本田宗一郎さんはオートバイがそうだったように、クルマでも空冷エンジンにこだわっていた。
一大センセーションを巻き起こしたDDAC搭載のホンダ1300は71年あたりから販売面で下降線をたどる。
軽乗用車のライフ、新たな小型車シビックと水冷エンジン搭載モデルが登場するに及んでは高出力一辺倒は通用しなくなって来る。排出ガス規制が待ち受けるようになって、時代は確実に水冷へと移行していたのだ。
そして72年にはついにDDACを諦め、1433ccの水冷直4SOHCへと切り替える。パワーは80psと一気に落ち込むが、機械式燃料噴射で90psとしたクーペFIを投入。エンジン屋のホンダとしての意地を見せる。
ホンダ1300に搭載されたDDACエンジンは結果として成功を収めるには至らなかった。排ガス規制をクリアする次世代エンジン、CVCCを71年に発表した本田宗一郎さんは、避けがたい水冷化を目の前にして引退を決意するのである。かくして凝った空冷システムであるDDACの挫折はホンダにとって大きな節目となったのだ。