GT500クラスのディフェンディングチャンピオンとして2019年シーズンに挑む#1 RAYBRIG NSX-GT。5月3・4日に行われた第2戦富士スピードウェイで果たした入賞の裏には、非常にエキサイティングな体験があったもよう。その一部始終とあわせて、山本尚貴選手とジェンソン・バトン選手の声もお届けする。(写真:井上雅行)
話すのはこの人:
ホンダチーム3位入賞の舞台裏/第二戦富士スピードウェイ
GT500クラスのディフェンディングチャンピオンとして2019年シーズンに挑む#1 RAYBRIG NSX-GT。そのエースドライバーを務める山本尚貴選手は、第2戦富士の公式練習と公式予選を終えていらだちを隠しきれない様子だった。
なにしろ、公式練習ではトップに1.072秒の差をつけられて12番手、2段階で行われる公式予選最初のセッション(Q1)でも12番手となり、トップ8だけが出走できる第2セッション(Q2)に進出できなかったのである。
「マシンが跳ねる症状が抑えられなくて、このような結果になりました」 山本選手は悔しさを滲ませてそう語った。
「マシンが跳ねる」とは、どういうことなのか? 一般公道だろうとサーキットだろうと、タイヤと路面は常に安定して接触しているのが理想的な状態。
いっぽうでマシンが跳ねると、その上下動に応じてタイヤと路面の接し方が強くなったり弱くなったりして、タイヤが生み出すグリップ力もこれに応じて変動。コーナリング自体が不安定となって、ドライバーはマシンが持つ性能を振るに引き出せなくなってしまうのだ。
つまり、チャンピオンマシンである#1 RAYBRIG NSX-GTが第2戦初日に苦戦を強いられていたのは、マシン自体の性能が低いわけではなく、サスペンションなどのセッティングがコンディションにマッチしていなかったからといえるだろう。
もちろん、そんなことをチームのエンジニアたちは百も承知している。それでも、マシンの様々な性能をバランスさせようとすると、そうならざるを得なかったのだ。
しかし、チームの伊与木 仁チーフエンジニアを中心とする技術陣はこの難題に挑戦。できるだけの対策を施して翌日の決勝レースに挑んだ。