1978年から1988年までの約10年間、フランスのオイル・ブランドの「エルフ」が開発したモト・エルフを皆さんは覚えているでしょうか? エルフのバックアップにより、アンドレ・デ・コルタンツのアイデアを元に生み出されたELF Xを皮切りに、世界耐久選手権、世界ロードレースGPなどの実戦の場での磨き上げられたモト・エルフは、新しいモーターサイクルのシャシーデザインの可能性を世に示し、多くの反響を呼び起こしました。
前後片持ち方式・ハブセンターステアリングを採用。
"ポスト・デ・コルタンツ"期のモト・エルフ
1985年 のフランスGPでデビューしたELF 2Aは、デ・コルタンツが開発したELF 2を改良したモデルで、前後のサスペンションなどに変更を受けていました。この後、セルジュ・ロゼとダン・トレマがモト・エルフの開発を担当することになります。トレマが設計した改良型、ELF 2Bはフロントツインスイングアームを踏襲しつつ、独立したフレームを採用したのが特徴でした (実戦投入せず)。そして1986年シーズン最終戦のイタリアGPの予選に出走したELF 2Cは、後継モデルのELF 3同様マクファーソン型フロントサスペンションを採用していました。
モト・エルフが残したもの・・・。
デ・コルタンツはレーシングカーデザイナーとして、ル・マン24時間やWRCで数々の実績を残しました。しかし、モト・エルフは2輪ロードレースの世界では成功をおさめた・・・とは言えないでしょう。後を継いだロゼとトレマの仕事は評価されるべきでしょうが、デ・コルタンツが描いた「新しいレーシング・モーターサイクルのシャシー」というイデアからは、乖離したものでした。
しかし、ホンダとのコラボレーションから生まれた片持ち式スイングアーム、「プロアーム」は多くのホンダ製量産モーターサイクルに採用されることになり、それら製品の商品性を高める役割を果たしました。また、素早いタイヤ交換がアドバンテージになる耐久レース用の、ホンダ製ファクトリーレーサーにも長年プロアームが採用されたことは周知のとおりです。
スポーツ・モーターサイクルシャシーの定番が、"テレスコピックフロントフォーク+アルミツインスパーフレーム+スイングアーム"となって久しいですが、そんな常識を覆すことにトライする挑戦者の登場に期待したいですね!