Kawasakiの名車をフィーチャーしたコミックをまとめた、モーターマガジン社のムック雑誌『RIDEX ライデックスカワサキ スペシャルエディション』(©東本昌平/モーターマガジン社)。

その中でも中年男性人気がもっとも高いのが、この「While I Know」なのではないだろうか?

While I Know・・・僕と彼女が一緒にいたとき

主人公は老年にさしかかったといえる年齢のライダー。
愛車はカワサキの名車W1SA。カタログにはない、美しいブルーの車体は昔と変わらずセクシーだ。

若い頃から乗り続けているW1SA。多くの思い出があり、彼と共に長い時間を共有してきた。
特に、ふと思い出すのは、昔の彼女。行きつけの喫茶店でアルバイトをしていた彼女と、いつのまにか交際をはじめて、そしていつのまにか別れていた。

一生一緒にいるような気がしていた。W1SAのタンデムシートも、彼女のモノであり続けると思っていた。しかし、それは錯覚に過ぎなかった。

彼女の方からバイクにのせて欲しいと声をかけてきた。(©東本昌平/モーターマガジン社)

しかし、いつのまにか二人は別れ、喫茶店もなくなってしまった(©東本昌平/モーターマガジン社)

不意に蘇る思い出と、終わった夏を受け入れた男の心情

長い年月が過ぎ、青年と呼んでもらえない年齢となった。
しかし、あの頃の想いは、昔と変わらず自分と共にあるW1SAが、時々フラッシュバックのように蘇らせるのだ。

甘酸っぱい感覚と、寂しさが沸き立ち、そんなW1SAを憎く思うときさえある。男ってやつは、いくつになっても女々しい。

なぜかいまでも彼女のことを思い出せるのはW1SAだった(©東本昌平/モーターマガジン社)

そんなときだった。
青いW1SAに目を留めて声をかけてきた女性に、彼は一瞬目を疑う。
あの頃の、彼女に瓜二つだったからだ。

(まさか、彼女の娘なのか??・・・)

昔の彼女と瓜二つの若い女性に、年甲斐もなく心ざわつかせる(©東本昌平/モーターマガジン社)

彼は、その若い女性と、あの時の彼女の関係を問いただすようなことはしなかった。確かめていないのだから、もしかすると単なる偶然かもしれないし、本当に彼女の娘なのかもしれない。

事実、その女性は、自分の母親がW1SA(・・ダブルワンと思われるバイク)の模型を大事にしていて、しかもそのカラーが同じブルーなのだという。

しかし、彼はやはり確かめることはしなかった。母親の名前を尋ねればそれで済むのに。
いや、彼の中にはすでに確信があったのだろう、あえてその確信を事実にする必要を感じなかった、ということなのかもしれない。

愛した女性の面影を宿す愛車W1SA。時としてその感覚に苛立ち、愛車を嫌いになりそうなことがあった自分だったが、愛した女性がいまでもW1SA(と、自分との時間)を大切に想い続けてくれていたのかもしれない、という感動が、主人公の心を軽くさせ、出会いと別れの思い出を100%ポジティブに受け入れる準備をさせた。

何もしない。ただ懐かしい、良い思い出として受け入れよう。
一人、いや、愛車と共に 遠くを見つめる彼の口元には、晴れやかな笑みが宿るのである。

彼の口元には薄い笑みが。横顔は、爽やかだ。©東本昌平/モーターマガジン社