ジュネーブでワールドプレミアされたQ2の国際試乗会が開催された。アウディが試乗コースに選んだのは、なんとキューバの首都ハバナ。斬新なスモールSUVは、エキゾチックな街並を軽快に駆け抜けた。(Motor Magazine2016年8月号)

アウディQ2 1.4TFSI:全長4191mm×全幅1794mm×全高1508mm、ホイールベース2601mm、最、ラゲッジルーム容量405~1050L、エンジン 直列4気筒DOHCターボ、ボア×ストローク74.5×80.0mm、圧縮比10.、最高出力110kW(150ps)/5500-6000rpm、最大トルク250Nm/1500-3500rpm、トランスミッション 7速DCT

ポップで軽快な新しいSUVのカタチ

ドイツがニュルブルクリンク24時間レースで盛り上がっている5月26日、私はカリブ海にいた。今回の試乗会の舞台は、なんと「カリブ海の赤い島」と呼ばれるキューバである。アウディは初めて参入するセグメントの試乗会の開催にあたり、インパクトのある場所としてキューバを選んだようだ。

社会主義国であるキューバは、1959年の革命以降、アメリカとの関係が断絶していたが、2014年から関係が改善しつつある。そして近年は西側諸国からの投資が増え、町並みが変わりつつある。とはいえまだまだ十分にエキゾチックで、長らく経済が停滞しているため、首都ハバナの中心部には1950年代以前の建物が今もそのまま残っており、街中を走るクルマも大半が革命時にアメリカ人が置いていったアメリカ車である。

まだ1950年代の建物が残っているキューバの首都ハバナ。

A1、ポロがベースではなく基本的に構成はA3に近い

そんなキューバで国際試乗会を行うのはやはり困難の連続だったようで、キューバ政府の7つの省庁に許可を受けて、ようやく開催にこぎ着けた。それでも試乗時には隊列を組み、警察車両が前後について先導することが求められたのである。

このような制限の下で行われたイベントではあったが、Q2の実力を確認することができた。
まずQ2の概要を紹介しておこう。Q2は、全長4191 mm ×全幅1794mm×全高1508mmと、Q3よりもひとまわりコンパクトで、Bセグメントに属するスモールSUVということになる。ちなみに、Q3の全長×全幅×全高は4388mm×1831mm×1608mmだ。

しかし、Q2はA1やポロ/クロスポロをベースに開発されているわけではなく、フォルクスワーゲングループのエンジン横置きモデル用モジュラープラットフォームであるMQBを採用している。同じBセグメントにありながらA1との共通部分は少なく、メカニズム的にはむしろA3やゴルフあるいは新型ティグアンに近い。

Cd値は0.30という良好な数値だ。エアロダイナミクスに優れいている。

新しいデザインコンセプトは今後のアウディの方向性を示している

アウディQモデルの新しい末っ子であるQ2だが、そのデザインは個性的である。「ポリゴン(多角形)」をテーマにデザインされたエクステリアは、独自の形状を持つ八角形のシングルフレームグリルや複雑なプレスが施されたボンネットフード、ロングホイールベースとショートオーバーハングのプロポーションを強調するボディサイドのトルネードラインなどにより、幾何学的かつ塊感のあるルックスを実現しており、コンパクトながら力強いアピアランスを手に入れている。

柔らかな曲面を持たないエッジの立ったデザインではあるが、エアロダイナミクスが優れている点も特徴である。リアに向かって低められたルーフラインや微妙に絞り込まれたCピラーとその後端の形状などにより、Cd値0.30という、SUVとして良好な数値を達成している。

スイッチ類の配置などインパネの基本レイアウトはA3と同じ。試乗車はSトロニック仕様で、バーチャルコックピットも装備。

アウディらしいプレミアムSUVの姿

キャビンスペースは、コンパクトなボディサイズとは裏腹にとても広々としている。前席に身長180cmの男性が座っても後席の足下スペースは広く、前席のシートバックに膝があたることはない。

インテリアの仕上がりもアウディらしく上質だ。ブラックを基調にメタリックのパーツを効果的に配したインパネは、Q2がプレミアムカーであることを如実に表現している。各種スイッチ類など操作系のタッチも良い。ダッシュボード上にはディスプレイが全車標準で装備され、オプションのMMIナビゲーションプラスを選べば、タッチディスプレイとなる。

ホイールベースは2601mmで、これはQ3やA3(3ドア)と同じ。A1は2469mm、A3スポーツバック/セダンは2637mm。

後席の足下スペースは十分で室内空間にはゆとりがある。ルーフが低くデザインされているがヘッドクリアランスも大きい。

またセンターコンソール上にはタッチパッド付きのMMIコントローラーが備わり、高精細ディスプレイを用いたバーチャルコックピットとヘッドアップディスプレイは、オプションリストから選択可能となっている。

ラゲッジスペースもしっかり確保されている。通常時405Lのスペースは、60:40の2分割可倒式リアシートバックを前方に倒すと、最大で1050Lまで拡大する。リアシートはオプションで40:20:40の3分割可倒式を選ぶことも可能だ。

ラゲッジスペースは通常時405L、リアシートバックを倒すと最大1050Lに拡大する。標準は60:40の2分割だが、試乗車は40:20:40の3分割式(オプション)を装備していた。

路面はかなり荒れていたが俊敏で滑らかな走りを披露

先進的なドライバーアシストも多数用意されている。低速走行時には停止制御も行うアウディプレセンスフロントは全車に標準で備わる。この他にも、ストップ&ゴー機能を備えたアダプティブクルーズコントロールやトラフィックジャムアシスト、アウディサイドアシスト、ステアリング制御を行うアウディアクティブレーンアシスト、パークアシストなど、様々な機能が設定される。Bセグメントだからといって、安全性、快適性に手抜きはないのだ。

秋のデリバリー開始時に用意されるパワーユニットは、ガソリンエンジンが最高出力115psの1.0TFSIと、125psの1.4TFSI、150psのシリンダーオンデマンド付き1.4TFSI、そして190psを発揮する2.0TFSIの4種類。ディーゼルは、115psの1.6TDIから150psの2.0TDIまで3種類となる。

トランスミッションは、6速MTのほか、全車に7速デュアルクラッチ式のSトロニックが用意される。また駆動方式は2.0TFSIと2.0TDIはクワトロが標準だが、このほかは前輪駆動となる。
今回キューバに持ち込まれた試乗車は、手続きの関係で1.4TDIのSトロニックのみだったが、その走りは小さなプレミアムSUVと呼ぶに相応しいものだった。

シリンダーオンデマンド付きの150ps1.4TFSI。搭載されるエンジンラインナップは豊富で、ガソリンは1Lから2Lまでの4種類、ディーゼルは1.6Lと2ℓLの3種類が用意される。

最高出力150ps/5000-6000rpm、最大トルク250Nm/1500-3500rpmの1.4TFSIエンジンは、低回転域から力強く、7速Sトロニックの制御も非常にスムースだ。今回はフル加速を試すことはできなかったが、0→100km/h加速は8.9秒、最高速は204km/hというパフォーマンスは、実用上、力不足を感じることはないはずだ。

街中を走る大半のクルマは1950年代のアメリカ車。先進的なQ2の姿は、まるでタイムスリップしたかのようだった。

首都ハバナ近郊の試乗コースは路面がかなり荒れていたが、アウディドライブセレクトでコンフォートモードを選んでおけば、乗り心地はとても滑らかで快適だった。しかし、ひとたびスポーツモードに切り替えると、エンジンのトルクカーブが変化し、Sトロニックも低いギアを選ぶようになる。

さらにアダプティブダンパーも明らかに減衰力が高まり、グッとソリッドでダイナミックな走りを披露する。可変ギアレシオのプログレッシブステアリングのフィーリングも良く、ハンドリングもスポーティかつ正確だ。

アウディはこのQ2を投入することでQ3、Q5、Q7と合わせ4モデルのQシリーズが揃うことになる。

Q2は、走りや使い勝手の良さ、そして個性的なスタイルで、おそらく世界中で人気を博すことになるだろう。日本市場においても立体駐車場が利用できる寸法であることから、注目を集めることになるはずだ。

なお、Q2は日本に2017年に上陸する見込みで、1.0TFSIと今回試乗した1.4TFSI、そして2.0TFSIクワトロが導入される見通しである。現時点で発表されているドイツにおける価格は、19%の付加価値税込みで2万8200ユーロからとなっている。(文:木村好宏/写真:Kimura Office、Audi AG)

隊列を組んで走るQ2。アメリカとの関係改善により次第に変わりつつあるとはいえ、ハバナにはまだ古い街並が残っている。試乗車はCピラーにシルバーのパネルを装着していたが、他のカラーに交換することも可能。