LINE時代と相変わらず、物腰は柔らかく丁寧な人である。

森川亮。

C Channel株式会社の代表取締役、というより、いまはまだ元・LINEの代表というイメージが強いかもしれない。

しかし森川さんは既に大企業の代表者というよりも、自らの脚で立つ、一人の起業家として、我々を迎えてくれた。原宿の、情報発信地として最近再び脚光を浴びつつあるその場所、小さいが洗練された黄色い建物を拠点に、森川さんはわずか10名程度の小さなチームのリーダーとして働いている。
(アルバイトなどの非正規社員をいれると20名ほどになるそうだ)

C Channelはクリッパーと呼ばれる動画キュレーターを抱え、縦型の動画コンテンツ(スマートフォンで撮影し、スマートフォンで消費される動画)を生成して流通させる。クリッパーには、資本業務提携しているアソビシステムの所属タレント・モデルを始めとして、流行感度が高い若い女性(男性はいない。入れる予定もいまのところないという)を配しており、さまざまなイベントなどに参加して動画撮影したり、流行のレストランやスイーツなどの情報配信を行なっている。動画にはさまざまなフィルター(森川さんはスキンと表現)が用意されており、手間をかけずに加工ができるという。

つまり、C Channelとは、
・縦型(ポートレート)動画専門の動画チャネル
・女性による女性のためのメディアでありアプリ
ということになる。

ビジネスモデルとしては広告であり、街中のデジタルサイネージ(駅などに設置されているデジタルサイネージは確かにたいてい縦型である)への配信までも視野に入れているという。

ユニークだが儲かりづらいビジネスモデルを、儲かるビジネスに変える秘策あり?

しかし、可愛い女子を集めて、可愛い(?)動画をシェアして集客をする、というビジネスモデルは参入障壁が低い気がする。サイバーエージェントあたりが得意な分野であって、後発をどう撃退するのか?と尋ねてみた。

すると森川さんは「あまり儲からないビジネスですから大手さんは参入しないと思いますよ」と笑った。
儲からない?ならばなぜこのビジネスをやるのか?「巨額の資本を集めた以上、儲からないわけはないですよね?」とさらに突っ込む。

「そこは我々だけのアイデアがありますから」と森川さん。

しかし、それは秘密です、と彼は笑った。つまり、普通に同じビジネスモデルを始めただけでは多分儲からないが、いまはまだ公にされていない独自のアイデアがあって、収益をあげていくノウハウがC Channelにはある、ということだ。
勝算が立たなければリスクをとって起業はしない。他社はこの勝算を立てられず参入してこないだろう、というのが森川さんの言い分である。

いまはまだ編集部はない。クリッパーに任せているが、いずれは設置する予定。

女性は現実的。ただ美味しい店を紹介しただけでは足を運んでくれない。

いまはクリッパーの数は限定的でオープン化はすぐには考えていない。まずはクローズドのまま海外展開。

挑戦した者しかわからない頂へ

どんな秘策を森川さんは考えているのか?
実際にクリッパーをしている女性(清水愛美さん:写真右)にもお話を伺ったが、ヒントさえ見つけることはできなかった。

「撮る時の角度や、人とは違う内容を撮っていかなければならないといつも工夫しています」クリッパーの一人、清水愛美さんと。

森川さんはその豊富な人脈を生かして、食べログをはじめ、さまざまなメディアとの提携を進め、海外のクリッパー(もちろん女性だ)の採用を推し進めている。
C Channelのゴールがどこにあるのか、そして本当の狙いはどこにあるのかはいまのところわからない。しかし、森川さん自身には明確に見えているのだろう。その表情は、穏やかだが確信に満ちている。

最後はいつもの笑顔とCのジェスチャーで。