ウクライナ軍からのフィードバックを受け、生み出された軍用電動バイク
ICE搭載車よりも静かで、排ガスを出さず、そして発熱も少ない電動モーターサイクルやE-バイクは、その"ステルス性"を評価され世界各国の軍隊で軍事利用の研究が進められています。
今年の2月24日にロシア軍がウクライナへの侵攻を開始して2ヶ月以上が過ぎましたが、軍事情報などのオンラインマガジンであるウォーゾーンの報道よると、ウクライナ西部のテルノピリを本拠に置く電動バイクメーカーのイリーク(ELEEK)は、この戦争がはじまってからすぐに同社の電動バイク「アトム」の在庫すべてを、ウクライナ軍に無償で提供したそうです。
アトムは10年間製造という実績を持つモデルですが、より軍用モデルとして相応しいスペックを得るために、イリークはウクライナ軍から使用感などのフィードバックを収集。軍用モデルとして不要な装備を排する代わりに、軍用色や、220Vコンセントなど必要な装備を与えるなどの改良を与えたアトム ミリタリーを完成させました。
アトム ミリタリーは3,600Whのバッテリーと48〜90V 300Aのコントローラーを搭載しており、最高速度90km/h、1充電(5時間)の航続距離100〜150km、最大荷重150kgという性能を有しています。オプションとしてはヘッドライトおよびストップライト、デジタルガジェット充電用のUSB出力端子、そして200V 200Wの出力プラグが用意されています。
兵士の安全を考えれば、その価格は安いでしょう・・・
すでにアトム ミリタリーは配備が開始され、ロシア軍との戦いに使用されているそうです。主な活動の場は激しい戦闘が続くウクライナ東部で、狙撃部隊の移動手段として活用とのことです。
この戦争では無人のドローンが使われていることに注目が集まっていますが、電動のアトム ミリタリーはICE搭載車より稼働時の発熱量が少ないため、ドローンなどに搭載されている熱画像システムに発見されにくいと考えられます。また言うまでもなく静粛性の高さはICE搭載車の比ではなく、敵に接近しても発見されにくいという特徴を持っています。
ウクライナの通貨、フリヴニャで12万7,281UAH≒55万3,900円という価格が高いと思うか安いと思うかは人それぞれの金銭感覚によるでしょうが、発見されにくいという安全性を持つ電動バイクを狙撃兵に託すということは、高度な育成カリキュラムが必要な狙撃兵を失うリスク回避策としては、けっして高価ではないでしょう(すべての人の命は尊い、という前提は当然として)。
ウクライナ軍への貢献を目的にイリークは軍用車造りに励んでいるわけですが、多くの人々を不幸にしているこの戦争が早く終結して、イリークが再び民生用モデル造りに専念できる状況になってほしいです・・・。