先日、日本GPのMoto2クラスを舞台に勃発した「ハチマキ」事件ですが、次戦オーストラリアGPの前に当事者であるグレシーニ レーシングから公式声明が10月16日に発せられました。残る4戦、もう一方の当事者である大スポンサー、QJモーターのロゴをフェアリングから外す・・・というのがその内容ですが、事態が解決に向かうことを期待すると、グレシーニ レーシングは期待を述べていました。

マヌエル ゴンザレスはSNSを通してQJモーターに謝罪しました

これまでの経緯は、こちらの過去記事をご参照ください。

グレシーニ レーシングからリリースが出される前・・・10月12日に日の丸のハチマキをグリッド上で頭に巻いてたマヌエル ゴンザレスは、X(旧Twitter)やInstagramなどのSNSを通してQJモーターと中国の人々への謝罪の意を示しました。

若きゴンザレスの謝罪ビデオは、ハチマキは政治的メッセージを意図したものではなく、中国の人の感情を軽視したり傷つけたりする意図は決してなかったことを述べた上で、誠実に心からの謝罪をする内容という印象を受けました(言語は英語でした)。

ただ、グレシーニ レーシングから公式声明がある前に、契約ライダーであるゴンザレスが自身のSNSアカウントで謝罪の意を明らかにするのは、ちょっと不思議なことにも思えました。多くの人の関与するプロジェクトであるMoto2チーム運営のマネジメントを考えると、ライダー個人の見解をチームを通さず表明することは基本NGなはずですから・・・。

Twitter: @18ManuGonzalez tweet

twitter.com

グレシーニ レーシングが公式ウェブサイトのなかで、QJモーターのロゴを表示するのを止めたことを受けて、SNS界隈では各国のロードレースファンが「QJモーターがグレシーニに切り捨てられた!!」と喜ぶポストが多く見られました。

しかしゴンザレスの謝罪の言は、「I'd like to apologise once again, hoping to receive your forgiveness and support. Thank you」≒もう一度お詫び申し上げるとともに、貴方の許しとサポートをいただければ幸いです。ありがとうございます・・・と結ばれていました。

このことからも先週の時点では、どっちがどっちを切ったみたいな話にはなっておらず、水面下ではQJ モーター側とグレシーニ レーシング側の間で、解決に向けての話し合いが続いていたと考えられます(あくまで推測ですが)。

ロゴの非表示は、中国への「敬意」のあらわれ・・・?

10月16日付のグレシーニ レーシングのリリースは、「MOTO2、オーストラリアで活動再開の時」というタイトルがつけられていました。そしてその中でグレシーニ側は、今シーズン残り4戦はQJモーターのロゴをMoto2マシンのフェアリングに表示しないことを明らかにしました。

(モビリティリゾード)もてぎでは、スターティンググリッドで日本製の鉢巻きをしたマヌエル ゴンザレスを巻き込んだ事件もありました。このような行為は、意図的ではなかったとはいえ、中国の人々の感性を傷つけることになりました。QJモーターとグレシーニ レーシングは現在、前向きな話し合いを進めており、まもなくすべてが解決すると期待しています。
中国に対する敬意のあらわれとして、グレシーニ レーシングMoto2チームは今シーズンの残り4戦を、ノーブランドでレースすることにしました。

QJモーター公式ウェブサイトのMotoGP活動のページより。事件後、掲載されているのはゴンザレスのチームメイトであるアルベルト アレナスの情報のみ・・・となっています。

www.qjmotor.com

このリリースを発する前に、グレシーニ側は内容をQJモーター側に見せていると思います。スポンサーのロゴを非表示にすることは、両者の現時点での「合意内容」なのかもしれません。なおリリースには、ゴンザレスのコメントも紹介されていますが、その前半部分はゴンザレスのSNSアカウントから発信された謝罪と同じ内容でした。

ゴンザレスの身分を案じる声とともに、QJモーターがこの事件を理由に即時スポンサー撤退したら、欧州から海を超えて行われるフライアウェイ3戦(豪州、タイ、マレーシア)の遠征運営費にも影響するのでは? と心配するロードレースファンの声もありましたが、何はともあれ来シーズンはインタクトGPに移籍することが既に決まっているゴンザレスと、グレシーニ レーシングが残り4戦Moto2で活動できることがこのリリースで明らかになったことは、非常に喜ばしいことです(スポンサー費のことは、どうなっているのか定かではないですが)。

世界最大規模の2輪マーケットに成長した中国市場は、これまでスクーターのような暮らしの足的モデルが売り上げの中心でした。しかし2030年までには、大型バイクの販売総量が80万台以上に拡大すると予想されています。そして大型バイクへの関心の高まりとともにロードレースのようなモータースポーツへの関心も、中国の人々の間で次第に高まっていくことになるのでしょう。

資金的、人的に中国の影響がモータースポーツの世界に増加することは確定的なことですが、今回の件のような「文化的衝突」は、モータースポーツ発展の為には何らならないことだと思います。すべてのスポンサーとチームはこの一件を奇貨として、得た知見を今後に活かしてほしいですね。