ICE(内燃機関)のカーボンニュートラル時代での生き残り策として、燃料としての水素に注目するバイクファンは少なくありません。7月10日、ヤマハは森町工場(静岡県周智郡森町)に水素エネルギー実証施設を新設することを公表しました。ただヤマハは水素ICE、水素充填システム、燃料供給システムなどを研究している技術研究組合、HySE(ハイドロジェン スモール モビリティ アンド エンジン テクノロジー)のメンバーでもありますが、ここでの実証を試みる対象は乗り物の燃料というわけではないみたいです?

水素を使うことで、環境に優しいアルミ作りが実現?

ヤマハが森町工場に新設する実証施設は、水素ガスに対応する溶解炉と熱処理炉を備えていることがその特徴です。ヤマハは2025年より、水素ガスによるアルミ合金溶解技術の開発および検証、そして施設と設備などに関わる総合的な実証実験開始を予定。2026年末には水素ガスによるアルミ合金の溶解および鋳造部品の熱処理に関する技術開発を完了し、2027年以降はグループの国内外鋳造工場に、培った技術を順次導入していく計画を立てています。

ヤマハと静岡大学の共同研究による、メタネーション装置。なおメタネーションとは、水素と二酸化炭素を触媒で反応させて人工的にメタンを合成する技術であり、メタネーションで生み出された合成メタン(カーボンニュートラルメタンなどの呼称もあり)はガスの脱炭素化に役立つことが期待されています。

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ヤマハの、この実証実験は製品ライフサイクル全体のCO2排出量のうち、スコープ1(燃料の燃焼や製品の製造などを通じて企業や組織が直接排出するGHG=温室効果ガス)の最小化を目指した取り組みのひとつになります。

ヤマハは現在2輪車や船外機などの鋳造部品の製造において、アルミ合金を溶解するための熱エネルギーに都市ガスなどの化石燃料を使用しています。化石燃料の代替エネルギーとして電気を使うという方法もありますが、大きな熱量を要する溶解工程の電化はエネルギー効率の悪さを無視することはできません。

そこでヤマハはスコープ3(原材料仕入れや販売後に排出されるGHG)対策の選択肢のひとつとして研究中の水素エネルギーに着目。水素ガスを用いた場合の品質への影響の検証、水素バーナーによる温度制御などの開発を実証実験として新施設で進めることにしたわけです。

ヤマハ森町工場の水素エネルギー実証施設のイメージ図。

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またヤマハは、再生可能エネルギー由来のグリーン水素を製造する装置と、外部加熱を使わずに合成メタンを製造するメタネーション装置(静岡大学との共同研究)についても導入を検討。さらに水素ガスを安価に製造する設備や、排気ガス中のCO2を再利用する技術開発にも取り組むとのことです。

サプライチェーンを通じたGHG排出削減は、企業がカーボンニュートラル時代にも活動を続けるためには避けては通れない課題です。ヤマハの実証実験によってスコープ3での水素利用が有効ということが確認され他社にも波及すれば、その後の水素の需要増とともに水素低価格化という効果も期待できるかもしれません。数年後に明らかになる結果を、楽しみに待ちましょう。