先だって日曜日にペンシルバニア州で開催されたAFTハーフマイル戦。数週前にレース中の不慮のアクシデントで命を落とした若い仲間をレースの現場で弔うため、参加する全てのライダーが彼のパーソナルナンバーを纏って走る、哀しくも美しいセレモニカルなシーンです。個が競い合う勝負の世界だからこそより一層深まる強固な、そして奇妙な "家族的な連帯" は、彼の地のダートトラックレーシングにおける伝統のひとつと言えるかもしれません。

3世代でこのスポーツに取り組んだ、若干24歳の若者が命を落としました

WELCOME RACE FANS!! ダートトラックライダー/FEVHOTSレースプロモーターのハヤシです。プロダクションツインズクラスを走ったペンシルバニア・ネイティブのライアン・イーサン・ヴァーンズは享年24歳。祖父と父も彼同様にプロのダートトラックライダーで、父ケビンは15年ほど前、当時AMAレースシーンを席巻していた日本製レザースーツメイカー "GREEDY Racing Leathers" の招聘で来日し、栃木県ツインリンクもてぎでのレースに参加したことでも知られています。

祖父が中心となってマシンチューニングを担当し、父はクルーチーフを務めアドバイスを与え、若手ライダーのひとりとしてトップカテゴリーを目指して走るライアン。3世代が関わってレースシーンに取り組むヴァーンズ家の "ファミリー・トラディション" は、ある意味で彼の地のプロダートトラックレースシーンを象徴するスタイルでした。

撮影: 和田真 (FEVHOTS11)

2000年代中盤以降、本場アメリカのプロレースシーンでの活躍を夢見て渡米した、幾多の日本人の若者たちにとっても、日本と関わりのあるこの一家、なかでも好奇心旺盛なティーンエイジ以前の少年だったライアンとの交流は想い出深いものだったはずです。

レース中に止まった他のライダーをセッション後にプッシュしてパドックに戻るライアン。困ったらお互い様、伝統的相互扶助。

ライバルを、仲間を、家族を失ったコミュニティの喪失感と深い悲しみは想像に難くありませんが、それでも彼らは競い合い、助け合うために、週末にはまたレーストラックに向かうことでしょう。

Ride in Peace, Ryan.
ではまた金曜日の "Flat Track Friday!!" でお目にかかりましょう。