旅立ち〜転倒〜砂漠にぽっち
ことの始まりは20年ほど前の1993年。当時43歳だったエンジニアのEmile Leray氏は愛車シトロエン2CVに乗ってモロッコの砂漠を横断することに。
舗装のない道を進んでいる時にクラッシュ。まさかの砂漠の真ん中に一人置き去り状態に。このまま待っていても誰もこないし、歩いて進めるほど容易な道ではなく、絶体絶命の危機。
残ったのは壊れた車と10日分の食料のみ。さあどうする!?
動ける車両を作る
一晩考えを巡らし、自分の命を助けるために行き着いた考えは壊れた車を解体して使える部品でまた動く車両を自作する方法。
まずシトロエンを解体し、ボディを砂嵐から身を守るシェルターとして利用。その他のパーツをすべて外し、作戦を練り、作業開始。
なんとか出来上がったのが上の写真の車両。エンジンとミッションを真ん中に積んで、フレームを短くして、片持ちのフロント周り。持っていた道具は基本的な工具のみで、溶接機もインパクトもない状況でここまで作り上げれるとはすごいです。
駆動方式はドラムが回転して直接タイヤを摩擦で動かすというなんとも原始的ではありますが、まさに生き延びるか砂漠の骨となるかの瀬戸際であり、大事なのは自分を一番近くの町まで連れて行ってくれること。
生き延びる
予定では3日あれば作れると持った車両も実際には12日間かかってしまい、作り上げた時に残っていたのは500ccの水のみ。
完成とともに走り出し、丸1日を走った所でモロッコ警察に保護されます。そのまま近くの町まで連行され、無事に生還。本人はさぞ安堵の気持ちだったと思いますが、登録されていない車両に乗っていたのが理由で違反キップをもらったようです(生き延びた本人からすればどうでも良いことだったと思いますw)。
この奇跡の生還劇は当時、フランスのメディアでは小さく取り上げられただけで、Leray氏本人もコメントなどは残していません。本当か嘘かわかりませんが、モロッコに駐在のフランス軍警察にこの企画を反対され、引き返すよう言われたのを回り道して強行突破したなんて話も。であれば、あまり公には出れないですね。
今でもこの車両は本人が保管しているとのこと。自分の命を救った自分の作品であれば離れることなんて出来ないですよね。Leray氏はご健在で、北フランスにお住まいとのことです。