3月24日、スウェーデンの2EVメーカー「CAKE」が、新興企業「ペーパーシェルAB」と技術パートナーシップを結んだことを公表しました。彼らが目的とするのは、構成パーツとして使われるプラスチックの代わりに、紙・・・セルロース天然繊維複合材料を用いた製品を、モーターサイクル作りにできる限り使用する・・・というものです!

SDGsとプラスチック問題に、対峙する新興企業のペーパーシェルAB

2021年にスウェーデンの地に設立されたペーパーシェルABは、紙の主材料であるセルロース繊維(木材パルプ由来)をベースにした製品作りで持続可能なソリューションを開発し、循環社会への変革における先駆的な役割を果たすことを目的とする新興企業です。

紙の主材料であるセルロース繊維で作られるパネル材。スウェーデンはSDGs達成ランキングの上位常連国として有名ですが、ペーパーシェルABは産学官民連携によってイノベーションエコシステムの中核を成している国営研究機関であるスウェーデン国立研究所(RISE)と継続的かつ深い協力関係にある企業です。

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ペーパーシェルABが主に取り組んでいるSDGs(サスティナブルデベロップメント ゴールズ=持続可能な開発目標)は、「9:産業と技術革新の基盤をつくろう」、「11:住み続けられるまちづくりを」、「12:つくる責任 つかう責任」、「13:気候変動に具体的な対策を」、そして「15: 陸の豊かさを守ろう」という全17の目標のうちの5つです。

前環境大臣の名(迷?)台詞「プラスチックの原料って石油なんですよね」が昨年話題になりましたが、石油由来のプラスチック製品の代わりにセルロース繊維で作った製品を使うという彼らのアイデアは、上述のSDGsの5つの目標のほかにも「7:エネルギーをみんなに そしてクリーンに」にも当てはまるでしょう。またマイクロプラスチックが海洋汚染の原因になっている現実を鑑みると、プラスチック製品を減らす試みは、「14:海の豊かさをまもろう」にも結びつくと思います。

ペーパーシェルABの「ペーパーシェル」は、プレス成形またはインフレーション・ブラダー成形で作られます。3D表面を作ることができ、耐候性や耐荷重性があるためプレス成形金属材やプラスチック材の代替品として使用することが可能です。

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SDGs的な「プラ→紙」という近年の流れで身近な例では、弁当容器、ストロー、お菓子のパッケージなどがありますが、はたして自動車部品の世界でもそれは可能なのか・・・? と疑問に感じる人は多いでしょう。

ペーパーシェルABが作る「ペーパーシェル」は、木材やプラスチックより強く、有害な難燃剤を使用しなくても難燃性を保っていると同社は主張しています。強度的にはアルミの半分で、重量もアルミ比で半分。つまり、1mmのアルミ板材であれば、2mmのペーパーシェルに置き換えることが可能です。

ペーパーシェルの他の素材との比較。縦軸が強度(MPa)、横軸が密度(kg/m3)です。

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多くの天然素材は水分を吸収してしまうという問題がありますが、ペーパーシェルの吸水しにくさはプラスチックのナイロン(PA10)とほぼ同じくらいとのこと。そして紫外線や温度変化にも強いのも、ペーパーシェルの特徴です。

どれだけ代替品を使えるのか? 彼らの新しいチャレンジに注目したいです!

金属やプラスチックの代替品として十分なスペックを有していることはもちろん、ペーパーシェルABが最も強くアピールするのはその"環境性能"です。ネット・エミッションでペーパーシェルは0.65kgCO2-eqであり、ベニア材の同1.09、ポリプロピレンの同4.95、GFRP(ガラス繊維強化樹脂)の同25.05、そしてアルミの同19.52に比較すると、極めて低い数値なことがわかります。

素材製造、製品化、製品寿命という、ものづくりの始まりから終わりまでのLCA(ライフサイクルアセスメント)におけるネット・エミッションで、ペーパーシェル(一番左)はほかの素材よりも総合的CO2排出が少ないことを表すグラフです。

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またペーパーシェルは、化石由来の炭素を一切含んでいないのも特徴です。化石由来の素材をペーパーシェルに置き換えることで、大気に放出される化石由来CO2を減らすことができる、とペーパーシェルABは主張します。もちろん紙の材料は木材なので、大量に森林伐採することによる環境破壊や、製造時に費やすエネルギーの多さの問題がありますから、紙を使うこと=環境に優しい、ということにはなりません。

ペーパーシェルABも当然そのことは承知しているようで、長寿命な製品作りをすることで自然のバランスを壊すことなく化石由来材料をバイオカーボンソリューションに置き換えることを目指しているとうたっています。またリサイクルの実態・実績ともに紙はプラスチックよりはるかに優れていますから、循環社会の実現的にもプラスチックより紙が望ましい・・・のも確かでしょう。

ステファン・イッターボーン(CAKE創設者兼CEO)
「Cakeはゼロエミッション社会の実現を目指して設立されましたが、そのためには当然、電動バイクに使用する最適な素材を慎重に検討する必要があります。私たちはペーパーシェル社と協力できることをうれしく思っており、モーターサイクルに使用される従来のプラスチックの使用を最小限に抑える、または根絶できるような素材を見つける上で、重要な役割を果たすことができればと願っています。これは最終的には自動車業界全体、そしてそれ以外の業界にも利益をもたらすコラボレーションです」

CAKE(ケーキ)製2EV「カルク&」。2018年から2EVを市場投入し始めたCAKEは、昨秋に6,000万ドル≒72億5,250万円という巨額の資金調達に成功しています。

ridecake.com

アンダース・ブライトホルツ(ペーパーシェルAB CEO)
「私たちはCake社との提携をうれしく思っており、ペーパーシェルをさらに進化させ、プラスチックの使用を過去のものにする素材にすることを期待しています。私たちの素材にとって、業界をリードする電動オフロードバイクほど完璧に挑戦的なテストベッドはないと思いますし、ペーパーシェル固有の液体、紫外線、天候、火に対する耐性を、さらに開発することを楽しみにしています」

モーターサイクルのプラスチック部品を、紙・・・ペーパーシェルに置き換える作業はスタートしたばかりですが、早く代替品でその身を固めたCAKEのニューモデルの仕上がりぶりを見てみたいものですね! このユニークな試みの続報を聞くことを、楽しみに待ちたいです!