連載『ホンダ偏愛主義』。自他共に認めるホンダマニア・元Motor Magazine誌編集部員でフリーランスライターの河原良雄氏が、ホンダを愛するようになった理由を、自身の経験を元に紐解きます。今回は、ホンダマニアが語るホンダのいいところ。(デジタル編集:A Little Honda編集部)

やっぱりスゴイ、ホンダのエンジン

半世紀近くホンダ車を愛用し続けて来た。改めて「何でこんなに好きなんだろう?」と自問する。答えはやっぱり「エンジンの気持ち良さ!」となるのだ。

FRオープンスポーツであるS2000のF20C型2L版直4DOHCは87×84mmとわずかにショートストローク。ホンダ創立50周年記念車とあって、ホンダの意地で9000rpmまで回すことができた。

ホンダ車のエンジンの気持ち良さのポイントは絶妙なボア×ストローク比にある、と私は思っている。ホンダ車と言えば高回転、ゆえにすべてショートストロークと思われがちだが、ところがどっこいなのだ。

スペックを見てみよう。スーパースポーツの初代NSXのC30A型3L版V6DOHCは90×78mmと確かにショートストロークで、レッドゾーンの8000rpmまで一気に吹け上がった。しっかりショートストロークなのは、このV6ぐらい。

どっちもVTECで5000rpmを超えると正に一気呵成だった。軽オープンスポーツのビートのE07A型660cc版直3SOHCも66×64mmとスクエアに近い設計で、MTRECなる3連スロットルを備え8500rpmまで回ってくれた。こうして見ればショートストロークと言ってもさほどショートではないことがおわかりいただけると思う。

ホンダ製エンジンの真骨頂は、ロングストロークながら高回転も可能としていることにある。代表的なのが初代インテグラ・タイプRに搭載されたB18C型1.8L版直4DOHCである。81×87.2mmでありながらVTECもあって8500rpmまで回った。200psの最高出力は8000rpmで引き出していた。

また連載「地球に帰るまで、もう少し」にも登場しているバラードスポーツCR-X SiのZC型1.6L版直4DOHCもそうだ。

75×90mmで135ps/6500rpmとパワーこそ今見れば控えめだが、レッドゾーンは7000rpmだった。前者インテRも後者バラスポも低回転はトルクフルでありながら、ひとたびアクセルペダルを踏み込めば豪快な加速が味わえた。こうした良いとこ取りこそホンダ製エンジンなのである。