ますます"脱炭素"への歩みが加速していった2022年・・・。2輪EV業界や2050カーボンニュートラルに向けて、世界ではどのような動きが今年はあったのでしょうか? 先日お届けした前編に続き、 10大ニュース(順不同)形式で2022年を振り返ってみましょう!

※[前編]はコチラ!

台湾のGogoroが米ナスダックに上場!! そして世界市場への展開が本格化!!

3月に2輪EV用交換式固体バッテリープロトタイプ、そして次世代プラットフォーム「SSmartcore」を公開した台湾のGogoro。同国市場で2015年よりバッテリー交換式電動スクーターに関するサービスを始めたGogoroですが、4月5日には予告どおり米ナスダックに上場を果たし、この分野のリーディングカンパニーとしての勢い世界に見せつけました。

なおGogoroは上場前日4日に、SPAC(特別買収目的会社)であるポーマ・グローバルとの合併を完了。当時、合併後の新会社は少なくとも3億3,500万ドル≒418億3,279万円!の現金を調達するであろう・・・と予想されていましたが、10月には10からなる銀行シンジケートグループから3億4,500万ドルの融資を受けています。Gogoroはこの融資で既存の借入金を返済するとともに、さらなる事業拡張のためのエネルギーセル購入と、Gogoroネットワーク事業への投資を進めるそうです。

今年Gogoroは、5月にイスラエル進出を発表し、9月からサービス提供を開始。同じく9月にはシンガポール陸上輸送局と、バッテリーシェアリング検証のパイロット事業を行うことを発表。そして11月にはインドの大手EV-as-a-Serviceプロバイダーのジプ・エレクトリックとパートナーシップを締結。ラストマイル配達などのサービスを、連邦直轄領のデリーで12月から開始することを発表しました。

さらに12月には、経営コンサルタント企業の917ベンチャーズとアラヤ・コーポレーションと戦略的パートナーシップを結び、フィリピンにおける2輪EVにラストマイル配送のパイロットプロジェクトを立ち上げることを発表。今年は中国がゼロコロナ政策を放棄したり、中台関係が複雑になったりした事情もあり、Gogoroとしては魅力的な巨大マーケットである中国市場の「不確実性」がある程度解消するまでは、インド、インドネシアなどのアジア圏市場開拓に力を入れる方針を採用しています。

ともあれ、世界の電動スクーター市場の行方を占うためには、2023年もGogoroの動向から目を離せないことは確かでしょう!

可搬式水素カートリッジのプロトタイプが公開!! 水素社会の到来・・・は果たしてあるのでしょうか?

今年6月、トヨタとその子会社ウーブン・プラネット・ホールディングスは、先日手軽に「水素」を持ち運びできる、ポータブル水素カートリッジの試作品を公表し、話題となりました。

2022年に公開されたポータブル水素カートリッジのプロトタイプ。今後、仕様やデザインの変更の可能性あるとのことで、質量目標(タンク満タンで5kg程度)はバルブ、プロテクター部を除いた値です。なお、用途に合わせ複数の種類を作ることを検討しているそうです。

global.toyota

風力発電や太陽光発電などの再生可能エネルギーを用いた水素は「グリーン水素」と呼ばれ、グリーン水素は利用時、製造時にCO2排出を抑えられる、地球にやさしいエネルギーとしてその将来性を期待されています。

なお水素は電気同様に二次エネルギーなので、製造時に電気を使うことによる効率の悪さという問題はあるものの、燃料電池システムと組み合わせて利用するだけでなく、燃焼させての利用も可能な点が大きな特長です。また大量の電力の貯蔵方法としても、水素の活用は将来期待されています。

ポータブル水素カートリッジの使用イメージ図には、ドローンの動力源、マイクロカーの動力源、ポータブル電源および熱源用途、オフグリッドホームでの利用、そして2輪車の動力源としての水素の活用が描かれています。

ポータブル水素カートリッジの使用イメージ図。左上に、2輪車もしっかり描かれています。

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もっともこの2輪車での使用イメージは、日本ではトヨタ、カワサキ、ヤマハが研究中であることを明らかにしている「水素ICE(内燃機関)」用ではなく、FCV(燃料電池車)用としての活用を想定していると思われます。水素ICEはNOx(窒素化合物)を排出するので、厳密にはゼロエミッションではないのが残念ながら弱点のひとつです。

伊ミラノで開催される欧州最大規模の2輪見本市「EICMA2022」に合わせて公開された、カワサキのYouTube動画に登場する水素ICE搭載車のイメージ。パニアケースのなかに、片側5本の水素カートリッジを搭載しています。ちなみにトヨタとウーブン・プラネット・ホールディングスが公表した、ポータブル水素カートリッジのプロトタイプの形状は円柱で、直径約180mm、全長約400mmというサイズです。

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ガソリンICE搭載車に慣れ親しんだ私たちとしては、FCVだけでなく水素ICEの発展にも期待したいのですが・・・今年の夏には、ドゥカティCEOのクラウディオ・ドメニカリが2050カーボンニュートラル対策として電動バイクのほか、eフューエル(再生可能エネルギーなどによる可燃性燃料)、そして燃料電池やICE燃料としての水素を3つの選択肢として考えていることを明かしています。トヨタ、カワサキ、ヤマハの国内勢のほか、ドゥカティなどの海外勢が水素ICE開発に興味を示してくれれば・・・ちょっと期待が高まってしまいますね。

長い目で見た場合・・・各地の街で水素のサプライチェーンとインフラが、許容可能なコストで広く普及したとき・・・ポータブル水素カートリッジを活用した2輪車が人々の暮らしに役立っている未来が訪れているのかもしれません。電動化同様、2輪の水素活用の今後にも、注目し続けたいです!

カワサキが2輪EV販売を開始!! そして2023年にも電動ニューモデルが登場予定!!

周知のとおりカワサキは、2025年までに10機種以上のEV(バッテリーEV=BEVおよびハイブリッドEV=HEV)を市場に投入し、そして2035年までに先進国向けの主要モデルを「電動化」する予定であることを公表しています。その第一弾として6月には、3〜8歳の子供を対象とする電動バランスバイク「エレクトロード」を公開しました。

カワサキのエレクトロード。シート高は410〜520mmに調整可能で、フートペグを折りたたむことでセルフプッシュ式のバランスバイクのように扱うこともできます。

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そして3年ぶりの開催となった「鈴鹿8耐」の前夜祭(8月6日)にて、カワサキは開発中の「EVスポーツ・プロトタイプ」と「ハイブリッド・プロトタイプ」のデモ走行を披露。秋のEICMA2022では、電動モデルのネイキッドタイプ(Z)とフルカウルタイプ(Ninja)の2機種が、2023年モデルで販売される予定であることが明かされました。

2024年モデルとしての登場がウワサされている、ストロングハイブリッド方式のHEVモーターサイクルも、来年の秋までにはその詳細が明らかになっているかもしれませんね? 国内メーカーとしてはいち早く、電動スポーツバイクの投入を予告したカワサキの"本気度"が、どのような製品作りに結びつくのか・・・注目したいです。

"エネルジカ時代"最期のMotoE王者になったのは、D.エガーターでした!!

電動車によるロードレースシリーズ戦の「エネル MotoE ワールドカップ」。成立時からワンメイク車両のプロバイダーをつとめてきたのは伊のエネルジカでしたが、2023年シーズンからはドゥカティがその役割を担うことが決まったため、エネルジカ期としては2022年シーズンが最期のシーズンとなりました。

2022年シーズンMotoE最終戦レース1(ミサノ)で、首位争いをするD.エガーター(77番、ダイナボルト インタクトGP)とE.グラナド(51番、LCR E-チーム)。ランキング1位と2位の戦いは、2位走行中だったグラナドが14コーナーで転倒したことで決着。レース2の結果を待たず、2位でゴールしたエガーターが見事MotoE王者に輝きました。

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過去の鈴鹿8耐での活躍で、日本にもファンの多いD.エガーター。2021年はテン・ケイト・ヤマハのライダーとして、世界スーパースポーツ選手権初タイトルを参戦初年度で獲得。2022年も同タイトルを防衛し、スーパースポーツとMotoEの二冠達成を成功させました。

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2019年マッテオ・フェラーリ、2020〜2021年ジョルディ・トーレス、そして今年はエガーターと、"エネルジカ期"のMotoEは3人の電動車王者を生み出しました。2023年からはじまる"ドゥカティ期"のMotoEでは、どのようなドラマが展開されることになるのでしょうか? 

なお2023年度はこれまでの「FIM エネル MotoE ワールドカップ」から、「FIM エネル MotoE 世界選手権」と名称を変え、世界選手権に格上げされることになります。また開催数を増加させて、初めて欧州大陸以外の地(英国)でMotoEのレースが行われることが予定されています。

交換式バッテリーの欧州コンソーシアムであるSBMCは、メンバーが4社から21社まで大幅に増えることに!

2019年の「電動二輪車用交換式バッテリーコンソーシアム」創設からスタートした、"国内コンソーシアム(共同体)"が発展し、秋のGachaco(ガチャコ)のサービス開始に至ったという話題は今年の10大ニュースの前編で触れましたが、2021年9月にホンダ、KTM、ピアッジオ、ヤマハという日欧の大手4メーカーが、2輪EVおよび小型電気自動車用の交換式バッテリーのコンソーシアム契約を締結して生まれたSBMC=スワッパブル バッテリーズ モーターサイクル コンソーシアムについても、2022年には著しい発展があったといえるでしょう。

一般に"欧州コンソーシアム"として認知されているSBMCですが、2022年に参画企業の数は4から21へと一気に増加! そしてSBMCの交換式バッテリー標準化に向けた、各種の活動も順調に進んでいることが明かされました。

今年7月にKTMの本拠である、オーストリア・マッティグホーフェンの「KTMモトホール」にて開催されたSBMCサミットの参加者たち。SBMCに参画する各企業・団体の代表者40人が集いました。

www.sb-mc.net

11月9日にはイタリア・ミラノで開催されたEICMA2022に合わせ、SBMCの「ステークホルダー・ミーティング」が開催され25社以上の企業が参加。有力2輪メーカーが参画するSBMCに加わる企業は、今後も増加すると思われます。

今後も世界中の、各メーカーの「電動化」への取り組みはさらに加速することが予想されますが、2023年度にはSBMCの標準規格化された交換式バッテリーの仕様が、いよいよ公開されることになるかもしれません? 

この分野での世界進出実績について、SBMCは台湾のGogoroに遅れをとっている観があります。しかしSMBCには老舗2輪メーカーが多いので、各地に整備された各社のディーラー網などをうまく活用すれば、これからの巻き返しは十分可能と思われます。日本メーカーが参画しているSBMCの、反撃を期待したいです!