WELCOME RACE FANS!! ダートトラックライダー/FEVHOTSレースプロモーターのハヤシです!という書き出しでスタートする毎週金曜日公開の当コラム、今回なんと連続50週目の記念の回となりました。皆さんいつもご高覧ありがとうございます。本日はいつもと趣向を変え、本稿執筆者のハヤシナオミと、我が国当代きってのダートトラックライディングの第一人者、大森雅俊の2人が、 "素朴な質問50題" にお答えしていく特別編をお届けします!

ライディングキャリアについて。

Q.1
初めてのダートトラックライディングについて聞きます。初レース参加の年齢、以降今日までの経験年数と合わせて教えてください。

大森:初レースは14歳のとき当時のツインリンクもてぎで。今年でレースキャリア15年目です。

林:初めて走行会で体験用マシンに乗せてもらったのが24歳くらい。初レースは3年後の2005年。2012年以降はレース主催に軸足を移しましたが、いまも毎週乗ってますし引退はしてないつもり。

Q.2
ダートトラックをどのように知りましたか?

大森:自宅から近いレーストラックで、同級生の友人の兄がやっているのを見て。

林:当時はダートトラックスタイルのストリートカスタムがブーム。メディアからの影響が大きいと思います。カメラマン・中尾省吾さんの撮ったアメリカのダートトラック写真にビビっときました。

Q.3
ダートトラックを始めることになった経緯は?

大森:その友人兄弟から誘われてオンボロバイクを譲ってもらい、走り始めました。

林:解体屋で書類なし事故車のホンダFTR223を3万円で手に入れ、友人と近所のトラックへ。

Q.4
ダートトラックを始めたときは、2人とも"おひとりさまレーシング"ではなかったわけですね。その駆け出しの時期に一緒に取り組んでいた周囲との関係は?

大森:誘ってくれた友人の兄の走りを見よう見まねしながらみんなと必死に練習しました!

林:一緒に始めた同い年の友人と、同じクラス・同じバイクで毎週追っかけ合いと反省会の日々。

Q.5
人生初のダートトラックレースのリザルトは、何台中何位だったか覚えていますか?

大森:XR100Rで出たエンジョイライトウェイトクラス(200m)。3台中3位。

林:FTR223・ノービス230クラス(200m)。11台中5位。

Q.6
初めてのレース挑戦から初表彰台や初優勝まではおおよそ何戦・何シーズンかかりましたか?

大森:初参加した年の6戦目で2位・2年目の開幕戦で初優勝しました。

林:1年目の最終戦で3位・初優勝までは4年かかりました。

Q.7
自身のキャリア初優勝はどんな気分でしたか?

大森:もっとレースがしたい!もっと勝ちたい!とスイッチが入った感じでした。

林:恥ずかしながら苦節数年、大器晩成型のわたくし、ウィニングランで泣いちゃった記憶。

Q.8
これまでの競技キャリアの中で、最も印象に残っているレースについて教えてください。

大森:イリノイ州での全米アマチュア選手権・ショートトラックレースで、トップ争いしている場面でぶつけられてヘイベイル (※緩衝剤として置かれた乾草の塊) に突っ込んだこと。

林:カリフォルニア州ウィロースプリングスの砂漠の真ん中にあるハーフマイルでのローカルレース。人生初のハーフマイル・バイクは借り物の全米選手権仕様の450ccでいろいろドキドキでしたが、決勝ファイナルラップ3-4ターンでなんとか2人抜いて帰ってきたら、知り合ったばかりの若いプロライダーたちが皆きっちり見ててくれて、ハイファイブで祝福されたこと。

Q.9
これまでの競技キャリアの中で、あなたにとって最悪のレースについておしえてください。

大森:2008年ツインリンクもてぎでのエキスパート250クラスの冬のナイトレース。酷寒の中、レース中にMXゴーグルが外れて表彰台を逃したとき。

林:2006年ツインリンクもてぎでのノービス250クラスのレース。詰めの甘い素人組みの未完成のマシンで強行出場したけれど、今思えば想定できた電気系トラブルが原因で決勝中にエンジンストール。二度と再始動せずたった12周 = 170秒のレースを完走できなかったこと。なんとか僕をレースに戻そうとマシンを押してくれたトラックマーシャル・石田貴志さんには今でも深く感謝しています。

マシンのこと。

Q.10
あなたがこれまでに自身所有して乗ったダートトラックマシンを、排気量の小さい順に記憶の限り (台数も) おしえてください。

大森:モンキー ・ KX80ll ・ XR100R ・ CRF100F ・ ジェベル200 ・ FTR223 ・ セロー225 ・ FTR250 ・ グラストラッカーBIG BOY ・ YZ250F ・ CRF250R ・ YZ450F ・ ハスクバーナTE450 ・ CRF450R ・ RM-Z450 (x2)

林:XR80R ・ XR100R (x2) ・ CRF100F ・ CRF125F ・ CRF150F ・ CRF150R ・ FTR223 (x3) ・ FTR250 (x2) ・ XR250 ・ CRF250R (x2) ・ 無限+CRF250R ・ CRF450R (x2) ・ C&J+CRF505

Q.11
あなたがいままでに乗った、最もパワフルなマシンは?

大森:アメリカでの二度のホームステイ&プロレース参戦時にお世話になった、元GNCライダーのケビン・バーンズファミリーが、僕のために用意してくれたROTAX 630。

林:今所有しているC&JフレームのCRF450。2002年のプロ選手権用に組まれた505ccエンジン車。

Q.12
あなたがいままでに乗った、最も戦闘力の低いマシンは?

大森:ボロボロのXR100R。

林:重くて非力、全ての面でライバルのパフォーマンスを下回っていたXR250 (MD30)。公道市販車改で専用車やレーサーに勝とうという考えは、費用対効果の面でも苦労ばかりだと思い知った1台。

Q.13
"フレーマー"と"DTX"、それぞれのストロングポイントを教えてください。

大森:フレーマーはターン中よく車体がしなって旋回性が抜群に良い。DTXはフレームが硬いためにエンジンパワーをダイレクトにリアタイヤへと伝えやすい。

林:フレーマーは柔。DTXは剛。例えるなら同じ振り回す道具でも"ムチと金属バット"のイメージ。

Q.14
"フレーマー"と"DTX"、それぞれのウィークポイントを教えてください。

大森:フレーマーはユルく作られてこそ性能を発揮するので、それこそ乗るたびにメンテナンスとチェックが必要。手間は若干かかります。DTXはフレーマーよりも上腕の筋力が必要かもしれません。

林:フレーマーは巧くトラクションしていないと、やたらとグニャグニャ捩れ、なんとも捉えどころのない動きになってしまいます。DTXは調整領域の広い高性能な前後サスペンションをもつためセットアップの幅が広がりますが、車体全体の硬さとしなやかな足回りとの折り合いをどうつけるか、刻々と変わるトラックコンディションの中で最良の状態をキープすることが難しくもあります。

撮影: 菅原健大(Garage SUGAWARA)

Q.15
DTXをいわゆる"ダウンマフラー"にすると、なにか良いことありますか?

大森:ダウンマフラーは排気管長がノーマルのアップタイプよりも長くなるため、モトクロッサーエンジン特有の鋭いピックアップが幾分和らぎ、代わりに全域でフラットなトルク感が得られます。

林:深いバンク角が必須のダートトラックライディングでは、重量物であるマフラーは、可能な限り低い位置に配して車体全体の重心を下げたほうが合理的で有利です。旋回時の運動性が高まります。

Q.16
いつか乗りたいあなたの"理想の1台"について教えてください。

大森:本場の全米選手権・2気筒マシン。

林:現実感あまりないけど旧車の2気筒。その前に日本でも思い切り走れる場所を用意しなくちゃ。

Q.17
ダートトラックマシンでのレーシングタイヤ(フルサイズ=19インチ・ミニサイズ=17インチ)の必要性について、どう思いますか?

大森:専用のレーシングタイヤを選ぶことで、競技に必要なメリハリのある走りが実現しやすくなります。経験が浅い人ほど、その特徴を素直に感じて上達の助けにしてほしいです。

林:性能面の優位性を考えるとストリートタイヤ流用よりコストパフォーマンスは高いはず。ホイールサイズ変更には手間と費用がかかりますが、"スポーツには専用のスポーツ用品を使うべき"です。

Q.18
自分のマシンにあなたが選ぶ、好みのハンドル形状を教えてください。

大森:今乗っているDTXなどには、モトクロッサーの純正ハンドルが好みです。

林:フレーマーでもDTXでも、モトクロスバーよりさらにストレート(一文字)に近い "スーパークロスモデル" をよく選びます。少しクセのあるポジションなので万人向けではないかもしれませんが。

Q.19
ダートトラック・スタイルといえばK&Nなどのキノコ型エアフィルターのイメージがあります。モトクロス車の純正スポンジフィルターとは機能面でなにか差がありますか?

大森:純正スポンジタイプは機能的にデザインされていますが、メンテナンス・洗浄にけっこう手間がかかります。ドロドロに汚れる機会の少ないダートトラックでは、吸気量が多くメンテナンス性のよいコットンメッシュ型が便利です。すぐ汚れるので頻繁な交換と清掃が必要な点は要注意ですが。

林:コットンメッシュ型は純正スポンジタイプに比べてより多くの空気をエンジンに送り込み、混合気の総量を大きく増やせることが、この競技に求められるパワー特性に合っているのだと思います。

Q.20
これからダートトラックを始めたいという人に、2019年のいま、あなたがオススメの車両を教えてください。

大森:FTR223とかCRF125Fなどは、基礎から走り方を学ぶのに良いマシンだと思います。

林:中古でも手に入れやすそうなので、これからはSR400/500が面白いんじゃないかと思います。少しずつ車体に手を加えて、マシンを仕立てていく過程も楽しみ方のひとつとして捉えてもらえたら。

ライディングのヒント。

Q.21
よいスタートのコツ、なにかひとつだけ教えてください。

大森:スタートを切った直後、1ターンにどんなラインで飛び込んでいくかをイメージすること。

林:レーシングスピードに到達するまで、リアタイヤが地面とどう噛み合っているか、全身で感じ、ボディバランスを駆使して最も効率よく加速できるように。タイヤトレッド面の状態の把握も重要。

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Q.22
ビギナーがまず目指すべき、ライディングの方向性を教えてください。

大森:"滑らせて向きを変える" という原理は、頭で理解することも大切です。滑る路面状況でどのようにマシンを安定させより速く走るか、淡々と経験を重ねることが大きなポイントだと思います。

林:イメージとしてターン進入初期で大きく寝かせ、"マシンを真横に向けて走らせる" ことを追求すると良いかと思います。フルバンクで真横を向く = 完全スリップ状態。単にターンへの飛び込み速度が上がっても、タイヤグリップのみに依存する走りは、その限界を超えれば簡単に破綻します。

Q.23
レースで勝つために効果的だと思う練習方法をなにか教えてください。

大森:走行ラインをいつでもある程度自由に選択できる、幅の広いライディングを身につけること。

林:少なくとも最長レース周回数の倍の周数 (決勝15周なら30周) くらいは、全力で・ミスせず・プッシュし続けられるよう、集中力と持久力、走りの精度を常に高めて研ぎすます努力をすること。

撮影: FEVHOTS

Q.24
一瞬の隙を逃さない鋭いオーバーテイク(追い越し)と、深いバンク角には関係がありますか?

大森:深いバンク角そのものにはあまり意味はないと思います。より多く滑らせ自分の狙うラインまでマシンをいち早く進めたり、周囲のライダーとのタイミングを計るためにはもちろん有効ですが。

林:素早く車体姿勢を変えられるライダーは、ラインコントロールひとつをとっても走りのバリエーションが豊かです。レースの場では限界の高さを追求するというより正確さ、冷静さが勝敗を決する鍵となる場面も多いので、日頃から自身の走りの100%を高めるという意味で、深いバンク角を会得することにも価値があるでしょう。本番では実力の6~7割くらいしか発揮できないはずですから。

撮影: FEVHOTS

Q.25
レースの大事な場面での転倒やミスをなくすには、どうすればよいでしょうか?

大森:勝負を仕掛ける時、冷静なマシンコントロールはもちろん必要ですが、自分の中での完全な自信・・・転ばない!抜ける!と確信できる走りをすることが大切です。根拠のない無理はダメです。

林:一つ前の答えとも関連しますが、レースへの準備とは、速さ・走りの精度・マシンの戦闘力などありとあらゆる面で、足りないものを補い、より高いレベルで整えることです。本番で転ばずミスらない走りは日頃のトレーニングや調整によってのみもたらされます。普段できないこと・今までTRYしてもいないことが、いきなり大舞台で成功する可能性は、残念ながらあまり高くありませんよね。

Q.26
FEVHOTSでも採用する"アメリカン・スタイルのレースフォーマット"をどう思いますか?

大森:ダートトラックといえばこれしかありません。すごくカッコ良いし気合いが入ります。

林:オーバルレース、特に2輪ダートトラック競技での "スライディングブレーキ走法" の特色に合致した、合理的で、多少なり安全性を高めることのできる優れた仕組みだと思います。

Q.27
レースの決勝周回数は多い (18~最大25周くらい) のと少ない (12~15周くらい) とで戦略の組み立て方に違いはあると思いますか?

大森:周回数の少ないレースでは、タイヤの摩耗や路面の変化はさほど気にする必要はありませんが、周回数の多い決勝では路面状況とタイヤへの熱の入り方によく気を配ったほうが良いと思います。トラック上には徐々にギャップが現れ、路面の湿り具合が変わります。さらに状況と同様、トラクションフィールも変化する中、どのように走らせるか、よく考え、感じることがとても重要です。

林:人もタイヤもトラック状況も、レース後半でタレるかどうか、それを乗り越える胆力やテクニックがあるかが試されもしますが、周回数が多ければオーバーテイクのチャンスが増え、より見所の多いレース展開が望めます。周回数の少ないレースはスタートの飛び出しが結果に大きく関係しますね。主催側にはライダーのスキルレベルに正しく合致した "距離 = 時間" の設定が求められます。

アメリカン・スタイルについて。

Q.28
あなたが様々な面で目標・指針としている、あるいは注目するライダーを5人挙げてください。

大森:アメリカで目標とするライダーNo.1は完全にニッキー・ヘイデン。マジで神。続いてスコット・パーカー、ブラッド・ベイカー、ジェイク・ジョンソン、いろんな意味でハヤシナオミさんw。

林:ニッキー・ヘイデン、ジョー・コップ、ジミー・ウッド、コリー・テクスター、大森雅俊。ただ速いだけでなく、コミュニティに対し前向きに働きかける、社会的な影響力のあるライダーが好み。

Q.29
あなたが見た "本場アメリカのレーシングシーン" と、日本の一般的なレース会場のイメージと、なにか一点大きな違いを挙げるとすると?

大森:決勝前の国家斉唱や全参加者でのパレードラップ!雰囲気が盛り上がってゾクゾクします。

林:よく言われる "Live to Race, Race to Live." とはこういうものかと。競うために生き、生きるために競うというやつですが。歴史の重さ + 層の厚さ = 文化の奥行きを実感しました。本場でのレース経験が、後に主催レースFEVHOTSを立ち上げるうえで大きく影響したことは間違いありません。

Q.30
アメリカをはじめ海外でレースに参加する場合、なくてはならないもの・あるとなお良いものをそれぞれ教えてください。

大森:万が一の事態のため傷害保険加入は必須ですね。たとえショートトラックでも荒れたレースになる可能性があればレザースーツとオン/オフロード両方のヘルメットを用意するほうが良いかも。

林:ハーフマイル以上のビッグオーバルは、MXジャージが裂けるほどのルースト (ルースターテイル = 前走車からの後塵) を浴びることもあるため、十分なプロテクションアイテム、局面によりレザースーツを用意した方がよいでしょう。現地では競技に関する情報交換や意思表明という面で、語学力もないよりあったほうがスムーズに、無駄なストレスなく、より趣き深く過ごすことができます。

Q.31
この先あなたがアメリカで参戦する機会には、どのようなレースを選びたいですか?

大森:全米プロ・ダートトラック選手権のマイルレース。

林:家族で楽しめる雰囲気のある大規模なローカルレース。ハーフマイルのヴィンテージツインか大排気量シングルでのショートトラック。

ハヤシ → 大森への5つの質問です。

Q.32
2019シーズンの活動計画を教えてください。

大森:昨シーズン自身初めてグランドチャンピオンを獲得したFEVHOTSへの参戦。そして全日本スーパーモト選手権250ccクラスへのスポット参戦を予定しています。あとは様々なイベントでのエキシビジョン走行・この国のダートトラックシーンの底上げになるような後進の育成も考えています。

Q.33
M.マルケスやAFTトップライダーたちとの対決が話題となったスーパープレスティジオ (スペイン・バルセロナ) やトロイ・ベイリス・クラシック (オーストラリア) といった海外でのビッグイベントに幾度も出場していますが、純アメリカンスタイルの19インチダートトラッカーでのレースと、これら前後17インチスタイルのマシンでのレースとは、どんな違いがありましたか?

大森:19インチDTレーシングタイヤのほうがスライド時のマシンの安定性は高いです。安定しているからこそ、どんな状況でも勝負を仕掛けることができます。17インチセットアップは基本的にクイックで、フロントは強く切れ込む傾向。アンダーステアが出やすく、進入時のリアのスライドフィーリングも安定しているとは言えません。常に過敏なほど繊細なコントロールが要求されます。タイヤの選択肢が多いことはまぁまぁ長所かもしれませんが・・・。

撮影: FEVHOTS

Q.34
フルバンクで左ハンドルバーの先端を擦る激しいライディングで人気ですが、トライするなら何を心がけるとよいでしょうか。

大森:勢いです!あとは手指を挟まないように。

Q.35
あなたがこれから新たに取り組もうと考えているライディングのアイディアについて、少しだけ聞かせてください。

大森:右回りでのライディングを左回り並みに進化させたい。

Q.36
今期の主軸として参戦するFEVHOTSで、あなたが新たにチャレンジしたいことはありますか?

大森:今まで参加する機会の少なかった、市販車250ccが上限のミドルウェイト・クラス (新名称スポーツマン250) にも出てみたいと考えています。

大森 → ハヤシへの5つの質問です。

Q.37
そもそもなぜレース = FEVHOTSを主催することを決めたのですか?

林:2011シーズンでツインリンクもてぎのレースシリーズとトラックがなくなり、この先どうするかって時に、幸運にもアメリカを少しずつ経験した若手何人かで話していて、"お上や人任せにするのではなくて、自分たちの手で本場の雰囲気 = スタイルのあるコミュニティを作って皆に提案しよう" という話になったんですね。今や我が国にはいくつものレースシリーズがある。各地のトラックを核にグループも出来つつあり、FEVHOTSもそのひとつとして日々成長しているわけで、参加者にとっては選択可能、サスティナブル (持続可能) で発展的な、健全な状態が保たれていると思います。

Q.38
毎戦オーガナイザーとして関わっていて、自分でもレースに出たくはなりませんか?

林:ときどきふと考えるくらい。毎週プラクティスで乗っているから、自分の今のだいたいのコンディションは把握できているし・・・ごく一部の上位ライダーを除けば互角以上で走れるかもしれないけど。全員に置いてきぼり食らうようなところまで、FEVHOTSのレースシーンを押し上げるのが最優先だと思っています。もてぎとアメリカで散々楽しんだから、今はそれを還元する時期なのかな。

Q.39
今もっているマシンって何台ありますか?

林:個人レッスンと基礎用にCRF125F、450ccDTXを皆に体験してもらうための試乗用CRF450R、かつてブライアン・スミスがGNCで乗っていたC&J CRF505の3台。C&Jフレームは仲間うちのビルダーに日本で色々とこしらえてもらうための研究材料としてこのところバラバラにされた状態。これから進めたいプロジェクトはいくつもあって、エントリーユーザー向けの小排気量フレーマーだの、空冷250ccの2サイクルだの、空冷ビッグシングル&2気筒だの。なかなか進める時間もないけれど。

Q.40
これからFEVHOTSとして考えていかなければならないことってまず何がありますか?

林:参加者数については常に右肩上がり (微増) なのでなにも心配はしていません。我々FEVHOTSのスタイルに興味をもって、おそるおそる扉を叩いてもらう、ということで基本的に良いのだと思います。レースに参加するメンバーの内訳も、2012シーズン以降、つまりもてぎを知らない新しく始めた世代が過半数を占めるようになってきましたし。今考えなければならないこと・・・レースオペレーション、メインフラッグや車番管理、のノウハウを広めていくことかな。ライダーはトラックマーシャルを信じて全力で走るだけなのでね。精度の高い進行管理は一層の安全につながるはずです。

Q.41
ダートトラック関連で、これから積極的に取り組んでいきたいことって何かありますか?

林:個人的に近年家族が増えたところなので、ファミリーで参加できるダートトラックの楽しみ方や、幼少期から親しめるスポーツとしてのあり方を、広く世に提案することに取り組んでいきたい。

二人がビギナーに伝えたいこと。

Q.42
レースに出始めたころ、どんなことに気を配って走っていましたか?15年くらい経った今との違いはなにかありますか?

大森:ターン進入の場面で自分が行きたい方向をきちんと向いていること。

林:写真うつりでそれっぽく見えるかを、わりと激しく気にしていました。今で言うインスタ映え?とは少し違う・・・かな、カッコいい、本場っぽい撮られ方を目指せば、正しいフォームと理にかなった速さを得る近道になるのではないかと信じて。

Q.43
レースでの転倒をなくすコツ・前のライダーに仕掛ける場面で重要なことを教えてください。

大森:自分の限界にチャレンジすることは重要ですが、路面状況や他のライダーとの位置関係を的確に把握することがより良い走りの助けになります。前走者と同じラインを走っても抜けないですし。

林:密度の高い練習の成果として、自身のよい時わるい時、両方のギリギリの状態を知ることで、今繰り出すべきテクニックの質と量を冷静に判断することができると思います。レースではとにかく丁寧に、が基本。際どく攻める場面でも場当たり的にならず、そっと置きにいくようなイメージで。

Q.44
日々のマシンメンテナンスでビギナーのうちから特に注意するべき点はどんなことでしょう。

大森:エアクリーナーのメンテナンスとエンジンオイル交換・チェックは毎回の必須項目です。

林:このスポーツの特徴として、高回転域を常用する結果の振動から生じる各部の弛みやクラックには、常に目を光らせておく必要があります。

Q.45
決勝レースで2位以下になったライダーを四文字熟語で表すと?

大森:次回必勝!

林:・・・全員敗者?

これからのダートトラックシーンへ向けて。

Q.46
今年から2人が連携して取り組む "エントリー層・ビギナー向け" の新たな活動、どんなことをしていきたいか少し聞かせてください。

大森:ダートトラックライディングのテクニックを活かし、バイクのコントロールの基礎やバランス感覚を養うメニューに取り組みたい。様々なジャンルの若手育成のサポートにも力を入れたい。

林:10代や20代の我々が試行錯誤してここまで15年間で得た体験を、もう少し年齢層の高い・・・今の僕らと同世代とか上の世代に、どうやって短い時間で効率的に伝え、可能な限り安全に楽しんでもらえるかが今後の鍵かなと思っています。まずそのための環境整備が必要ですね。

Q.47
これからダートトラックライディングを学びたいのですが、第一歩はどのように踏み出せば良いでしょうか?

大森:気楽に、もしかして間違ったイメージでもいいからとにかく試しに乗ってみる。経験者がそこにいれば、誤りは早いうちに修正するための手助けをしてくれるはずです。

林:自分の目で見たこともないスポーツや身体表現に挑戦するのって簡単じゃないと思うんです。練習走行なりレースの様子なりまずはよく観察し、その後走り出すのでも遅くはないんじゃないかな。

Q.48
FEVHOTS練習走行日 "オープンプラクティス" は平日の毎週火曜日を中心に開催されるそうですが、参加者にとってのメリットを教えてください。一緒に走ったり教えてももらえますか?

大森:一般のお客さんがあまり多くない平日は、静かで練習に集中できることが最大のポイントです。もちろん一緒に走っているなかで、アドバイスできることはどんどんしますよ!

林:トラック上の全員が練習モード、あるいはレースモードに入っているオーバルは、人それぞれ温度差のある、一見楽しげな "自由な一般走行日" ほどお気楽ではないと思いますが、はっきりとした約束事があって走り出すわけで、安全性もある程度確保されていることは間違いありません。

撮影: FEVHOTS

Q.49
日本のダートトラック・レース・カルチャーのこれからの可能性をどのように考えますか?

大森:目新しいスタイルのコンテンツとしてダートトラックレースが盛り上がっていくと思います。

林:皆が皆、エクストリームスポーツとして捉える必要もありませんし (乗ればある程度のリスクがあるのは当然ですが) 老若男女さまざまな層に広がりゆく機運がいよいよ高まってきましたね。

Q.50
あなたがダートトラックに関して10年後に取り組んでいたいテーマは?

大森:ここ日本に各国のライダーを一同に集め、世界選手権開催を実現したいです!

林:うーん、自前のレーストラックとか?その時が来るまで淡々と活動し続けることはもちろんですが、今と同じことを同じ熱量でやっているだけじゃ、物足りなくなっていないといけませんね。

Official Instagram of FEVHOTS™ on Instagram: “2018FEVHOTSオープンプラクティスは毎週火曜、埼玉県川越市ウエストポイントオフロードヴィレッジにて開催しております。次週7/3は本年36回目。 2018FEVHOTS open practice is held on every Tuesday. Join us if…”

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スペシャルウィークの大長編、いかがでしたか?

いやもうホントにすんごい長くなって筆者も大森さんも大変グッタリですが、我々のこうした考えを新しいダートトラッカーの皆さんや、このスポーツの多くのファンの方々へと、この機会になにかお伝えできていれば幸いです。

次週からはまた平常運転で、2シーズン目は短めあっさりめを目指そうとココロに誓っております。んーホントかな???というわけで、また金曜日の "Flat Track Friday!!" でお目にかかりましょう!