世の中にはたくさんのバイクがありますけれど、これだけはホンダにしか作れない。それがゴールドウイングです。このバイクを見ると、バイク乗りですら『ここまで来ると、もうクルマでよくない?』と言います。でも違うんですよ。ゴールドウイングは感動的なまでにバイクなんです!

バイクに排気量1833ccって必要?

いちばん安くて273万6720円!?

ゴールドウイングはホンダのバイクの中でも断トツに高額です。

高級バイクって言ってもさすがに行き過ぎ……誰だってそう思うと思います。

だって普通、買えないもん。

エンジンの排気量は1833cc。車両重量なんと365kg!

もはやバイクじゃないよこれ……。

なのにゴールドウイングって、一度でも乗ると、バイクそのものに対する考えかたが変わるレベルなんです。

目からウロコなんて言う言葉じゃ全然足りません。

たぶん、こういうのを『感動』っていうんです。

核心にあるのは、やっぱりエンジン。

水平対向6気筒。

排気量は違いますけれどクルマのポルシェがメインで搭載しているのも水平対向6気筒です。

それをバイクに積んじゃおうっていうんだから、ホンダの根性も見上げたもの。

これを最初に考えたエンジニアの人は、そうとうエッジの効いた脳味噌の持ち主なのは間違いありません。

そして、それを『量産車として売っちゃえ!』と製品化して、実現させているホンダというメーカーもすさまじいチャレンジャーです。

しかも、現行ゴールドウイングの本命は独自のオートマチック機構DCT(デュアル・クラッチ・トランスミッション)モデル。

クルマ並の排気量1833ccに加えてオートマチックですから『なんかもう、ここまで来たらクルマでいいんじゃない?』と考えるのが一般的な発想でしょう。

それが普通。とても正しい考えだと思います。

それなのにゴールドウイングは、ボクのような一般的発想ライダーの想像の3倍くらい高いところを飛び越えていくんです。

スロットルを開けて、両足が地面から離れて1秒後。

その時にはもう、自分が今まで積みあげてきた『バイクの常識』がひっくり返っているんです。

水の上を、滑るように走る

実際のところ水っていうのは(船がそうですが)すごく抵抗が大きいので、あくまでも比喩的。イメージとしての表現なんですけれど、あえて『水の上を滑るように走る』と言いたいです。

だって、アスファルトの上をゴムのタイヤで走っている気がしない。

だけど浮いているような、という表現とはやっぱり違う。

ちゃんと『走らせている』感覚がある。

ありきたりに言えば『シルキーなエンジンフィーリング』ということになります。

でも、それだけじゃまったく言葉が足りないんです。

言葉にするのが難しいほど直感的に気持ちいい。

その爽快感を作り出すのは、エンジンのおかげだけじゃありません。

独自開発の二輪車用ダブルウィッシュボーン方式のフロントサスペンション。

これがまた、ほとんどのバイクに採用されているテレスコピック式と次元が違う。

ゴールドウイングに乗った後に普通のバイクに乗ると、フロントサスペンションってこんなに振動があったっけ?と驚きます。

そしてダブルディスクのブレーキローターに6ポットのキャリパーを搭載。

ブレーキは扱いやすさも信じられないほどですけど、それより驚くのは365kgの重量を感じさせないストッピングパワーです。

普通の大型バイク同然に、きちんと止まる。重さによる違和感がまったくありません。

おそるべきホンダの技術

そして何よりも、コーナリングです。

全長2475mm、重量365kgの巨体が傾く。

それもライダーの意思を正確に反映して、深く深くバンクしようとします。

慣れないうちは、どこまで寝かせていいのかわからないはず。

でもステップが接地するほど深くバンクさせた状態で、ゴールドウイングは鉄壁の安定感を維持するんです。

左右にシリンダーが張り出す水平対向エンジンが、その安定感の根底を支えます。

通常のエンジンよりも圧倒的に重心が低くできるのが、他には真似できない水平対向エンジンのメリット。

伊達や酔狂でこのエンジンを採用している訳じゃない。

そんなものをホンダは作りません。

あくまで『必要だから』このエンジンにしたっていうことなんです。

ゴールドウイングは既存の枠に押し込むとしたら「ツアラー」ということになるんでしょうね。

ただ個人的には、このバイクを何らかの既存カテゴリに当てはめることに違和感がある。

どっちかっていうとゴールドウイングっていう単独カテゴリだと言われたほうがしっくりくるんです。