連載『ホンダ偏愛主義』。自他共に認めるホンダマニア・元Motor Magazine誌編集部員でフリーランスライターの河原良雄氏が、ホンダを愛するようになった理由を、自身の経験を元に紐解きます。第3回は、「ホンダの刈払機」。意外なところでホンダらしさを感じることができます。(デジタル編集:A Little Honda編集部)

第1回はこちら「初代シビック」

第2回はこちら「初代シティ×モトコンポ」

「ホンダの刈払機」

土手や畑でウィーンとエンジンの唸りを上げて肩に掛けた機械で雑草を刈っているのを目にした方も多いと思う。あの機械は一般的に草刈機とか草払機とか呼び、ホンダでは刈払機(かりはらいき)と称している。肩掛け式で後方にエンジンがあり、その回転をシャフトを通して前方に伝え、先端でギアを介して歯を回転させる仕組み。斜面でも扱いやすいようにエンジンを背負うタイプもある。エンジンは25㏄(当然、単気筒)前後で、製品のほとんどが2ストロークとなっている。そんな中、ホンダは何と4ストロークを採用しているのである。

画像: 筆者が現在使用しているホンダの芝刈機。UMK425C。搭載するのは25ccの4ストロークエンジンだ。

筆者が現在使用しているホンダの芝刈機。UMK425C。搭載するのは25ccの4ストロークエンジンだ。

2ストが主流な訳は構造がシンプルなことと、オイルを燃料に混ぜているため、どんなに傾けても「問題なし」だから。最近はエコ指向で混合比(ガソリン対オイル)が50対1にまで希薄化が進んでいる。とは言え混合ガソリンを作っておかなくてはいけない。みんな4ストにすればいいじゃんと思われるだろうが、そこには技術的な壁がある。刈払機は斜めになることは当たり前。時には天地逆さまになることだってある。そんな逆境にあってもオイルパンにあるオイルを、カムまわりにまでしっかり循環させる必要があるのだ。

この難題をホンダは1997年にGX22&31型OHVエンジンでクリアした。オイルスリンガーなるメカの採用で360度自在傾斜OKにしたのだ。どうなってるかと言うとクランクに直結したプロペラがオイルパンのオイルを攪拌させ、それによってミスト状になったオイルをヘッド部まで循環させているのだ。その進化型が現行のGX25&35型OHCと言うわけだ。ちなみにエンジン型式の数字は排気量ccを示している。

最新のほンダの刈払機(芝刈機)UMK435。こちらは35ccの4ストロークエンジンを搭載する。価格は71,505円

www.hondanews.info

こちらは背負い式タイプのUMR425。搭載するのは25ccの4ストロークエンジン。価格は89,880円

www.hondanews.info

私はスペアマシンとして2ストも持っているので違いがわかる。ホンダの良い点はタンクにガソリンを入れるだけと簡便なこと、排出ガスが臭くなくて環境に優しいこと、燃費が良いので長時間使えること、だ。強いて欠点を上げれば、エンジンが複雑な分、やや重いこと。作業的には2ストがトルクフルなのに対して、ホンダは高回転まで気持ちよく回る。OHVも使っていたことがあるが、OHCになって回転がよりスムーズになった気がする。オイル交換はマメにやってる。贅沢にも知り合いからもらったバルボリンのレーシングを常時使っているせいかGX25型エンジンは今でも吹け上りは上々だ。

今回はホンダは刈払機にも4ストロークOHCエンジンを使っているんです、と言うマニアックな世界のお話でした。

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