先週末の4月30日〜5月1日にスペイン(ヘレス)で開幕した、電動ロードレーサーを使用した選手権エネル MotoE ワールドカップ」。今シーズンは2019年のシリーズ開始時からワンメイク車両のプロバイダーを4年間務めたエネルジカにとって「最終年」となりますが、同社の新型エゴ・コルサは旧型よりさまざまな点でアップデートされているのが特徴です。

予選・決勝方式が昨年から変化したのは、新しい充電器の進化のおかげ!?

2019年からスタートしたMotoGP併催イベントの電動バイクのロードレース選手権「エネル MotoE ワールドカップ」は、2023年からは伊・ドゥカティが電動ロードレーサーを供給することが決まったため、それまでその役を務めてきた伊・エネルジカにとっては、今年は「有終の美」を飾るべきシーズンとなります。

今シーズンのMotoEの大きな注目点は、それまでの予選・決勝方式を改め、新しいフォーマットを用意したことでしょう。今まではシングルラップの「Eポール」で予選順位を決めていたMotoEですが、今シーズンは「MotoGPスタイル」のQ1・Q2セッションを予選に導入。そして決勝レースは、各ラウンドで2レースが行われることになっています(全7ラウンド・14レース)。

Q1、Q2セッションの予選を採用することができるようになったのは、MotoEのタイトルスポンサーであるエネルギー企業「エネル」が新型の充電器を投入したのがその理由です。エネル・グループは現在、Eモビリティに特化した充電ポイント約32万箇所管理する「エネルXウェイ」というサービスを提供しています。

そんなエネルXウェイがMotoEに提供する「ジュースポンプ 60 レース エディション」という新型充電器は60kWの電力供給が可能であり、Q1通過した車両がセッション間の短時間で急速充電し、Q2に出走することを可能にしています。

去る4月に行われた開幕前の最後の公式テストを、エネルジカ・エゴ・コルサで走る2019年MotoEチャンピオンのマテオ・フェラーリ(フェロ グレシーニ MotoE)。このテストでは新採用されたQ1・Q2方式予選のシミュレーションも行われ、セッション間の10分の内のわずか8分の急速充電で、プラス2周分の全開走行に必要な電気をチャージすることができることが確認されました。

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なお新しいQ1・Q2方式のMotoEの予選は、フリー走行の合計タイムで上位8名がQ2へ自動的に進出。そして9位以下のライダーたちはQ1を走り、Q1上位2名がQ2へ進出。Q2は計10名で、ポールポジションの座を得るべく競い合うという仕組みです。Q1・Q2ともに周回数制限はなし。Q1突破した2名のライダーには、補填的に使用できるリアタイヤが1本与えられます。1ラウンド毎2レースのグリッドは、Q1・Q2の結果によって決められます。

MotoE初のQ1・Q2での予選で、ポールポジションを獲得したのはミケル・ポンス(LCR E-チーム)でした。MotoE2年目のスペイン人ライダーで、昨シーズンは第3戦(カタルーニャ)で1勝を記録し、年間ランキング7位となりました。

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新型エネルジカ・エゴ・コルサは旧型から約15kgもダイエット!

4年目のシーズンを迎えたMotoE用ワンメイク車両のエネルジカ・エゴ・コルサは、ブランニューの電動モーターとインバーターなどの技術的アップデートを受けており、車重は旧型比で約15kgも軽量化されていると公表されています。

旧型のエゴ・コルサは250〜260kgというロードレーサーとしては「ヘビー級」の車重がネガとして指摘され続けてきました。単純計算で新型は235〜245kgくらいまで軽量化されたことになりますが、依然として「ヘビー級」ではあるものの、エネルジカは地道かつ着実に、エゴ・コルサの電動ロードレーサーとしての戦闘力強化に努めてきたわけです。

開幕戦の予選で5位となった、昨年度ランキング2位のドミニク・エガーター(ダイナボルト・インタクトGP MotoE)。エネルジカの説明によると、電動技術のアップデートと約15kgの軽量化により、新型エゴ・コルサはコーナー侵入時、そしてコーナーでの方向変更時の操縦性が向上した・・・とのことです。

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注目の開幕戦のレース1は、ホールショットを奪ったエクトル・ガルソ(テック3 E-レーシング)をマティア・カサディ(ポンス レーシング 40)、ポールポジションスタートのM.ポンスが追う展開でスタート。8周のレース中盤にはエリック・グラナド(LCR E-チーム)とD.エガーターがトップ3に追いつき、5台による優勝争いという構成になります。

スペイン・ヘレス開幕戦レース1のスタート!

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大きく展開が動いたのは残り3周、先行するグラナドを追ってポンスがダブルオーバーテイクを仕掛けた際、カサディにインから接触! その結果カサディは転倒し、グラナド、ポンス、エガーター、フェラーリ、そしてジョルディ・トーレス(ポンス レーシング 40)がトップ5となります。そして転倒したカサディの外側を通過したことで、ガルソは6位まで後退しました。

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ライバルたちの追撃から逃げ切ったグラナドが、今シーズン緒戦で見事優勝! 2位は0.696秒差でエガーターが入賞。3位はポンスでしたが、最終ラップでカサディ転倒の原因となった「無責任なライディング」によるロングラップペナルティが出たものの、それを実行できなかったゆえに3秒ペナルティが適用されたことで、8位まで降格することになりました・・・。

ヘレスのレース1、先頭でチェッカーを受けるE.グラナド。昨シーズン最多ポールポジション(4回)、最多ファステストラップ(4回)、そして最多勝の2勝をあげながらランキング4位に終わったブラジリアンライダーのグラナドですが、悲願の王者獲得に向け幸先良いスタートを切りました。

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MotoE2022 第1戦スペイン レース1 リザルト
1 51 エリック・グラナド LCR E-Team 14’36.988
2 77 ドミニク・エガーター Dynavolt Intact GP MotoE +0.696
3 11 マテオ・フェラーリ Felo Gresini MotoE +1.005
4 4 エクトル・ガルソ Tech 3 E-Racing +1.537
5 40 ジョルディ・トーレス Pons Racing 40 +1.697
6 78 大久保光 Avant Ajo MotoE +2.345

翌日のレース2は、前日同様ガルソがホールショットを奪うも、1周目のターン5までしかリードをキープできませんでした。序盤はエガーター、ポンス、大久保光(アヴァント アジョ MotoE)、ガルソ、カサディ、グラナドが先頭集団を形成する展開となります。

残念ながら大久保は表彰台争いから遅れ、残り5周となるフィニッシュラインはポンス、エガーター、グラナド、ガルソ、大久保の順で通過。そして8周のレースの最終ラップ、ターン1でポンスに仕掛けた際に突っ込みすぎたエガーターを、背後から追っていたグラナドがコーナー出口で接触するもパス。さらにターン6では、チームメイトのポンスを抜いて0.217秒差で見事真っ先にチェッカーを受けました!

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MotoE2022 第1戦スペイン レース2 リザルト
1 51 エリック・グラナド LCR E-Team 14’36.321
2 71 ミケル・ポンス LCR E-Team +0.217
3 27 マティア・カサディ Pons Racing 40 +0.394
4 77 ドミニク・エガーター Dynavolt Intact GP MotoE +0.488
5 78 大久保光 Avant Ajo MotoE +1.182
6 11 マテオ・フェラーリ Felo Gresini MotoE +1.715

2017年度のFIM(国際モーターサイクリズム連盟)CEV Moto2欧州王者で、MotoE初年度の2019年から継続参戦中のグラナドがMotoE最多となる通算6勝目、7勝目を更新した開幕戦となりましたが、このまま勝利数を積み重ねて今シーズンにタイトルを獲得するのか? それともライバルたちが反撃して追い抜くのか? 5月13〜15日の次戦フランスを楽しみに待ちましょう!

MotoE2022 ランキング ※2022年5月1日時点
1. E.グラナド ブラジル 50
2. D.エガーター スイス 33
3. M.ポンス スペイン 28
4. M.フェラーリ イタリア 26
5. 大久保光 日本 21
6. J.トーレス スペイン 20