陰りが見えるiPhone
しかし、現実を見ればAppleのスマートフォン事業には陰りが見えている。
2015年度通期の携帯電話端末の総出荷台数は、前年比5.6%減(4年連続の減少)の約3,659万台。そのうち、スマートフォン出荷台数は、約2,917万台で、総出荷台数の79.7%となる。
Appleは、2012年以降4年連続で国内の携帯電話端末メーカーナンバーワンのシェアを誇ってきたが、2015年は初のマイナス成長となっているのだ。
携帯電話端末市場、そしてスマートフォン市場が飽和状態になっており、機能や性能の向上速度が落ちているので、ユーザーが買い替えるタイミング(周期)が徐々に長くなっている。2年に一度買い換えていたユーザーが、3年に一度に買い替えを行ったとしたら、当然Appleの売り上げは落ちる。
他社製品に乗り換えるのではなく、Appleブランドへの忠誠心は変わらなくても、買い替え周期が少しずつ長くなることが、大きな問題になっているのである。
性能向上が十分でないと買い替えタイミングを短縮できない
事実、iPhone 6/6sから6s/6s plusに買い換えたユーザーは、その性能差をあまりにも実感できないので失望している。それが問題なのだ。
これがもし、iPhone 7がティム・クックがあらかじめ宣言しているように機能・性能、そしてデザイン面で大きくジャンプアップできなければ、さらにAppleの成長は失速することになるだろう。
iPhoneは 2年に一度メジャーアップグレード、1年置きにマイナーアップグレードを行ってきた。このタイミングで買い替えをユーザーにプッシュすることが基本的な戦略だった。
それが5sから6、6から6sにおけるアップグレードタイミングで、Appleはユーザーを驚かせるだけのジャンプアップを実現できなくなった。さらに中途半端な時期にSEを出したことで、ユーザーを混乱させてしまっている。SEは、性能そのものは5sをもちろんはるかに超えるものであっても、見た目が全く同じなので、アップグレードのありがたみを我々に説得しづらい。だから、4インチという小さなボディを欲しいと思うユーザーに、いまだに5sの中古を買うという選択肢を与えてしまっているのだ。
Appleはいま、コモディティ化したスマートフォンにサプライズを用意できなくなっているという「イノベーション能力の低下」と、ユーザーに買い替えを強いることに成功してきた「魅力的なマーケティング戦略の崩壊」という二つの問題を抱え始めている。
ついにジョブズ不在のツケを払うときがきているのかもしれない・・・。