皆さん、こんにちは。
前回の記事で、奄美の一味違った楽しみ方「アラセツ」について、少しご理解いただけたでしょうか?
前回は、アラセツの中でも ショチョガマ についてお伝えしました。夜明け前から始まり、山から稲霊を招き寄せ、豊年豊作を祈願するための行事でしたね。
さて、今回はアラセツ行事のもう一つ 平瀬マンカイ についてご紹介したいと思います。
平瀬マンカイって?
夜明け前から、明け方にかけて山で行われるショチョガマとは対照的に、平瀬マンカイは、満潮の時刻に合わせた夕方16時頃に、海で行われます。
豊作を願う行事だから、山で行うのは理解できるけど、なぜ海?と思う方もきっといるでしょう…。
実は、これは奄美に伝わる「ネリヤカナヤ」の信仰に基づいているのです。ネリヤカナヤとは奄美の方言で、ニライカナイ(遥か遠い東、辰巳の方角の海の彼方、または海の底、地の底にあるとされる異界)と同じ意味になります。つまり、 豊穣や命の源は海にも存在する。だから海でもアラセツ行事は行われなくてはならない 、ということなのです。
【ニライカナイとは】
遥か遠い東(辰巳の方角)の海の彼方、または海の底、地の底にあるとされる異界。
豊穣や生命の源であり、神界でもある。年初にはニライカナイから神がやってきて豊穣をもたらし、年末にまた帰るとされる。また、生者の魂もニライカナイより来て、死者の魂はニライカナイに去ると考えられている。
奄美の文化では、遥か海の彼方(ネリヤ)から、神々がやってくるため、海はとても神聖なところだと考えられているのです。
平瀬マンカイは、東シナ海に面した海辺で、神平瀬、女(メラベ)平瀬と名付けられた二つの岩の上で行われます。神平瀬には、5名のノロ役の女性、女平瀬にはシドワキ、ウッカム、グージというノロの補佐役の男性3人と、女性4名が乗ります。そして、女平瀬の女性が太鼓を打ち鳴らし、神平瀬と女平瀬とで唄の掛け合いが行われ、ネリヤの神々に豊作祈願をするのです。
ちなみに「ノロ」というのは、奄美や琉球信仰における女司祭のことであり、神々と交信ができる存在とされています。(詳しく知りたい方は こちら をご覧ください)
唄の掛け合いが終わった後は、神平瀬で祭詞がとなえられ、ネリヤの神に礼拝をして、祭は終了すします。そして、礼拝が終わった後は祭を見に来ていた集落の人、観光客みんなで浜で八月踊り。
奄美の人は、何かと歌と踊りが好きな民族ですね。(笑)
やっぱり「結」の島?
ショチョガマと平瀬マンカイ、どちらを見ても、集落内の絆はもちろんですが、観光客の人におにぎりの差し入れをしたり、島の人観光客関係なく、一緒になって踊り明かしたり、初めての人でもまるで自分の家族のように温かく迎え入れる、奄美の人となりの様子が伺えます。
これは、鹿児島県でありながら、本土とは切り離された離島であるがゆえ、みんなで足りない部分はお互いに助け合い、尊敬しあいながら生活していく中で、築き上げられた 結の精神 によるものだと言われています。
同時に、人と人との繋がりに関わらず、豊かな海、山に囲まれて自然の厳しさも恩恵も全て受け入れながら、自然と共に暮らしていく中で、ふと自然や神様とつながっている、自然に生かされているんだ、と感じるのかもしれません。
不思議なことに、奄美を初めて訪れた方でも、そんなふうに感じることがあるといいます。
ふらっと、どこかに旅に出たい、そんな時には、一人で奄美を訪れてみませんか?自然に身を任せ、不思議な自然の力を全身で感じてみる、そんな体験も良いかもしれませんよ。