費が15.4km/Lで、実用燃費は12km/Lあたり。1.5Lターボとハイブリッドでは価格差が57万円近くあるけれど、パワーの余裕と燃費も勘案するとお勧めはハイブリッドと言えそうだ。
豊富な選択肢 ホンダらしい充実したモデル
乗り心地は、1.5ターボ/ハイブリッドともども、荒れた路面では少し硬さも感じたけれど、おおむね滑らか。背の高いSUVのわりにハンドリングが素直で良く曲がる感覚なのは、4輪のブレーキを個別制御してヨーモーメントを作る手助けをしてくれるアジャイルハンドリングアシストの効能が大きいようだ。
このように平均点がかなり高い仕上がりのCR-Vだが、再上陸以来の国内セールスは初代のデビュー当時からライバル関係にあったRAV4が、2019年4月に国内に再登場してから破竹の売れ行きを見せているのに対して少し控えめとなる。装備を充実させたため価格がやや割高に見えてしまうのが一因かも知れないが、正直もっと評価されていいモデルだ。とくに静かで力強いハイブリッドの乗り味は白眉であると言える。
ガソリン、ハイブリッド、5人乗り、7人乗り、FF、4WDと選択肢も広く、実力を備えているCR-Vは、ホンダらしい充実したモデルだと言っていいだろう。