ダイエットを成功させる三大原則とは
F香はすでに4杯目のワインを半分くらい飲んでいたが、全く酔っている気配がない。彼女はときたまグラスを灯りに透かして雑味がないかを確かめるような仕草を繰り返した。
「ダイエットを痩せるために行うとしたら、それは肥満解消のためだけね。本来なら、きれいになりたい、美しいボディになりたいと思うから行うわけよね?」
そのとおりだね、と私は答えた。男にとって、細いだけの女子が好きなのは高校生くらいまでのことで、たいていの男なら成人したあとは、胸なり腰なりがちゃんとボリュームがあって、スリムだけど出ているところは出ていることを望むものだ。
「相変わらず原始人よね、楠くん(私のことだ)」と彼女はせせら笑う。「でも、たいていの男性はそうよね。だから、女子だって男性に好かれたいと思うなら、ただ痩せるだけではだめってこと、わかってるはずなのにね」
彼女が言うには、ダイエットの三原則は以下のようなものだそうだ。
原則1 体重は気にせず、鏡に映る自分の姿を気にすること
原則2 正しい食事の方法を覚えること
原則3 正しい運動の方法を覚えること
白雪姫の魔女みたいに鏡を大事にしなさい。
この原則は、すべてリンクしている、と彼女は言う。どれか一つを守るのではなく、3つの原則をすべて理解し、厳守することが成功の秘訣なのだと。
食事だけちゃんとしても綺麗なカラダにはなれないわ、もちろん運動だけしていてもだめ、とF香は言う。「そして、体重計に頼るより、全身が映る鏡を買うこと。鏡にすべてを託すことよ。白雪姫の魔女みたいにね(笑)」
体重を気にするのは意味がないわ、と彼女はワイングラスを唇に当てながら言った。
「私がもし、60キロあるとしたらどうする?」
「びっくりするけど、あまり関係はないな・・」と私は答えた。なにせF香は身長168cmの長身ながら、手足は細く長く、バストは低く見積もってもEカップ以上はあるように見える。
「そのスタイルが矯正下着で仕上がっているとしたらいやだけどね」
「それはないわ」彼女は笑った。「普通の下着よ」
つまり、男も女も、外からどう見えるか、が問題であって、体重自体を気にしているわけではないのだと彼女は説明した。なのに体重計をみて、1キロ増えた、1キロ減ったと一喜一憂するのは、実はおかしいのだと。
「もちろん体重を計ることは重要よ。でもよく考えれば運動して筋肉を増やせば体重は増えるし、逆に脂肪が増えて筋肉が減っちゃっても体重は減るわ」
だから見た目を気にするなら、鏡の前で裸になって、くまなく自分の体を見て、念入りにチェックすることが重要なのだと彼女は言った。
鏡は嘘をつかないわ、体重のようなトリックも罠もない、とF香は真面目な顔をした。魔法の鏡が魔女に本当のことを告げるのと同じなのよ、と。
「自分がなりたいカラダと何が違って、どこを直せばいいのか。それを確かめることが重要なの」彼女はそう言いながら、ワインを飲み干した。