連載『ホンダ偏愛主義』。自他共に認めるホンダマニア・元Motor Magazine誌編集部員でフリーランスライターの河原良雄氏が、ホンダを愛するようになった理由を、自身の経験を元に紐解きます。今回はホンダ車全般の電子制御式燃料噴射システムPGM-FIについて。(デジタル編集:A Little Honda編集部)

ホンダPGM-FIとは?

ホンダ PGM-FI(プログラムド フューエル インジェクション)は、F1をはじめとしたホンダ車全般の電子制御式燃料噴射システムの呼称である。

PGM-FIを初採用したのはクルマでは1983年7月のバラードスポーツCR-X1.5iで、続いて9月に同じエンジンを搭載したシビック25iが登場している。実はオートバイの方がひと足早く、1982年のCX500ターボが世界初のPGM-FI搭載車となっているのだ。

ここで1983年の世界のレースでのホンダを振り返ってみよう。

F1ではホンダが13年ぶりにサーキットに復帰している。ステファン・ヨハンソンがスピリットホンダでイギリスGPに出走。最終戦ヨーロッパGPではウイリアムズがホンダエンジンを搭載する。一方、ヨーロッパF2ではラルトホンダが快走。後半を6連勝しチャンピオンになる。ジョナサン・パーマー、マイク・サックウェルの1-2でシーズンを終えている。

そんな中、サーキットのテクノロジーを背景に登場したのがPGM-FIだった。そこには「キャブレター時代の終焉」というメッセージが込められていた。知らない人はFIをF1と勘違いしていたほどだった。それだけスポーツイメージがあったのだ。

バラードスポーツCR-X1.5iに試乗した時は驚かされた。改良CVCCのEU型1.5L直4SOHC12バルブは110ps/5800rpmだったが、ともかく吹け上りが気持ちいい。

「これってDOHC?」と思うほど爽快だったのを憶えている。

そんなPGM-FIが定着したのが翌1984年11月に登場したバラードスポーツCR-X Siだった。

ZC型1.6L直4DOHC16バルブを搭載していたのだが135ps/6500rpmの最高出力は豪快だった。EU型と同じくロングストロークゆえトルクフル。

それでいてトップエンドまできっちりスムーズに吹け上がった。このZC型はDOHCのみならず様々なバリエーションを展開しPGM-FIを広く知らしめたのである。

ちなみに1984年はF1のダラスGPでケケ・ロズベルグがウイリアムズホンダで念願の初優勝。1.5Lターボ時代のホンダ製エンジンの今後の活躍を予感させていた。一方、ヨーロッパF2シリーズではラルトホンダが11戦中9勝を挙げチャンピオンに。マイク・サックウェルがヨーロッパF2(2Lエンジン)最後の覇者となっている。

その後、ホンダはPGM-FIを一気に拡大して行く。1984年6月にはアコードに1800RT-i、1985年8月にはプレリュードに2.0Siを登場させ、スポーティバージョンにPGM-FIは必需品となって行くのだった。そして1988年2月には軽自動車トゥデイにまでPGM-FIを採用したXT-iを加える。

この1988年にはF1でマクラーレンホンダが16戦15勝し、アイルトン・セナがチャンピオンに輝いているのである。

そして今はと見れば、軽商用車N-VANやアクティトラックは言うに及ばず、オートバイではスーパーカブ50からPGM-FIは“当たり前”の時代となっている。ディーラーでもメカニックはキャブレターを触ったこともないと聞く。それだけPGM-FIはホンダにとってのスタンダードシステムとなっているのである。

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