カッコーン!と清々しいほどのカウンターステア = 所謂 "逆ハン" は、誰もがイメージするダートトラックらしさの象徴と言えますが、ライディング理論の合理性とか最近の走りのトレンドからすると、ややちょっと少しだけ古き良き無駄の範疇。なんですが実はこのような "余地" こそが、あなたをしなやかで力強いダート・ライディングの世界の深淵に導く、重要な鍵のひとつでもあるのです。

(少なくとも右は) 50°までハンドル切れなきゃダートトラッカーに非ず?

WELCOME RACE FANS!! ダートトラックライダー/FEVHOTSレースプロモーターのハヤシです。"その筋のアメリカ人有識者" に聞くと、ダートトラックマシンに要求される素性としてハンドル切れ角は "あればあっただけ良い" とのことですが・・・そうは言ってもフューエルタンクに当たっちゃうとか直線走っててフラフラしちゃうとかあるから具体的な寸法教えてよ、と食い下がりましたらその値、最低でも50°、とのこと。セオリーあるならはじめからからそう言ってくれ。

それ以下だとどうなるか?ターン中に激しくリアタイヤが滑って許容値を超えて横を向いたとき、万が一右にハンドルフルロックしてしまったそのあとは・・・ハイサイド (コーナー外側) 目がけて激しく転倒する場合があります。アタマとか鎖骨とか肩とか痛めがち。結構痛いですよ。マシンもね。

一般的な市販オフロード・トレール車 = 公道用オートバイのハンドル切れ角は45°前後と言われています。モトクロス競技用コンペティションマシンはそれより幾分少なく、オンロードバイクは30°とか?有識者いわく "全然足らない" と。本場ではモトクロッサー改のダートトラックマシン = DTXも、ハンドルストッパーを削ったりトリプルツリーを交換して少しでも舵角を稼いだりするみたいです。もー、はじめからそう言ってくれ。

身近な他種目の話題だと、ジムカーナ用マシンはフルロックを多用してブレーキ引きずって走ったりもするので切れ角は標準より少なめに調整するようです。トライアルは本格的なマシンだと60°以上切れるのもあるのかな?夫々フォークオフセット量 (ステムシャフト〜フロントフォークまでの距離) などもそれぞれ大きく違うはずなので、この数値だけでハンドリング云々を語るのは早計ですが。

ダートトラックと車体構成は大きく違いますが、同じオーバル・スピード種目である "スピードウェイ" は90°近くまでハンドルが切れます (この写真でもまだ余地あり) 。ターンをスロットル開け続けで周回する競技スタイルからこれほど舵角が必要なのは確かですが・・・もしこれが30°とか45°しか切れないマシンだったら?ビッターン!と右側に投げ出されることは想像に難くありませんよね。

公道用市販車を改造して取り組むなら舵角稼ぎ策をあれこれ悩みましょう!

ハンドルを目一杯切ってフューエルタンクに当たってしまうなら、その手前に動きを規制するストッパーをつけるのがごく素直な考え方だと思いますが、あちらのダートトラック界隈の発想としては、タンクを後ろに下げるとかタンクを叩いて凹ますとかそもそも別のタンクを選ぶとか、とにかく舵角優先で、とのこと。そうかだからストッパー位置もフォークオフセットも可変な、多分規則性や黄金律はあるんだろうけど、それがハッキリ見えてきづらい造り込みになってるのだなぁ、と実感。

このあたりの感覚は・・・よくよく探求を進めてみないことにはこちらに染み込んできませんね。

一見ラフでルーズで豪快なばっかりにみえるこのシンプルなスポーツの道具には、なかなかの工夫が凝らされているということ、じっと眺めていると徐々に見えてきますよ。それらが整って初めて、バランスの整った鋭いパフォーマンスが実現できる、という部分もきっとたくさんあるはずです。

ヒトは道具を作り、道具がヒトを育てる。なんつって?
ではまた金曜日の "Flat Track Friday!!" でお目にかかりましょう!