事故とか怪我とかネガティブな話題は、実際のクラッシュ同様、できることなら避けて通りたいところですが、より速くより強く、各自がギリギリの領域にまで足を踏み入れ、自身をより高みへと運ぼうと挑戦するうえでの "レーシングアクシデント" は、競技の現場ではしばしば起こりえる事柄です。ひとりで走ってすっ転ぶのはある意味では自由の範疇ですが、相手のいる勝負の場面での他者と絡む転倒は、想像以上に大きなインパクトを生み出すこともあるでしょう。

このインディアン、相当ホイールベースが短くなっちゃいましたよ・・・

WELCOME RACE FANS!! ダートトラックライダー/FEVHOTSレースプロモーターのハヤシです。先だって10月9日の土曜日、本場アメリカの最高峰シリーズ・AFT: American Flat Trackはシーズン最終戦を迎え、各カテゴリーのチャンピオンが決定しました。

そもそも前日金曜に開催予定だったこちらのハーフマイル戦、忌々しい雨が振り出したおかげで急遽翌日順延を決め、コンディションのリカバリーには注目すべき点も多々あったんですが、ふたを開けてみると (AFTでは近年しばしばお目にかかる) 幾人ものライダーが病院送りとなって、後々回復を願うカンパがそれぞれ立ち上げられるような、ちょっとばかり荒れた展開になってしまったようです。

そんな本戦で最も痛々しかった "ビッグ・ワン" が冒頭の写真。先頭集団の一角を走行中だったブライアー・バウマンがターン立ち上がりでバランスを失い転倒したところへ、後続のサミー・ハルバートが避け切れず "BANG!!!!!" 。各ライダーは手足の複数骨折とヘルメットの中で顔の一部をザックリ切って緊急の形成手術が行われるなどなかなか痛々しい様子でしたが、幸い生命には別状なし。

追突した側のマシンはご覧の通り・・・削り出しの前輪がくだけ散ってエンジンにコンニチワするほど折れ曲がり、車体の半分くらいは屑鉄屋行きになりそうですが、まぁまぁ想定の範囲でのダメージっぷりです。ハーフマイル立ち上がりでこのくらいのインパクトですから、1,600mのマイルトラックでは言わずもがな、200〜400m級のショートトラックなら多分ここまで全損ライクにはなりませんけど、ちょっと修理を躊躇うくらいの壊れ方をするのは国内でも過去に何度か目にしました。

転倒時、アスファルトのロードレースみたいにマシンも人間も転んでシャーっと滑走していくでもなし、あるいは大ジャンプを許容する長足のオフロードバイクのようにいくらか衝撃を受け止める余地もなく、ある種ダートトラックレーシングならではのクラッシュと言えるかも?しれません。わざわざ試してみなくていいですけどね・・・。

スロットル開け始めで止まった物体に乗り上げると?・・人間カタパルト!

練習走行やお楽しみの最中でなら各自がもう少し距離感にゆとりをもって走るでしょうし (ちょっと自分より速いライダーが練習場所にいたからって、パドックでの意思疎通なしに後を付け回して走るのは、贔屓目に言ってもマナー違反です) 、目の前での転倒を避けることができなければ明らかに後続のミステイクで平謝り案件ではあるんですが、その可能性が排除できない状況ならば闇雲にバタバタ転ぶのもちょっと考えものです。

レース中なら、お互いが最大限のパフォーマンスを目指して走っている以上、避けるスペースが限られることは十分考えられますから、時としてこのようなことは起こってしまいます。どんなにギリギリの状況で走っていても、自分の前にマシンとヒトが転がってきたら、全力でヒトを避ける努力をするほかに、選択の余地はありません。多分いくらかケガはしますけどね。

というわけで最後にこのクラッシュの全貌をご覧いただける動画を紹介しておきます。閲覧注意!
派手に飛びますよ。

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サミー・ハルバート本人とかAFT公式のSNSがこれをシェアできてるってことからも、いかに不幸中の幸いだったかが想像できます。お蔵入りのクラッシュシーンとか、実は結構ありますからね。

ではまた金曜日の "Flat Track Friday!!" でお目にかかりましょう!
今週末もご安全に。