2050年に、関わる全ての製品と企業活動を通じてカーボンニュートラルを実現することを目指すことを公言しているホンダですが、10月9日に大市場であるインドネシア向けに、2機種の電動スクーターを投入することを発表しています。ホンダは2024年を電動二輪車のグローバル展開元年と位置付けているので、今後ホンダ製電動2輪が続々と公表されることになるかも・・・?

環境戦略の主軸として2輪の電動化に取り組むホンダ

2023年11月、ホンダは「2023 Honda電動二輪事業説明会」を開催し、2030年までにグローバル市場に電動モデルを30機種投入する目標をかかげました。インドネシア市場に向けて用意される2機種・・・Honda Mobile Power Pack e:(ホンダモバイルパワーパック イー、以下HMPPe:を2個、動⼒⽤電源に採⽤した「CUV e:(シーユーヴィー イー)」と、固定式バッテリーを搭載した「ICON e:(アイコン イー)」は、それぞれ上掲の話の10、11機種目ということになります。

2023年の電動二輪事業説明会の資料より。市場参入期、事業拡大期、事業本格拡大期の各ピリオドを経るごとに、電動車の販売構成比を上げていくことをホンダは計画しています。

同資料より。市場参入期はモペットやスクーターの電動モデルの投入がメインになりますが、図のシルエットが示すようなファン領域の電動モーターサイクルも、やがてデビューすることになるのでしょう。

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ホンダは2021〜2025年の5年間で、電動化に向けて1,000億円の投資を進めています。2026〜2030の5年間にはさらに4,000億円の投資をする予定で、収益目標として2030年に電動2輪事業営業利益率5%以上、2輪事業全体としても10%以上の実現を狙っています。そして2030年以降は、電動2輪事業営業利益率10%以上を達成することを目標にしています。

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2024年は電動2輪車のグローバル展開元年・・・ということで、参入を本格化。東南アジア市場に昔から注力していたホンダは、世界3位の巨大市場であるインドネシアで8割近い圧倒的シェアを誇っています。2023年よりインドネシア政府は電動2輪購入補助金制度(1台あたり700万ルピア≒約6万円)を設けており、国の方針として電動2輪の利用促進を推し進めています。そんな理由から電動車の存在感が増しつつあるインドネシア市場においてホンダは優位性をキープするべく、このたび電動車の意欲作2機種を投入するわけです。

"カブ"じゃなく"シーユーヴィー"・・・でもみんな"カブ イー"と呼びそう?

ICE(内燃機関)110cc相当のCUV e:は、2023年秋に東京ビックサイトで開催された「JAPAN MOBILITY SHOW 2023」で、ワールドプレミアとして出展した「SC e: Concept(エスシー イー コンセプト)」を市販化したもの。なおSC e: Conceptは今年2月に「インドネシア国際モーターショー2024」にも、現地合弁会社アストラ ホンダ モーターが展示を行っており、インドネシアのユーザーたちから熱い注目を集めていました。

CUV e:の名前はシーユーヴィー イーと読みますが、人の暮らしに役立つ代表的ホンダ製品、「スーパーカブ(Super Cub)」を連想させるグッド?なネーミングですね。なお「CUV」の3文字は1994年にリース販売されたホンダ初の電動スクーター、「CUV ES」にも使われており、クリーン アーバン ビークルを意味していました(ESはエレクトリック スクーターの略)。

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動力用電源には日本の交換式バッテリー交換サービス、Gachaco(ガチャコ)にもその技術が採用されているHMPPe:を2つ搭載し、独自開発の自社製モーターを組み合わせることで、航続距離を向上させているのがCUV e:の特徴です。走行モードはスタンダード、スポーツ、エコノミーの3つ。取り回し時に便利なリバースモードが搭載されているのも嬉しいポイントでしょう。

CUV e:には、スマホとBluetooth®︎で接続して通話やナビ機能を利用できるHonda RoadSync Duoを装備したタイプも用意されるとのこと。原付二種スクーターは日本でも人気の高いカテゴリーですから、インドネシア市場だけでなく日本市場にもCUV e:を投入して欲しいユーザーはいると思います。ホンダの英断? に期待しましょう!

ICON e:は、プラグイン充電にも対応しているのがポイントです

もう1機種、ICON e:(アイコン イー)は日本市場にもすでに投入済みの「EM1:e」をベースに、インドネシア市場向けに外観と中身を変更した電動スクーターです。

EM1:eとよく似たICON e:ですが、エクステリアがいろいろ変更されていることがよく観察するとわかります。

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ICON e:のバッテリーはEM1 e:に採用されているHMPPe:ではなく、中国市場で普及している三元系リチウムイオンバッテリーを採用しています。充電方式は車載状態でのプラグインと、バッテリー単体の2通りを選べるのはユーザーの住宅事情などを考慮すると利便性が高いといえるでしょう。

モーターはEM1 e:と同様にハブモーター式。一充電あたりの走行距離は50km以上(テスト値)と、デイリーユーズにはちょうどよい設定。シート下にヘルメット収納が可能なのは、シート下にHMPPe:を収納するEM1 e:にはできない芸当といえます。

・・・・とここまで書いて思ったのですが、ICON e:はすなわち、エクステリアを変更したU-GOみたいなものですね? 中国のWuyang-Honda=五羊-本田摩托(広州)有限公司が販売するU-GOは、日欧市場で販売されているEM1 e:の元ネタ的モデルで、足を置くフロア部の下に48V30Ahの脱着式バッテリーを格納するのが特徴です。

現時点では詳細なスペックが不明なので断定はできないですが、インドネシア市場で電動スクーターのライバルと戦うには価格競争は避けられません。その点において中国市場で実績あるU-GOのスペックを流用するのは、とてもクレバーな選択といえるでしょう(推察が正しければ、の話ですが)。

ICON e:はヘルメット収納スペースのほか、小物など収納できるラゲッジボックスも装備。フロント内側にはインナーラックと、ガジェット類の充電に便利なUCB Type-Aソケットを標準で装備しています。ヘルメット収納以外の装備は、EM1 e:の仕様と近いものと思われます。

英ロンドンに本拠を置くPwCコンサルティングの調査(The long view: how will the global economic order change by 2050?)によると、2050年にはPPP(購買力平価)ベースでインドネシアは世界第4位の経済大国になっていると予測されています。このような成長著しい国での商業的成功は、ホンダの電動2輪車販売計画の将来の成否を大きく左右することになるでしょう。CUV e:とICON e:がどのようにインドネシアのユーザーたちに評価されるのか? 注目したいです!