去る3月11〜12日、東京都中野区の学校法人「新渡戸文化学園」にて、電気自動車=EVが持つ可能
性と、未来のまちづくりを学ぶ小学生向けの特別授業「なかの電動化スクール」が実施されました。この取り組みは新渡戸文化学園、株式会社タミヤ、そして日産自動車株式会社の3者によるものです。

日産の「教育への貢献」への取り組み

日産は2010年に、世界初のグローバル量産型 EVである「日産リーフ」を発売。以降、EVの普及を通したゼロエミッション社会の実現を目指し、様々な施策に取り組んいます。

昨今EVは環境配慮の観点だけでなく、災害時の給電や、EVのバッテリー電力を自宅で使用できる V2H(Vehicle to Home)としても注目が集まっています。つまり"災害大国"である日本では特に、EVのインフラとしての幅広い活躍が期待されているわけですが、EVのパイオニアとしてさらなるEV普及に日産が取り組んでいくためは、"未来の EVオーナー"となる児童たちにEVの特徴や、未来への可能性を知っていただくことが重要です。そのような趣旨で、EV が持つ可能性と未来のまちづくりを学ぶ特別授業「なかの電動化スクール」が実施されました。

なお日産はこれまで「教育への貢献」の一環として、将来を担う児童に向けた「日産わくわくエコスクール」を実施しています。同スクールはエコカーを開発・製造している企業だからこそ提供できる新しい環境技術の体験教室として2008年から開始。その後15年間で1,200校以上、13万人以上の小学生に体験授業を行っています。

特別授業「なかの電動化スクール」は、日産わくわくエコスクールで培ってきたノウハウを生かすことで、未来を担う児童に向けて新たな学びと発見の機会を提供できる・・・という考えから企画されました。EVへの理解促進、脱炭素や環境課題解決に対する次世代の関心を高める・・・などが、期待される主な効果となります。

「なかの電動化スクール」は、3月11〜12日の2日間で実施。授業初日は日産とタミヤによる講義とミニ四駆づくりが行われ、2日目は初日に製作した特製ミニ四駆を使い、体育館の「ミニチュア中野」に集合して、まちづくりのアイデアを考える授業が行われました。

Z世代など、生まれたときから身のまわりにデジタルガジェットがある世代をデジタルネイティブと呼んだりしますが、今後は同様に生まれたときから身のまわりにEVがあるのが当たり前の、EVネイティブが増えていくことになります。今はICE(内燃機関)搭載車でクルマに慣れ親しんだ世代がEVづくりの現場で活躍している時代ですが、将来はEVネイティブたちがその主役になることでしょう。次代の中心を担う若い世代に、専門家によるEV教育を体験してもらうこころみは、非常に有意義なものといえるでしょう。

子どもたちの想像力が、EVの未来を築いていく

「なかの電動化スクール」は過去行われた企業主導の出前授業を進化させ、子どもたちの学びや探究心の向上に繋がるよう、タミヤや新渡戸文化小学校と新しい授業の共創への挑戦でもありました。授業のテーマは「EV が活躍する未来のまちづくり」に設定。子どもたちが学び、自主的に発想できるよう用意されたのは、授業用に特別開発した「手回し発電型特製ミニ四駆キット」。体育館に真っ白な段ボールなどを積み上げることで再現した、7.5m四方の「ミニチュア中野」という2つの教材です。

タミヤの「手回し発電型特製ミニ四駆キット」。トランスルーセントな筐体のハンドルを、手で回すことで発電ができます。そして貯めた電気で走行したり、豆電球を点灯することもできます。

「ミニチュア中野」はJR中野駅から、新渡戸文化小学校付近までの土地を再現。建物を模した段ボールには地図記号を貼付されており、それぞれの建物に意味を持たせています。

初日(3月11日)のカリキュラムは、教室で日産によるEVの仕組み・・・電気で動く、電気をためるクルマであるEVについて解説しました。EVは走行するだけでなく、日常生活や災害時にも給電設備として活用できるという、EVの幅広い可能性を子どもたちは学びました。

その後は教材の「手回し発電型の特製ミニ四駆キット」をタミヤより紹介。授業の中では特製ミニ四駆が配られ、組立てに挑戦。児童たちはパーツと真剣に向き合い、助け合いながらミニ四駆を完成させました。完成したミニ四駆を走行させる"実技"では、言うまでもなく? 子どもたちは大興奮で喜んでいました。

タミヤの「ミニ四駆」は、1980年代の第一次、1990年代の第二次、そして2000年代の第三次という大きなブーム期を経て、日本で一番売れた自動車模型です。ブーム期間の長さから、子どもから大人まで多くの愛好者がいる商品ですから、多くの関心を集めやすい好教材といえるでしょう。

1987年から「ミニ四駆公認競技会」が開催されていますが、ミニ四駆は自分で作って、走らせて楽しむことが主旨の自動車模型です。教室内に設けられた特設コースで特製ミニ四駆を走らせるとき、子どもたちが盛り上がらないわけはないでしょう。

2日目(3月12日)は体育館内の「ミニチュア中野」で授業がスタート。新渡戸文化小学校の栢之間倫太郎先生より「EVで、人々やまちの幸せをつくろう」という問いかけが行われ、2つの課題が提示されました。1つ目の課題は「安心なまち」がテーマ。街が停電したという設定のもとで子どもたちに電気が必要な場所を考えてもらいました。

グループごとに話し合いながら「ミニチュア中野」を探索。「災害用具を購入する人のために、スーパーマーケットに明かりを灯す」と、EVの特性と人々のニーズを踏まえたアイデアには、会場の大人たちからも「おぉ」と感嘆の声が上がったそうです。

2つ目の課題は「楽しいまち」がテーマ。EVを活用して未来の中野のまちに、遊び場をつくることに挑戦。 この課題は「中野区は狭いエリアに建物が密集しているため、子どもの遊び場が少ない」という酒井中野区長の話がベースとなって企画されたものであり、中野区が抱える課題を授業課題として取り入れたわけです。

小学生、大学生、高齢者などの人物が記載された「こまった人カード」を子どもたちに提示。それぞれの悩みを解決できる遊び場を考えてもらいました。自由にホワイトボードにアイデアを出し、そのアイデアを「ミニチュア中野」の中に自由に制作して、「未来のミニチュア中野」が完成。「駐車場から EV で給電できるゲームセンター」は、折り紙や紙コップを使いEVの給電設備や、災害時の緊急用設備なども再現しており、そのクオリティの高さに大人たちも驚嘆していました。

授業を終えた子どもたちからは、「EVのこともたくさん知れたし、まちづくりが楽しかった」、「もっとミニ四駆を改造したり、まちづくりを発展させたりしたかった」といった声が聞かれ、EVを学ぶとともに、思い思いの未来のまちづくりを楽しんでいました。

EVネイティブではない、ICE搭載車でクルマに親しんできた大人たちのなかには、EVに対して根強い偏見を持つ人も少なくありません。「なかの電動化スクール」のような授業を、授業参観方式で親世代にも参加してもらったら、そういう偏見を和らげる効果があるのでは? と思ってしまいました。今の子育て世代のお父さんたちは、皆さんミニ四駆ブームの洗練を受けているでしょうから、きっと誰もが抵抗感なく授業を楽しめると思います・・・?

ともあれ、このような試みが今後も継続し、発展していくことを期待したいです。未来を作る子どもたちに教育の機会を与えることは、より良い明日のための最も効率的で、有効な投資に他ならないのですから。

実施概要
・実施施策名:なかの電動化スクール
・実施日時:1日目3月11日(月)10:40~12:20 2日目3月12日(火)13:30~15:10
・実施場所:新渡戸文化小学校(〒164-8638 東京都中野区本町 6-38-1)
・登壇者:日産自動車株式会社 寺西章、有嶋祥太朗
株式会社タミヤ 満園紀尚、高戸聡志、植田紘揮
新渡戸文化学園 理事長 平岩国泰、小学校教諭 栢之間倫太郎
・参加者:新渡戸文化小学校4年生51名
・ゲスト:中野区 酒井直人区長