11月29日、ホンダは2輪電動化の加速と事業体質強化に関する「2023 Honda 電動二輪事業説明会」を開催しました。内容は2030年までの電動化ロードマップですが、販売年間台数目標の引き上げ、50%という大幅なコストダウンの取り組み、そして多額の資金の投資計画など、いかにホンダが電動化に対して力を入れているか、がうかがえる内容でした・・・。

リン酸鉄リチウムイオン電池を2025年から投入予定

今回の発表でホンダは、2輪EVのコネクティビティ(インターネットを利用した接続・連携)の強化を方針のひとつにあげています。動力、各種制御、電装類すべて「電気」でまかなう2輪EVは、ICE車よりも潜在的にコネクティビティとの親和性が高いといえます。

強化されるコネクティビティの一例として、ホンダはOTA(オーバー ジ エア、インターネットを利用したソフトウェア更新)を取り上げています。ホンダは2020年よりHonda RoadSync(ホンダロードシンク)というコネクティビティを活用したサービスを提供していますが、これを進化させて、充電ステーション情報提供などを盛り込んだ提案型ナビ機能を付加する、IVI(インビークル インフォテインメント)を2024年リリース機種に搭載する予定とのことです。

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さらに2026年リリースモデルには、TCU(テレマティクス通信ユニット。テレマティクスとは電気通信=テレコミュニケーションと、情報処理=インフォマティクスを組み合わせた造語)を搭載する予定です。将来的には、ICE、EVの双方から得られるデータを活用し、利用情報や顧客ニーズを把握して安全性を高める機能などを提供することをホンダは計画しています。

FOTA(ファームウェア オーバー ジ エア)含むOTAは、通信によるスマホのアプリやOS更新のようなもの、といえます。TCUによる顧客情報収集は「プライバシー」問題という観点もありますが、ある程度プライバシー守られるならという前提のもと、地図アプリなどサービ充実の方を歓迎している現状からすると、多くの人に受け入れられるものと思われます。

なお10年ほどの期間のうちに、2輪EV累計30機種投入という目的を達成するため、ホンダは2輪EVの「モジュールプラットフォーム」を構築することを考えています。さまざまなバリエーションのモデルに共用可能な2輪EVモジュールプラットフォームを用意することができれば、ニーズに応じた2輪EV製品を速やかに市場投入することが可能になります。またコスト面でも、共用化がコストダウンに大きく効くことが期待できるでしょう。

今回の発表で興味深い内容のひとつに、リン酸鉄リチウムイオン電池技術を用いたバッテリーを2025年に投入する予定・・・があります。現行のホンダ製2輪EV用バッテリーは三元系リチウムイオン電池を採用していますが、リン酸鉄リチウムイオン電池はリチウムイオン電池に比べ長寿命、自己放電率の低さ、高い安全性、高い耐久温度、環境に優しい、そして安価な原材料・・・という6つのメリットがあります。

一方で、リン酸鉄リチウムイオン電池のリチウムイオン電池と比較してのデメリットとしてはエネルギー密度の低さにより、最終的な製品サイズが大きくなりがちなこと。そして原材料は安いが特許関係などにより製品化のコストがかかり製品価格を高くなってしまいがち、という2つがあげられます。

「Honda Mobile Power Pack e:(ホンダモバイルパワーパックイー)」の技術は、日本の交換式バッテリーコンソーシアム、Gachaco(ガチャコ)にも採用されています。

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ホンダはリン酸鉄リチウムイオン電池、三元系リチウムイオン電池それぞれが得意とする出力帯やコスト面などを考慮し、今後の2輪EV製品にそれぞれを採用していく考えです。現行の交換式バッテリーである「Honda Mobile Power Pack e:(ホンダモバイルパワーパックイー)」などは三元系リチウムイオン電池、バッテリー車体据え置き型プラグイン方式はリン酸鉄リチウムイオン電池・・・というカンジになるのでしょうか? なお中長期的には開発中の「全固体電池」活用を視野に入れているとのことですが、2輪EV用バッテリーの「本命」と目される全固体電池の登場が早期に実現することを期待したいです。