斬新なデザインスキームをまとってデビューした新型XC90は、内外観ともに高い評価を受けている。搭載するパワートレーンのコンセプトも画期的で、日本仕様は4気筒2L過給ガソリンエンジンとされる。その魅力を改めて知る、日帰り試乗の機会を得た。(MotorMagazine 2016年8月号)
今回のXC90試乗イベントは、とてもユニークだった。朝、都内の港区芝公園にあるボルボ・カー・ジャパン本社を出発して、夕方までに戻ればどこへ行ってもいい、というもの。幸い天候も快晴だったので、取材テーマを〝XC90と美しき日本の山〞としてみた。
T8は“ツインエンジン”のプラグインハイブリッドモデル
妙義山、浅間山、八ヶ岳、富士山とXC90を一緒に写真に収めるドライブ、というイメージだ。試乗車はT8ツインエンジンAWDインスクリプション。〝ツインエンジン〞とは、ガソリンエンジンと電気モーターという2種類の動力源を装備していることを示し、さらにAC200Vの充電機構も持つプラグインハイブリッドモデルである。
驚くほどの力強さを発揮全体を貫く上質さが魅力
まずは霞ヶ関から首都高速に乗り外環道を経て関越道、上信越道で松井田妙義インターチェンジを目指す。出発時はバッテリーがフル充電された状態。色々と選ぶことができるドライブモードは、標準となる「ハイブリッド」モードで走り出した。スタート時はモーター駆動のみゆえに、至って静粛だがその反応は力強く、まったく不満は感じない。気がつくとエンジンが始動していたがそのマナーは洗練されていて、不快な挙動はまるで感じられない。
T8のパワートレーンは実に凝ったものだ。フロントに横置き搭載されるガソリンエンジンは2L4気筒DOHCにスーパーチャージャーとターボを装備したツインチャージ式で、これだけで最高出力235kW/320ps、最大トルク400Nm(40.8kgm)という仕様を誇る。
EV走行は後輪駆動用のリアモーターが担当
さらにエンジンと8速ATの間に最高出力34kWのフロントモーターを備えるが、これはスターター、ジェネレーター、パワーブースト用として使用される。最長で35.4kmのEV走行、そして必要な場合はエンジン駆動の前輪と組み合わされて4WD走行を実現する主役の後輪駆動用モーターはリアに搭載される。その最高出力は65kWだ。前後アクスル間にプロペラシャフトはなく、センタートンネル部分に総電力量9.2kWhのプラグインハイブリッドシステム用リチウムイオンバッテリーが搭載されている。
ドライブモードの設定具合に満足
高速道路での走行は、静粛で乗り心地も良く非常に快適だ。オプション設定のエアサスペンションが装着されており、ドライブモードに応じて車高とFour-C(アクティブダンパー)の設定が変わるのだが、各モードのチューニングが絶妙だ。
一般道に出て、妙義山との姿を収めた後、その南麓から下仁田へ抜ける県道43号線で軽井沢方面に向かう。このルートは対向車とのすれ違いに気をつかう場面も多いが、車幅1960mmのボディながら見切りが良いのでさほど苦にならない。
パワーモードでの分厚いトルク感溢れる走り
相当な上り勾配と急なコーナーが続くのでドライブモードは「パワー」を選択。エンジンとモーターが協調すると、まるでクルマがフワリと軽くなったかのような分厚いトルクが生み出される。車重2.3トン強のモデルがタイトなワインディングロードを楽々と走破、軽快感すらあるハンドリングでグングンと上り、気が付けばもう軽井沢である。
あまり素敵なカットではないけれども、浅間山と一緒の姿を何とか収めたら、次の八ヶ岳へと先を急ぐべく佐久から国道141号線を南下して野辺山を目指す。
フロントシートのマッサージ機能も堪能
交通量は多く、坦々とした速度で流れているが、フロントシートに備わるマッサージ機構で身体をほぐしつつ快適に到着。
八ヶ岳を背景にしたカットの撮影後は、清里を抜けて須玉ICから中央道に入った。
総走行距離450km、平均燃費10.8km/Lを記録
このあたりから雲の多い天候となり、走行ルート上から富士山の姿は拝めなかったので、富士山とのツーショット撮影は泣く泣く断念せざるを得なかった。
芝公園での返却時にオンボードコンピュータが示した値は、総走行距離450km、走行時間8時間47分、平均燃費は10.8km/L、走行可能距離100km、EV走行可能距離2km。車格とパフォーマンスを考えれば納得のいく結果だと満足できた。(文:香高和仁[本誌]/写真:小平 寛)