ここ数年、世界的に人気の高いストリートでの "ダートトラックスタイル" カスタム。日本でも定期的に流行する印象の "それ系" ですが、ガソリンタンクやシートカウルの交換で、マシンの持つ印象はガラっと劇的に変わりますね。というわけで今回は、本気のダートトラックレーシングマシン・そのスタイルの解説と、本場アメリカからのパーツ調達にまつわるあれこれをご紹介しましょう!

無駄を削ぎ落とした"クラスC・フォーミュラ"とストリートカスタムの親和性

WELCOME RACE FANS!! ダートトラックライダー/FEVHOTSレースプロモーターのハヤシです。伝統的なダートトラックレーシングマシンの形である "フレーマー" についてのイントロダクションは、以前のコラムで "DTXスタイル" とともにご紹介しました。

その初源は一般的なストリートバイクの形態からスタートしていると言えますし、本場のレギュレーションの上でもクラスC・フォーミュラ = パっと見公道走行できそうな当たり前のかたち、を有していることが必要とされます。徹底的に無駄を削ぎ落とされた美しさは、本来の意味でのチョッパーやボバーといったスタイル同様、ストリートカスタムの方向性の一つにもつながります。

ガソリンタンク容量は、スプリントレースに必要な4~5L程度。

ダートトラックレース用マシン "フレーマー" に使われるタンクは、容量の少ない小ぶりのものが多く、形状はこの写真の16種がベーシックなスタイルです。近年のフューエルインジェクション車両には、燃料を電磁ポンプで圧送する関係でアルミタンクが主に用いられますが、キャブレター車であればFRP製が安価で入手できます。

本国では中古タンクの売買も可能ですが、日本へ持ち込む際には新品が望ましいでしょう。一般的に車体の重心を下げることが好まれるため、低くマウントされるものが多く、ガソリンコックは左右それぞれに装備、これは万が一の遠心力の影響でガソリン供給が止まるのを防ぐためです。

左下のティアドロップタイプがここ15年くらいのもっとも主流の形状です。本日のコラム冒頭の写真は同形状のアルミタンク製作用ジグ。日本からのオーダーも可能ですが、製作費用全額を前金で請求されるのと、支払い方法がカードでもPayPalでもなく"小切手"なので、注意が必要です。経験済。

シートパッドはとにかく薄く、"地面を感じられること" が基本 (例外もあり) 。

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こちらは単気筒フレーマーとして、現代のスタンダードと言えるスタイルです。ティアドロップ型タンクに合わせられるシートカウルには、両側のサイドナンバーが一体化された形状。シングルリアショックが主流の近年は、サイドナンバープレートの取り付けにシートレール部を利用することが難しいため、このような処理になるものが多くなってきました。

スリップとグリップのハザマで絶妙にマシンを操り、他者より前に出ることが求められるダートトラックレースでは、長距離をコンフォートに走るクッション性に優れた "乗り心地" は一切要求されません。リアタイヤのたわみ量とスリップ率を最大限に感じ、路面に車体を押し付け可能なかぎりトラクションさせるべく、ハリのある・薄い・前後移動のしやすいフラットなシートパッドが好まれ、それを取り付ける "台座" として、FRP製のいわゆる "トラッカーシートカウル" が採用されます。

60年代後半から70年代にかけて、それまで金属製リアフェンダー + ソラマメシートだったオフロード/ダートトラックマシンは、より軽量な樹脂フェンダーとその上に乗る薄いシートパッドの組み合わせに変化していきます。上の写真、AMFハーレーダビッドソンがショートトラックで採用したアエルマッキ製2ストロークマシン、MX250DTに取り付けられたシートカウル/リアフェンダーは、"トラッカーシートカウル" が採用され始めた最初期の形状だと言えるでしょう。

フォークガード、ラバーステップetc、ダートトラックらしいアイテムたち

ダートトラックスタイルの定番アイテム、フロントフォークガード。白と黒の "チェリアーニタイプ" がstorz製で有名だが、右側赤色の "SHOWAアジャスタブルフォーク用" が広くガードして本場レースシーンでは主流。

BATES製ステップラバー。路面を捉える感覚がつかみやすく、円筒形状の分厚いゴム製のため必ずしも上から踏まなくても加重できる。左足装着の鉄スリッパーが滑る心配も少ない。

欲しいものの在り処はコアなコミュニティだけが知っている

こちらはダートトラックレース用品を販売する老舗、First Klass Glassの "2014年版カタログ" です。A4用紙15枚くらいで時価の価格表付き。これ自体が2ドルです。SNSやインターネット全盛の今日でも、古くからのパーツディストリビューターは大国アメリカらしいメールオーダー・システムでしかユーザーとの接点を持たないところは数多くあります。前述の通り小切手のみのところも多いです。

つい先日も、FEVHOTSで走るメンバーから、 EメールやFAXで何度問い合わせてもアメリカのパーツ屋から一切返事がない、と相談を受けました。単純に海外との取引がメンドクサイとかジャパニーズNOサンキューと言うケースもあるので、現地のダートトラックコミュニティの知人を介して問い合わせる方法をオススメしましたが、そのようなやり取りですら、ユニークな土着レーシング文化の片鱗を感じさせます。買えるまでが果てしなく遠くてメンドクサイのは確かなのですが。

ダートトラックマシンを "それらしい雰囲気" たらしめるアイテムは、他にも随所に使用されます。言ってしまえば専用フレームもその一部なのですが、解説に文字数が必要なのでそちらは後日改めて解説の機会を持ちたいと思います。

筆者の主宰するFEVHOTSでは、競技に参加するメンバーはもとより、ダートトラックスタイルを愛する皆様のために、この競技の本場アメリカより、基本的にはどんなパーツでも探し出し、お手元に届けるお手伝いをしています。今日ご紹介したタンク・シートはもちろん、レーシングフレーム・エンジンスターター (クランクシャフト直結型) なども多数実績あり。HPよりお問い合わせいただくか、FBグループの "フラットトラックスワップミート" にご参加いただくと良いかと考えます。

ではまた金曜日の "Flat Track Friday!!" でお目にかかりましょう!