2008年からZ4で参戦していたStudie。「ミク車」の愛称で人気者に
富士戦GT300クラス決勝で、輸入車勢(FIA-GT)のトップをとったのはNo.55 ARTA BMW M6 GT3でした。けれど、ARTAがBMWで参戦するのは2016年シーズンが初めて。「スーパーGTのBMW」と言えば、2008年からさまざまなチーム体制に変わりながらも参戦を続けている大先輩、『Studie』を抜きに語ることはできません。メンテナンスはもとよりカスタマイズ&チューニングまでトータルでBMWライフをサポートしてくれる専門店として、BMWモータースポーツの威信を背負いながら激闘を繰り広げてきたのです。
ちなみに2013年まで、Studie&BMW GTマシンの愛称となっていたのが「ミク車」。フィギュアメーカー『グッドスマイルカンパニー』とのコラボで、ボディ全体にポップな初音ミクのイラストが描かれていました。まさに、痛車の頂点に立つ1台だったワケです。毎年、新調されるミク車のバイナルは、レースファン以上に「そちら系」の皆さんに圧倒的な支持を得ることになりました。それまでのレースのイメージを覆すような斬新なカラーリングやユニークなプロモーション活動が、レースイベントそのものの一般的な認知度を大きく向上させたことは確かです。今度チャンスがあったら、本欄でも「ミク車大特集」をやりましょうか…。
参戦台数は少なめ。それでも2011年、2014年はシーズンチャンピオン!
本質的なレースとはあまり関係のないところで盛り上ったその人気ぶりとは裏腹に、参戦当初は大苦戦となりました。2008年シーズンの初代Z4(E86型)に積まれていたのは、E39型M5用(3代目)の5L・V8エンジン&6速マニュアルトランスミッションという組み合わせ。戦闘力でも信頼性でも、かなり課題がありました。09年シーズン中盤からE92型M3用(4代目)の4L・V8に換装、トランスアクスル化されてかなり戦闘力は上がっていきます。結果、最終戦には10位入賞を果たしましたが、本格的にBMWらしい「速さ」を見せつけ始めるのは、2011年から。Z4が第二世代へと進化し、同時に投入された『FIA-GT3仕様車』が戦局を一気に覆します。
2011年シーズン、StudieはE89型Z4 GT3(P65B44)を新たに投入、第3戦のセパン(マレーシア)でチームとして初優勝を果たします。ここからはまさに怒涛の進撃で、ついにBMW車としては初のシリーズチャンピオン(ドライバー/チームとも)を獲得します。さらに2014年には、独立したチームを作ったグッドスマイルレーシングが、同じZ4 GT3を駆ってシーズンでのドライバーズチャンピオンを獲得しました。ちなみに、2013年から大挙してGT300に投入され「最大派閥」を作り上げていたのがメルセデス・ベンツSLS AMG GT3/M159。宿命的ライバルとして、大激闘を繰り広げることになりました。
手頃なスポーツクーペとして「雰囲気を楽しむ」のもアリ!
日本市場にZ4(ロードスター/E85型)がデビューしたのは2003年。GTマシンのベースとなったクーペモデル(E86型)は、2006年から発売が開始されました。当初は直列6気筒の3リッターエンジン(265PS)のみの設定でしたが、2008年には3.2リッターで343PSを発揮、6速マニュアルトランスミッションを組み合わせた本格的なスポーツモデル『Mクーペ』が追加されています。FRスポーツクーペの王道を行く思いっきりロングノーズなカッコと「らしい」雰囲気を楽しむのなら、初期型の3リッターモデルでも十二分に満足できるハズ。しかも、130万円くらいから選べます。驚きのコスパです。
現行型(E89型)は、日本に入ってきたばかりの2009年型・2.5リッターエンジン車(204PS)が、ほぼ200万円から。最上級かつ最速の3リッターターボ(340PS)を搭載した『sDrive35is』は、2010年5月に日本市場でデビューしていますが、ほぼ5年落ちでも300万円台後半〜装備によっては400万円台後半のプライスタッグを掲げています。新車の本体価格が850万円ということを考えると、かなり落ち幅は少なめ。ですが、ハイパフォーマンスでしかもプレミアム感漂うスポーツクーペとしては、かなり手頃でスマートな選択肢と言えそうです。