ホンダらしさを保つためのアグレッシブなデコレーション
ともに2Lの直列4気筒ターボエンジンを搭載する今回の2台。気になるところはやはりパフォーマンスの差ではある。だがこうした趣味性の高いスポーツモデルはデザインがやはり重要で、好き嫌いはもちろんあるにせよ、初めに少々言及させていただきたい。
シビックのデザインについては、アグレッシブなエアロとダクトのコンビネーションなど、その内に秘めたポテンシャルをとことんアピールするための「見せつける」デザインが最大の特徴だ。
一方、ブランディングという視点から分析してみると、日本車の多くに見られるが、ほとんどのメーカーがニューモデルをデビューさせるたびに、まったく別のクルマのように「進化」させてしまうように思える。確かに手法としては目新しく、新鮮で、アトラクティブである。
ホンダも同様だ。昔、あるホンダのデザイナーは「弊社のニューモデルは先代モデルが燃え盛る火口に飛び込んで、その燃え尽きるエネルギーを再吸収し、再生する不死鳥のようでありたい」と語っていた。
確かに素晴らしい哲学で、大いに説得力がある。しかしブランディングとしては疑問が残る。ブランドとは「焼印」の意味で、同じように見える家畜が自分のものであることを示す、文字どおりの「印」だ。そういう観点からタイプRを見ると、エンブレムを外すとどこのブランドだか言い当てるのが難しい。加飾された部分が多すぎるように思える。
もっともここまでアグレッシブだと、2021年に登場すると言われるニューシビックのデザインが一体どうなるのか、大いに興味をそそられる。
BMWのキドニーグリルもまた、時代とともに進化する
一方、BMWには確かに「キドニーグリル」という伝統的なアイコン、デザインエレメントがある。 その一対となるラジエータグリルは、1933年に発表されたBMW303から採用が始まった。当時、BMW車はすでに高性能で、ラジエータグリルの面積が他ブランドのクルマと比べると大きい。
そこで「ホルヒ社(のちのアウディ社)」からBMWにチーフデザイナーとして移籍してきたフリッツ・フィードラーは、大きなラジエータの中央を折り曲げて2個に分け、さらに空力特性を改善するために角を丸くした。彼はその一対のフォルムが腎臓(キドニー)に酷似していると考え、自らキドニーグリルと名付けたのだ。
しかし時代は変わり、クルマの車高はどんどん低くなり、並行してキドニーグリルも次第にフラットなフォルムに変化してきている。いや、それどころか最近のBMWはこのアイコンの変化すら検討しており、最新のXそして1シリーズに見られるように、左右のキドニーを繋げる工夫をしている。
この「モノキドニー」(一個の腎臓)と呼ばれる新しいアイコンは、内燃エンジンの冷却という役割を与えられていたラジエータが、次世代パワープラントにはもはや意味を持たなくなるという発想から起こったデザイン改革だ。