世界には「BBS」ブランドのホイールを製造する企業が日本に1社、ドイツに1 社、存在している。今回はその関係性について、プロダクツをもとにご紹介しよう。メインテーマは「鍛造×鋳造......似て非なる“逸品”の美学 」。写真:永元秀和/BBS GmbH

タイトルトップに並んだ2本のアルミホイールを、ご覧いただきたい。優美なRを描くY字型の7本変形スポーク、精密な加工技術の粋を実感させる肉抜き処理など、一見して明らかな相似性を感じさせることが、おわかりだろう。

実はこの2本、日本とドイツ、ふたつの国に拠点を置く「BBS」ブランドがそれぞれリリースしているもの。サイズの違いやセンター部分の処理など、細部で異なっているものの、基本デザインはほぼ同じ、と言っていい。

だからと言って、どちらかがよくできた「そっくりさん」というワケではない。製造しているのは、左の「RE-V7」が富山県高岡市に本社工場を有するBBSジャパン、右の「CH-R」が、ドイツ南西部のシルタッハに拠点を持つBBS GmbH、通称BBSジャーマニーである。

RE-V7 ◎ BBS Japan
鍛造らしいエッジの利いた存在感。スポーク部がより細身で、全体的に足が長く見える。

CH-R ◎ BBS Germany
鋳造のCH-Rは、同じ7本クロススポークでも、エッジ感がやや穏やかつおおらかな印象。

両社からは、ここで紹介している2本以外にも、兄弟的な商品ラインナップがいくつかリリースされている。ロゴマークだって、まったく同じだ。

しかし取引関係こそあるものの、別資本の独立した企業体として存在している。もっとわかりやすく言えば、どちらも本物の「BBSホイール」を製造販売している、正規のメーカーなのだ。

鍛造と鋳造、製法こそ違う。 けれど 「魂」 は変わらない

CH-Rのサイズバリエーションは、18インチから20インチまで。911の他、BMW Mやゴルフ TCRなどにも似合う。

もともとBBSが企業として生まれたのはドイツ。1970年のことだった。現在もBBS GmbHがあるシルタッハにふたりのエンジニアが会社を設立したのが、ブランドとしての歴史の始まりだ。

やがて、日本の鍛造技術を使った製品の技術提携がスタート。日本のワシマイヤー株式会社で製造していたが、1983年に共同出資の日本BBS株式会社が設立された。その後、日本のBBSが鍛造ホイールの製造販売権を持って独立、2013年にBBSジャパン株式会社に社名が変更された。一方、ドイツのBBSは鋳造ホイールの製造販売権を持って、現在に至る。

つまり両社の製品は、デザインはそっくりでも製法が異なっているということ。ここに並んだ「RE-V7」と「CH-R」も、同じ1ピースながら鍛造と鋳造の違いがある。ちなみにBBSジャパンは鍛造製品にこだわり続けているが、BBSジャーマニーではBBSジャパン製の鍛造ホイールを自社ブランドで販売している。

RE-V7 ◎ BBS Japan

製法は異なっても、モータースポーツ由来の高性能と信頼性を追求するモノ作りは変わらない。

夏ごろの国内発売を予定している「RE-V7」も、日本のスーパーGTマシンの足もとを固めていたスポーツホイールの市販仕様だ。その優れたデザイン性、機能性が、本場欧州でも注目されている。

日本人としては、ちょっと鼻が高い。