オフロード競技の世界では、近年電動車の活躍が目立つようになってきました。先日、「ヤマハ国内ファクトリー体制発表」が行われましたが、そのなかでヤマハは全日本トライアル選手権に3台の電動モデル「TY-E 2.2」を投入し、初勝利とチャンピオン獲得に挑むことを明らかにしています。

オフロード競技で、電動車の活躍が目覚ましい理由とは?

2019年からロードレースの世界では、電動車のワンメイク方式のMotoEが開催されました。2022年まではエネルジカのエゴ コルサ、2023年からはドゥカティV21Lが採用されていますが、近似の出力を持つICE(内燃機関)搭載車に比べその戦闘力の低さと航続距離の短さから、ワンメイクで特殊なフォーマット(ICE車より短いレース距離など)で行われているのが現状です。

一方、モトクロスやトライアルなどのオフロード競技の世界では、ICE車を相手に電動車が表彰台争いやタイトル争いを繰り広げる光景が増加傾向にあります。一般論としてオフロード競技車両は、600cc以上のロードレーサーのように100馬力以上の高出力を必要としません。それゆえにオフロード競技用電動車はモーターと動力用バッテリーをそれなりのサイズに収めることができ、ICE車に十分対抗可能な戦闘力を盛り込むことができる・・・のが、上述の健闘ぶりの理由といえます。

近年の電動車の特筆すべき実績には、2022年のEM(エレクトリックモーション)を駆るガエル シャタヌによるSSDT(スコティッシュ6日間トライアル)総合19位完走および200cc以下クラスのベストパフォーマンス賞獲得。そして同コンビネーションによる2023年アンドラGP、トライアル2初日の2位表彰台獲得(トライアル選手権初の電動車による表彰台獲得)があります。また今年2月にシリーズ終了した英国アリーナクロス選手権では、スターク フューチャーがFIM認可イベントで初めて電動車によるライダー/メーカーの二冠達成の偉業を記録しています。

現状では、国によってはICE車と電動車を戦わせるためのレギュレーション整備などが整っていないケースもありますが、2050カーボンニュートラルに向けて各メーカーが電動車開発に力を入れていることから、電動車が各種モータースポーツで活躍する姿を見る機会は今後も増えていくことになるでしょう。

前年のランキング2〜4位のライダーが、TY-Eで今年は戦います!

2022年度の全日本トライアル選手権の最高峰IAスーパーは、ホンダRTL301RRを駆る小川友幸が11連覇、新記録となる13回目のタイトルを獲得しました。ヤマハは黒山健一にTY-Eを託し、全日本初となる電動車フル参戦を開始。2位2回、3位2回と4度表彰台を獲得し、ランキング3位という成績を残しました。

2024年のヤマハは、黒山が引き続きTY-Eで参戦。そして前年3勝をあげランキング2位となった氏川政哉がホンダから移籍し、同じくTY-Eで参戦。ランキング4位の野崎史高もICE車からTY-Eで参戦と、チーム名はそれぞれ違えどファクトリーマシンのTY-E2.2で全日本の電動車初勝利、タイトル獲得に挑むことになります。

2023年度の全日本トライアル選手権に、唯一電動車のTY-Eを駆ってフル参戦した黒山健一選手。

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初代TY-E(2018年)から、大幅に進化したTY-E 2.2。2023年シーズン当初はTY-E 2.1が使用されていたが、シーズン後半から新設計のMCU(モーターコントローラー)とモーターを採用するTY-E 2.2が投入されました。

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トライアルGPのトライアル2クラスは、ICE車の場合2および4ストローク300cc以下という排気量規定です。TY-Eのモーター諸元は明らかになっていませんが、ICE車との出力差をいかに電子制御の力でキャッチアップし、さらに追い越すかが、大きなテーマになっています。

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つまり昨年度のランキング2〜4位がTY-Eで今年の全日本を戦うことになるわけですが、ICE車からの乗り換えになる氏川と野崎の両者が、電動車でどのようなパフォーマンスを披露するかも楽しみですね。こちらの動画は昨年度のTY-Eと黒山の、全日本の戦いを追った内容ですが、開発者の「エンジンの特性以外に理想があるのなら、そこを追えるのはEVだけなんです」というコメントが、期待感を盛り上げてくれます。

なお今年の全日本開幕戦は、3月31日の愛知・岡崎大会(キョウセイドライバーランド)です。どのような戦いが繰り広げられるか、その日を楽しみに待ちたいです。

TY-E 2023 SEASON REVIEW

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