今年の3月、65歳のヴァレリオ ボニさんが、1979年型ベスパ50スペシャルを駆り、50ccによる24時間での移動距離ギネス記録に挑みました。なおそれまでの記録は、オーストラリアのマーク ブラウンさんが2005年に樹立した、よりモダンなヤマハ製50ccスクーターによる928kmでした・・・。

1979年の「忘れ物」を取り戻す挑戦!?

長年、小排気量車専門テスターおよびジャーナリストとして活躍してきたヴァレさんは、過去3年間で6つのギネス記録を樹立した人物です。ポケバイによる24時間最長走行距離(2021年5月)、モトクロスバイクによる24時間最長走行距離(2022年5月)、電動バイクによる24時間最長走行距離(2022年10月)など、これらの挑戦はCovid-19禍のなかで実行されたものでした。

6つ目の記録が、ここに紹介する50ccスクーターによる24時間最長走行距離なのですが、じつはヴァレさんはもっと前の時代に、この記録の保持者としてギネスブックに名を残す資格を有していました。今回の挑戦と同じベスパ50スペシャルを駆ったヴァレさんは、1979年にピレリ社のテストコースで941kmを走破していたのです。

「トゥット ベスパ」という出版物のための企画として行われた1979年の試みでしたが、残念ながら公式な計時が存在していたにもかかわらず、当時のヴァレさんにはそれをギネスに申請するという発想を持ち合わせていませんでした。そして近年、過去の自分の記録よりも短い、2005年のマーク ブラウンさんの記録がギネスブックに掲載されていたことを知り、ヴァレさんは再び50スペシャルとともに記録に挑むことを考えたのです。

1979年、ピレリのテストコースをベスパ50Sで走るヴァレことヴァレリオ ボニさん。今年3月のギネス記録への挑戦は、今年45歳となった同車に、65歳になったヴァレさんが乗っての再挑戦でした。

早朝に記録の928kmを超え、さらに数字の更新に挑みました!!

耐久スクーターレースのエキスパートが営む「エポカ モーターズ」の協力を得て、ヴァレさんは3月6日の正午に記録更新に挑みました。記録のガイドラインは車両の停止に関しては制限を設けていませんが、ヴァレさんは丸一日ベスパ50スペシャルのサドルの上から降りず、走り続ける作戦を実行しました!

ヴァレさんと、記録挑戦のために完璧に仕上げられたベスパ50スペシャル。記録のガイドラインは、エンジンが大量生産された50ccであることと規定されており、チューニングによる最高速向上などに関する上限などはありません。

挑戦の舞台となったのは、スペインのバルセロナに近いテラマールのトラックで行われました。2,005mの環状コースは1923年に作られた歴史あるものですが、今では競技に使われることはなく舗装はかなり荒れています。挑戦にかかるコストを節約するする目的もあって、ここが選ばれました。

不均一な路面状況は走行速度を低下させる懸念がありましたが、そのリスクも織り込み済みと言わんばかりにヴァレさんは淡々と走行距離を伸ばしていきました・・・。

走行距離を少しでも伸ばしたい・・・ということで、考案されたのがサポート車のタンデムライダーが持つ携行缶からのびるホースを使っての給油というもの!

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夜になって日付が7日に変わり、午前5時前にはヴァレさんと50スペシャルは928kmという過去の記録を破りました!! その後、目に入ったほこりの痛みからヴァレさんは、目薬をさすために停車を強いられることに・・・。厳密に24時間ノンストップとはいきませんでしたが、前述のとおりガイドラインは停車に制限を設けていませんので、ヴァレさんの英ロンドンに提出された記録関係文章は受領され、無事に24時間走行距離の新記録としてギネスに認められました!!

チームスタッフとともに、偉業を祝うヴァレさん(左から3人目)。ヴァレさんと50スペシャルの記録は、テラマールのトラックを615周し、1,233.075 km(766.19マイル)を24時間で走破・・・というものです!

世界記録を集めたギネスブックの、今回の挑戦の認定書。

ベスパが生産されているポンテデラ工場100周年、最初の50スペシャル登場から55年、1979年の挑戦から45年、そしてヴァレさん65歳・・・と、いろいろ区切りの良い年に樹立された新記録でした。こちらの動画は、ヴァレさんと50スペシャルの挑戦を収録したものです。イタリア語なのですが、なかなか楽しめるドキュメントになっていますのでぜひご視聴ください。

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